次の日、誰もいない時を見計らい彼はやってきた。えへ、来ちゃった。といのは、彼氏に逢いたい彼女が押し掛ける時だけ許される行為だと思う。
彼はリュックからペンキとスケッチブックを床に置き、スタンドの足形をとらせてというのだ。
「……コナン君」
「だって、見えないの悔しいもん!」
多分理由は別だ。
真実を語られないからといって主人公の要求には従わないという選択肢はこの世界では存在しない。
私のスタンドは今はザ・ワールドだ。それはよく分からなく、最初見たとき、パニックになったのはあの錯乱と呼ばれた事件だ。ヴァニラ・アイスのスタンドクリームに左手を持って行かれた時に現れたスタンド。そして、ザ・ワールドに瀕死の怪我を追わされた時。もしかしたら、私は自分の身に何かあるときに身を守る防衛力が働くのかスタンドが能力を開花させたと考えれば、私はスタンドを盗む能力だったのかも知れない。じゃなければ、説明がつかない。
それより、あらゆる要求に行動させたスタンドが人型だと見抜いたコナンの推力が恐ろしい。
刷毛でザ・ワールドの左足から自分のその冷たいペンキの感触にひやりとする。
スケッチブックに足を乗せてみた。
「靴履いてるの?」
「……履いているというか、それが足というか」
「ふーん」
コナンはしっかりと湾曲した足裏をとりパタパタとペンキを乾かすとメジャーを取り出し足形を測りだした。
「32p……すごく大っきいね」
そら、そうだろう。元々のDIOの身長が195pでそれに付随してザ・ワールドも巨人のように大きい。
「身長 ÷ 6.7で足のサイズが分かるんだ。これはあくまでも目安だけどね。この方法で身長が214.4p」
どこからそんな知識が出てくるのか、関心する。
「病室の天井までの高さは建築基準法で2.1メートル以上と定められてる」
ほんとうに、凄い知識だ。探偵の職業ってみんなコナンのように知識量が半端ないとは思えないが、この世界の探偵はみんなこんな感じなんだろうか。
「ちょっとそのスタンドで僕を肩車してくれない?」
「え?」
「もしかして、重たい物は持てない?」
「……いや」
まだ、私はザ・ワールドの扱いに日が短い。ロードローラまで投げ飛ばすスタンドパワーを誇る。軽く人間を潰すことなんて造作もないだろう。ここは慎重にコナンを肩に乗せて立ち上がって……。
「ちょっと! ストップ! ♪♪さん!」
コナンを慎重に肩車させることだけに集中していた私は慌てた声に漸く頭を天井ぎりぎりでぶつけそうになっていた。
「……これで、スタンドは床に足付けてる?」
「まあ、付けてるけど……微妙な中腰だよ」
「そうなんだ。……ゆっくり降ろしてもらえる?」
床に降ろしたコナンは緊張していたのか、瞬間ホッと息を吐いた。
「♪♪さんのスタンドの身長は200近くあるんだね」
「……そうだね」
なるほど。頑張って見えないスタンドの大きさを測っていたのか。
「スタンドには一つ特殊な能力があるっていったよね? それで、♪♪さんのスタンドの能力は?」
「……盗む能力だったのかも」
言い切らない私の言葉をコナンは復唱してコテンと首を傾けた。だから、それ(可下略)。
「最初は靄みたいなスタンド像だった。それが、ここへ来てからDIOのスタンドザ・ワールドのスタンドが出てくるようになった。最初見たときは驚いて、その時病室の人たちが言っていた感じだったと思う」
「なるほど。♪♪さんの怪我を負わせたスタンドが♪♪さんのスタンドの能力でそのスタンドを盗んだってことか」
「旅の最終地で発現したスタンドだったから、はっきりとは確証ないけど」
「じゃあ、スタンドを盗んだってことなら、同じように時を止められるの?」
「そこまでは、……どうやって止めるのかもよくわからない。スタンド使いになってまだ実感もないし」
これだけ色々スタンドの検証作業をしているのはこの世界にスタンドが及ぼす影響があった時の知識だろう。コナンは世界を繋ぐ能力のスタンドがいる可能性を危惧しスタンドの性能面を私のスタンドを基にして考えている。基本的にスタンドはスタンド使いにしか見えない。スタンド自体のバロメーター。一番のネックである特殊な能力。私の知っているスタンド使いのスタンドの事を全て教えてって言われたときは頭が痛くなった。
スタンドに対し否定することなはなかった。認識の違いというか、この世界の探偵がそうなのか。やはり、一般人の私とは違うとまざまざと知った。