手を離せないのは、どっちだ
思考が夢からゆっくり浮上してくる。
が、その日は少し違った。
なんだか上半身が少し涼しくて下半身が熱い。
というかすごい違和感を覚えて、目を開けたら俺の上にまたがり腰を振るツナがいた。
「おい、何してんだ?」
「ん、おっきくしないでって…何って、セックス?」
「朝からそんな格好してたら、でかくもなるだろうが」
きょとんと首を傾げて当然のように答えるツナにいらっとして見せるが止まるという思考はないのか腰を振り続けている。
ローションをたっぷりかけたのだろう、先走りもあるがどろどろのそこはツナの動きを助け気持ちよさそうにあえいでいる。
「でも、こっちのほうがいいや…なんか、さっきはいつ折れるか心配…でっ!!」
「折れねぇぞ、馬鹿が」
「痛いっ…乱暴するなっ」
人の沽券にかかわるようなことを言われて苛立ち紛れに殴ってやったら泣きそうな顔をしていた。
寝ている相手のものを入れる方がどうかしていると思うが、入れてしまったものは仕方ないだろう。
俺はツナの腰を掴んで揺らしてやり、自分の動きじゃない動きで揺らされるのにとろりと瞳が快楽に濡れる。
「こっちに集中しろ」
「んっ…さっき、まで…してたっ」
「俺を楽しませろ」
自分ばかり気持ち良くなっているなと尻を叩き、ぐっと最奥を突き上げれば喉を反らせ声を出せないままびくびくと震えていた。
とたん、ぎゅっと締め付けられて俺も息を吐く。
「まだ、いくなよ」
「っ…たりない、し…まだ…まだ」
イかないと首を振り、俺にすがるツナ。
髪を撫でて、キスをして、背中を抱いてやる。
ぴったりと身体をくっつけたままゆらゆら揺れると気持ちよさそうに鼻に抜ける声を上げる。
このまま時間をかけてゆっくりと行為をするのもいいなと感じるが、時計が目に入る。
早朝とはいえ、時間があるとは言えない。
ツナは今日の仕事だってかかわってくる、あまり身体をつなげ続けているのも問題だ。
「ほら、身体上げろ」
「ん…やだ」
「駄々こねるな、このままイけないで終わりたいか?」
「…それはもっとやだ」
「なら、ちゃんと動け」
肩を押し、身体を起こさせて足をM字に開かせそこを丸見えにさせる。
絶景だ。
自身に手を伸ばし、先端をくるくると指先でもてあそび、先走りをなじませる。
ツナが物欲しげな目で俺を見てくるのを確認して扱いてやるが、違うと唇が動く。
「何してほしいか、いえ」
「つ、ついて…奥、して」
腰を揺らめかせながら熱に浮かされた瞳が俺を映す。
言われるままに突き上げれば甘い声を上げて、だんだんとそれが大きくなってくる。
「あぁ、あっあっ…あああっ、きもち…いい、いいー」
「もっと絞めろ」
「ひっ…あっ、もう…だめ」
動けない、とへたり込むツナの尻を掴んで揉んでやればその刺激もいいのか小さく啼く。
ツンととがった乳首が見えて、ツナの手を取るとそこへ持って行った。
「自分でいじっていけ」
「ん、や…だって、はずかし」
「なら、こっちもずっと焦らしてやるぞ?」
「ん…意地悪」
睨まれたって、今のツナでは何の効力もない。
それに本気で嫌ならばもっと必死に抵抗すればいいものを、そんなに無防備な顔で物欲しげな顔をしていたら何の説得力もない。
腰をゆらゆらと揺らしながらツナを焦らす。
ツナはすごく不本意そうな顔をして、自分の乳首をつまんだ。
一人でするときしているのだろう、目を閉じてきゅっきゅっと抓む様にぎこちなさがない。
それに合わせて突き上げてやると、絶妙に中が締まり絡みついてくる。
離したくないといっているような内壁を遠慮なくこすりあげ、とろとろと先走りを流す自身の先端を指で強くこすった。
「あっ、いく…いくっ…いっちゃうよ、リボーン」
「いけよ、ツナ」
感じるたびにきゅんきゅんと締め付けるそれに、こちらも限界だと最奥を突き上げ、一緒に上り詰めた。
くったりと力を抜いてもたれかかってくるツナに俺は背中をなで、少し余韻を楽しんだ後、中から自身を抜き、ベッドを起き上がる。
時計を見れば、ちょうど起床時間だ。
「シャワーを浴びてくる」
「んー」
「ツナも仕度しろ」
「んー」
ベッドに顔を埋めたまま返事をするツナに、出てきて何の準備もなかったら叩き起こそうと決めバスルームへと入った。
できれば、事後処理もしたかったが思いのほか長引いてしまった。
いや、俺が焦らさなければ今頃ちゃんと中を洗い流すことができたのだが、あれは俺も悪い。
少し反省しながら、身体の汗とローションと精液を流す。
身体を洗って、髪まではさすがに手を付けられなさそうだ。
早々に出た俺は、身体を拭きながらベッドを覗くと、バスルームに入るときと同じ姿勢のツナに、俺は容赦なく手を振り上げた。
「いってぇっ」
「したくしろって言っただろうが」
「だからって、尻を叩くことないだろ」
もみじができたらどうするんだと半泣きのまま顔を上げるツナ。
俺をじっと見て、手を伸ばしてきたから身体をかがめてキスを一つ。
俺はすぐに離れて、クローゼットを開け、シャツに腕を通し、下着を身に着けズボンをはいた。
ボタンを閉め、ベルトを通し、ネクタイを首に通した。
「俺がする」
「しくじるなよ」
自分のしたくは後回しにして口を出してきたツナに仕方なく首を任せつつ俺は上着を手に取った。
もたもたした手つきで結ばれたそれは、自分でやるのより少しいびつな出来上がりだ。
「完成、これでよし」
「…少し曲がってるだろうが」
「俺の限界だもん」
かわいこぶったって駄目だ、俺は少し直してボルサリーノを手に取ろうとしていつもの場所にないのに気付いた。
「おい、どこに隠した」
「…ここ」
ちらりと上げられたベッドの中に入れられたボルサリーノを仕方ないなとため息を吐きながら手に取り、頭に乗せた。
「もっとキスしてくれなきゃやだ」
「…離せなくなるだろうが」
「いいから、ほら」
ねだるような視線に根負けして、俺はツナに口づけた。
さっきまでのような軽いものじゃなく舌を絡ませる濃厚なものだ。
ツナののどが鳴り俺はもう少しと口の中をむさぼった。
が、無情にも部屋のドアがコンコンコンとノックされた。
とたん、ツナの腕が俺の肩を掴み引き離した。
「時間だってば」
「お前が誘ったんだろうが」
「そこまでしほしいわけじゃない」
「もう少しだ」
だから、止まらなくなるといったのに、なんて思いながらツナの唇をむさぼったら、案の定せかすように今度はさっきより少し強めなノックが聞こえた。
俺はツナから離れ、盛大な舌打ちを零すと銃をホルダーへとしまう。
「気を付けて」
「わかってる、お前はしっかり仕事しろ」
「はぁい」
言いながらまたベッドに顔を埋めるツナに、しっかり仕事してなかったらみっちり扱いてやると思いつつ部屋を出ると、不遜な顔の骸がいた。
「すまん、遅れた」
「部屋の中でどうして遅れるんですか、寝坊でもないのに」
「そこを聞くのか、教えてほしいなら全部言うが?」
「言わなくていいですよ、毎回毎回あなたたちはそんな今生の別れを演出するんですか」
「今生の別れじゃない」
「わかってますよっ!!」
苛立ちながら先を歩く骸に、小さく笑い仕事に向かう。
今日は遠征だ、骸と一緒に任務をこなす。
ツナはいつものようにデスクワーク。
離れても三日ほどだというのに、いつもあんな感じのよくわからない送り出し方をするツナを俺はかわいいと思う。
だからこそ、やめろとは言わないし、やめようとは思わない。
むしろ、そうやられるたびに帰ってきて何度でも尻を叩いてやると思うのだ。
「ツナがはなさねぇんだ、しかたねぇだろ」
「ほう、それはそれは…でも、本当に離さないのは沢田綱吉だけなんでしょうか?」
骸の嫌味とも取れる一言に、俺は小さく笑うだけだった。
END