雑居ビルが立ち並ぶ隙間。そこからビルの裏口に繋がっていて少し開けた場所。そこでコナンは横たわる♪♪を発見した。普段なら行くことのない場所に立ち入ったのは虫の知らせというか探偵の感というのか、本当に奇跡的な行動だった。四方10メートルの広さしかない裏手の中央に大量の血を流し倒れている女性の姿。真っ先に駆け寄り脈を測る。

 生きてる──!
 失われた左手と着ていたセーラー服の腹部は穴が空いていてそこから妙な窪み。そこはどす黒く血が滴っている。ショック死もあり得る異常事態に彼女は逞しくも命を繋いでいた。コナンは素早く救急車両を要請して、到着した救急車両に一緒に乗り込んだ。勿論、事情を説明するつもりで。
 緊急搬送されすぐに手術が行われ、命を取り留めた。手術を行った医師によれば、左手は綺麗な切断面だったことから、鋭利な刃物のついた相当の力の出る何かで切り取られていたこと。腹部は背中まで穴が貫通しており、肉は潰れて内蔵も損傷していた。まるで鉄筋工のように物質的硬さの何かによって貫かれて出来た穴らしい。事件と事故両方の捜査を警察が始めたが、目立った怪我の二カ所はそれぞれ違う損傷により事故よりは人為的な被害状況のため、何かしらの事件に巻き込まれた可能性が強いとみている。身元の分かる物は持っておらず、身元の特定も急いでいるのだが、これが思いの外困難を極めた。捜索願も出ておらず、親族も名乗り出ない。身に付けているセーラー服は現在の学校の制服と合致しない。改造制服ではなさそうなので不可解だ。そして、コナンもまた現場周辺を検証をしていた。何かしらの事故ならば危険な機械や道具は周辺にあったり、そこで付着した血痕があってもいいのだが危険なものは何もない。あれだけの大怪我をこの血を流した所でしか考えられないため、やはり故意的に怪我を負っている。コナンが発見してから早くも一週間。彼女は昏睡状態で本人から事情を聞けずにいるので憶測でしかできない。未だ名乗り出ない家族にもしかしたら、もっととんでもない事件なのかもしれない。

 彼女の見舞いに訪れていた時である。いつも呼吸器を付け死んだように眠り続けていた彼女の目が開いていた。思わずコナンが駆け寄る。
「お姉さんっ!目が覚めたんだね!?」
「……はァ?」
 目の覚ました彼女は混乱していた。コナンはナースコールを押して彼女の目覚めを教えた。問診する傍らずっとそばにいたコナンに怪訝な視線を送りながらも泰然自若と答えを口にした。
 名前以外何も覚えていない解離性健忘と診断された。心身共にショックを受け忘れてしまったという。コナンは本人から事情を聞き取りたがっていたため非常に悔やまれた。何かしら糸口があればと、躍起になり本人に質問を投げかけたその日彼女は、突然錯乱状態に陥り何かに怯えるように病室から脱走を計った。次の日病室に訪れたコナンは昨日と打って変わり、意識のない彼女の様子に――新たな包帯が幾つも巻かれ、至るところにガーゼやら湿布薬が貼られていて、目を覚まさず昏々と眠りについている――点滴の確認に来た看護士に事情を聞いてコナンは自分がしたことが彼女をいかに追い詰めてしまったことに気づき慚愧の念に沈んだ。彼は推理力は優れてもデリカシーがないといつも幼なじみの毛利蘭に言われ続けていた。

「よっぽど辛いことがあったのね。だから、こんなこと言うと本人には駄目なんだろうけど、忘れるほうが良かったのかもしれないね……。私も昨日その場に居たんだけれど、ひどく怯えてた様子だった」

 看護士はその場面を思い出しているのか悲痛な面持ちでベッドに横たわる♪♪を見つめた。

「……怯えてたって何に怯えてたんだろう」
「そうね。彼女逃げようとしていたように見えた。叫び声を上げて……ディオって言っていたけど誰かの名前かな? 彼女をこんなにした人の名前だったら本人には言えない名前ね」

 傷口が開いて今は薬で寝かせているので彼女は暫くの間起きないと話した後そうコナンに伝えた。はーいと可愛く返事をして病室を看護士と一緒に出た。
 ディオ。イタリア語で神を意味する名前だが、それ以外さっぱりだ。しかし、彼女に聞けない。コナンはただ、彼女の一日でも早く元気になることを祈ることしかできなかった。

 警察の捜査は病院側の配慮を汲んで彼女にはもう話を聞くことはしない。当然の如く捜査は打ち切られた。そして、就籍は彼女が名乗った☆☆♪♪、年齢を17になることが決まった。








前半のジョジョの話を書いた部分がどっかにいったんだ。すまん。わかりにくいね。


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