気付けば白い部屋にいた。ベッドに寝かされていてその周りをカーテンで仕切られていて、その上酸素吸入までされていた。正しく病室という感じ。何で私ここに? というか少し記憶が混濁していた。無意識に体を起こそうとして鋭い痛みが襲った。視線だけ見れば、左腕は白い布を上から吊すような形で包帯がぐるぐる巻にされていた。その包帯は本来の長さじゃない。明らかに長さが足りない……。 左手がない。

 扉の開閉する音で混乱していた意識がそこに向かった。入ってきたのはまだ小さい子供。眼鏡を掛けた利発そうな顔……て、ちょっと待て!見た覚えのある……
「お姉さんっ!目が覚めたんだね!?」
 目が合うと驚きながらも子供はスムーズに私の横に置いてあったナースコールのボタンを押した。そして、すぐに病室は看護師、それから医者とやってきて私の周りを慌ただしくさせた。
 結論からいえば、この子供が江戸川コナンという名前でそのコナンが意識不明の重体の私を発見し緊急搬送されていたということだ。体よりもまず頭を抱えた事実がここが名探偵コナンという別の漫画の世界であり、主人公ともう合ってしまっているということ! 絶対なにか探りにくるよ! いや、もう既に探られているはず……。ジョジョより詳しくはないが黒の組織というこちらの敵と匂わす人間にはプライバシーというものなくめちゃくちゃ突っ込む主人公を知っている。頭痛い。現に毎日病室に通うコナンがおる。ジョジョの世界で満身創痍かつ左手を失い失望感を味わうことも出来ず、コナンの怒濤の攻め(尋問)を受けていた。
 僕江戸川コナン! 僕がお姉さんを最初に見付けたんだ。お姉さんの名前は? どうして大怪我を負ったの? あの場に何があったの? 何かに巻き込まれたの? 全身黒ずくめの人とか見なかった? 等々。私はよく覚えてないでぎこちない答えを繰り返した。もちろん、思い出しちゃいるが正直に言える内容でもない。結局、主人公に不信感を持たせてしまう大失敗をした。だけども、どうしていいかもわからなかった。刑事の人とか医者とかにも同じ内容を話し結局記憶喪失者として扱われるはめになっていた。
 あれから4ヶ月半と戸籍と住むところを確保し、民生にお世話になり漸く腰を落ち着かせようした矢先、見覚えのある赤い靄が湧き出ていた。咄嗟に立ち上がって狭い部屋で立ち上がる。数少ない家具が自分の忌ま忌ましいスタンドのせいで壊されたくなかったからだ。でも、突然のことに低い天井に取り付けられた照明器具に靄が掛かってしまっていた。慌てて移動したが、壊れる事無く古臭いその照明は無事だった。
「ま、マジで良かった……」
 思わず声によって出した後、凄く嫌な声を耳にした。
「このDIOを随分と待たせてくれたじゃあないか」
 目を疑った。あの世界で道連れにされた承太郎達の旅の目的の男……そして、私の腹に穴を開けた吸血鬼。なんでこの世界に? というかなんで私のスタンドから?
「ふん。……自分がしでかしたことに分かっていなかったのか? いや、自分のスタンドの能力を」
「スタンドの能力?」
「貴様のスタンドは取り込む能力……つまり、貴様は私を取り込み、そのエネルギー源で世界を飛んできた」
 そんな馬鹿なと言いたいところだが、納得してしまう。あの最後の敵DIOとの闘い後に私はDIOに殺され掛けたままこの世界へ突然飛ばされていた。
「あの、忌ま忌ましいジョースター家の居ない世界へと」
 言い終えた途端DIOは壁を諸ともせず突き破り外へと飛び出した。
「うそっ!うそ!?」
 とんでもないことしてしまった。そう、この世界はスタンドなんてあるわけもなし、そもそも吸血鬼なんてやっかいなものなんて……私は自分で気付かぬ内にとんでもない怪物をこの世に解き放ってしまった!
 最早泣きそうになりながら自分自身を責めながらもDIOの元へ走った。繁華街の道筋、路地へ続く道を駆け付けた先驚愕な光景が目に飛び込んできた。
「やめろぉおおおおおおおッッ!!!」
 自分でも驚くほど絶叫だったが構っていられなかった。引っさらってきた女性の首筋に指3本突っ込み吸血していたDIOを押さえ込もうとした。ただ黙っている奴じゃない。けれどDIOは僅かに動きが固まり私の方を凝視している。大きな体がシュンと音を立てて消えていた。……今のは夢……じゃない。DIOに襲われていた女性が倒れている。私は血の気のないその女性に慌てて近くの店に駆け込んで救急車両の要請をした。

「……」

無論、事情聴取である。吸血された彼女は一命を取り留めてくれて安心したが、その場に居合わせたとめに警察に居る。さすが名探偵コナン。事件発生である。今回はDIOのせいなのだが。というか、寧ろそれが頭を抱える案件。どうして、DIOを私のスタンドと共に現れたのか。

「♪♪さん、帰ってもよろしいですよ」
「はい」

 しばらくして解放された私は引き摺るようにしてアパートに戻り壁に開いた壁のことをすっかり忘れていた。



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