煽りあい



ボンゴレの傘下の会合が開かれた日、俺は疲れた顔で帰路についていた。
そばにいたのはもちろんリボーンだ、帰りの車もリボーンが運転している。
二人きりの車内、けれどお互い何かを離すことはなく、ただ手を握っていた。
今日の会合はいわゆるお偉いさまのご機嫌取りだった。ボンゴレに投資してくれる人もいるので、下手なことは言えないしできない。
俺の見張りでもあったリボーンは、俺のこめかみに青筋が浮かんでいたのも見えていたのだろう。
まったく、好き勝手言ってくれる。それにもリボーンが反応していたが、俺が必死でスーツの裾を引っ張りなんとか抑え込んでいた。
こんなに気が短い…なんて言えるだろうか。
二時間、耐えた方だと思う。いや、無事に終わるまで耐えたのだから上出来といえるだろう。
そして、そのストレスは吐き出されることなく俺たちの間にわだかまり続けている。

「リボーン、このまま帰りたくない」
「…なら、どこにするってんだ」

このままじゃ誰かに当たってしまいそうだと握っている手でリボーンの指先を撫でる。
リボーンもそれに応えるように手に力を込めた。

「どこでもいい、リボーンの好きなとこ」

リボーンの手を引き寄せて、指先に舌を這わせる。
ぴちゃりとわざと水音を立ててやればピクリと反応して、その敏感なさまが楽しくてにやりと見れば、そのまま手をリボーンがとっていった。
そして、今度はリボーンが俺の指の股に舌を這わせる。
絡ませるようにしているので、股なんてすぐに舐めれる位置にあり、しかもそこが指では一番感じやすいところなのでたまらない。

「っ…」
「俺の好きなところでいいのか?」
「いい、いい…から」

囁くように言われる言葉が、別の意味も含まれて一段といやらしく聞こえた。
爪の間まで舌が入り込み、むずがゆさを覚えて、手を引くがリボーンは俺を見つめてきている。
信号機で止まった隙に口づけ、遊びで舌を入れたら熱っぽいそれが絡みついてきてやばいと思うのに、止められない。
くちゅ、と唇が離れ、信号機が変わって動き出す車。
リボーンは前に視線を向けながらも指をいじるのを忘れなかった。それだけならまだしも、リボーンの指が離れたかと思うとそのまま俺のズボンへと入り込んできた。

「ちょっ…ばかっ」
「俺の好きなところだろ?」
「おまえっ…」

ごそっと入り込んできた手を押さえつけるようにしたら、自身に押し付けるようになってしまい、リボーンはクツクツと笑って握りこんできた。

「やめ、やっ…ここじゃ」
「待ってろ、すぐにつく」

待ってろ、じゃないリボーンの手は容赦なく俺自身を扱いていて、そんな余裕なんてすぐになくなった。
感じやすくされた身体だ、リボーンの手で煽られたらひとたまりもない。
ひぃ、と泣き出しそうな声を出すがすぐに車がどこかのホテルへと入った。
なんだと顔を上げると、そこはラブホテルでまさかとリボーンを見るとそのまま車を駐車させた。

「こらこらこらこら、待てないって言ったけどなんでここ!?」
「休憩三時間、ちょうどいいだろうが」

看板のメニュー表を親指でさしていうなりようやくズボンから手が抜けた。
けれど、すっかりそこは臨戦態勢でリボーンを見ても早くしないとせっかくのスーツが汚れるぞ、ボスといわれてしまえばしぶしぶ降りるほかなかった。

「被っておけ」
「うぅ…」

乱暴に押し付けられたボルサリーノに顔を隠すためだとわかればうなずく。
そして、リボーンは一人お互いの顔が見えなくなっているフロントに行くと何かを言って金を出していた。
帰ってきたときには、片手に鍵をもちエレベーターへと乗り込んだ。

「これで、いいだろ?」
「ラブホなんて利用するつもりじゃなかったのに」
「ならどこがいいんだ?さっきの様子じゃここが一番妥当じゃないのか?」

不満があるなら言ってみろとばかりに言われてしまえば、さっきの自分の言葉を思い出して総括すればここしかないことに気づく。
この通り、俺の身体はいますぐにでもリボーンをほしがっているのに、ほかにどこに行けというのか…。
無意識のうちにこうなるようにしていたとあっては何も言えず、鍵に書かれている部屋まで来ると中に入る。
そこは一室しかなく、大きなベッドと風呂とトイレ、それだけだった。
それ以外、必要のない場所なのだから当たり前だ。

「ちょっと見てもいい?」
「ツナ、さきにこっちだろ?」

ベッドの周りに用意されている品々が珍しく俺はベッドに乗り上げた。
リボーンの声に後で、と返して照明のボタンをいじってみる。
いろんなところにあった電球がその用途に応じて光り輝き、なんだか幻想的だ。

「きれいだなぁ、こっちとか…あ、これもいいかも」
「子供か」
「ラブホテルは子供じゃこれないしー」
「そういう意味じゃねぇだろうが」
「ちょっと、まだ遊ぶ」

リボーンが俺の後ろから覆いかぶさってきて、苛立ち紛れに口づけてきた。
息継ぎもできぬほどの深いそれに忘れかけていた熱が呼びさまされる。
ボルサリーノが落ち、ネクタイがシュルリと首から抜けた。

「りぼ…ん…」
「三時間しかねぇんだぞ、もっと時間を大切にしろ」
「それこそ、セックスなんて部屋で嫌というほどできるだろ」
「ほう?ここでしかできないことを所望するか…いいだろう」

なんだかリボーンの気に触れてしまったらしい。
むしろ、今お互いにストレスをためている状態だ下手に煽ったり怒らせたりすると何かされる確率が上がっている。
今更気づいたところで遅く、リボーンはにやにやと笑いながらローションやゴムの入ったところから何かをあさりだしている。

「なに?」
「こういうのは滅多にしないからな」

言いながら手にしたものをシャツの上から押し付けられた。
硬くまるいものに俺はそこに視線を向ける。

「バイブ…?」
「玩具の類はあまりないからな」
「ひぁっ…」

スイッチを入れられ震えるそれに身体が反応した。
胸に押し付けられるそれは、微妙な振動だがゆっくりとしたに下がっていくのを感じてしまえば期待に身体が震えてしまう。
息をのんで見守っていれば、リボーンが笑う気配がした。

「自分でしてみるか?」
「しない、でも…リボーン」
「なんだ?」

へそあたりをくすぐられてぎゅっとリボーンの腕を握った。

「玩具は…好きじゃないけど、リボーンなら許せる」
「なんだその理屈」

バイブとかそういうのは、人間の感情に左右されない。
一方的に感じさせられるのがすごく俺はいやだったけど、リボーンのものを最後にもらえるなら、乱れてもいいと思える。
それで感じたって、いいと思える。
リボーンはあきれたように笑って俺のズボンと下着を一気に脱がしてきた。
俺はうつぶせのままで、しかもシャツを着たままだったが、リボーンも服を着たままなのでそれでもいいかと思う。
そうして、ローションを秘部にたらされバイブが入り込んできた。
緩やかな刺激を与えてくるそれは、リボーンの指によって俺の感じるポイントまで導かれそこに押し付けられた。

「ひんっ、やぁあっ…ああっ、そこ…ぉ、やっ」
「一気に感じるようになったくせに嘘つくな」

腰を揺らしてなんとかその刺激から逃れようとするのにリボーンは無理やりそこに押し付けてきて、ますます我慢ならなくなってくる。
ぎゅっとシーツを握りしめ、その刺激に耐えていると指が抜けて、リボーンは自分の服を脱いでいるようだった。
そうして、俺の方にも手が伸びてきてシャツを脱がしようやく素肌が触れあうようになる。
仰向けに転がされて、リボーンは照明をいじり少し光を落とした。

「たまには気持ちいいだろ?」
「くぅ、ん…や…へん…奥が…」

やっぱり一方的なのはだめだと首を振って、助けを求めるようにリボーンにすり寄った。
もう我慢できず先走りもあふれて、腰を押し付けている状態だ。
そうでもしないとこのむずむずとした変な感覚は拭い去れない。

「どうしてほしい?」
「リボーンの入れて、もういい…これ、いらないから…リボーンのでこすってほしい」

これ以上は耐えられないとリボーンに甘えてみせる。
すると、もう少し焦らすのもよかったけどな、と余裕な言葉を残しつつ中からバイブが抜き去られた。
そりゃ、気持ちいと思えるには思えるが、人間のぬくもりの方が断然いいし、何よりリボーンに入れられて抱きしめられる方が感じるし気持ちいんだといいたい。
玩具を楽しみたいなら一人でいるときにするよ。
今は、リボーンがいるんだからリボーンが俺を気持ち良くするべきじゃないのか。

「不満そうな顔だな」
「リボーンがいい」
「わかった、今入れてやる」

焦らすことなくそこにあてがわれた熱、指で慣らすことなく入り込んでくるがバイブのおかげか痛みはなかった。
そのかわり、さんざん焦らしてきたからか入れられただけでいきそうになってしまう。
俺はせわしない呼吸を繰り返しながら、リボーンを見つめて舌を出して喘いだ。

「まだ、まって…うごいちゃ…」
「絡みついてくるぞ?そんなに気持ち良かったのか、安心しろ今すぐにでも突き上げてやる」
「やめっ…あぁっ、やぁあっ…りぼっ、もぉ」
「何言ってもかわいいだけだ、あきらめろ」

何があきらめろだ、人の忠告まで無視して…。
けれど、動くたびに気持ちいいしすぐにでもいきそうなのに、リボーンは焦らすこともしないから、だめ、だめ、とうわごとのように繰り返した。

「ほら、いけよ」
「ふぁ、あぁっあっあっ…やぁ、んんーっ」

自身を扱かれたらひとたまりもなかった。
俺は中を締め付けながら白濁を放って、リボーンも俺の奥に放っていた。
けれど、リボーンのものはそれだけで萎えることなく俺の中に居続け、嫌な予感がして顔を上げればぺろりと唇を舐める。

「なんで…」
「三時間、たっぷり休憩するぞ」
「っ…それ、休憩じゃないしっ!!」

リボーンの悪魔ともいえる一言に俺の血の気が一気に引いて、逃げようと這い上がろうとした身体はやすやすとリボーンにつかまった。
このままじゃやり殺される。
なんでだ?そりゃ、一方的にストレスのはけ口にされるからだ。
こっちだって、すっきりしたいのに、と泣きそうになりつつも結果三時間もたてば俺の精もすっきりとしてしまうのだ。
いや、正直すっきりしたいのはそっちじゃない。
煽った結果、とんでもない副産物をもらってしまうことになったのだが次もやらない確証はどこにもない。




END







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