大人の余裕ってやつ



ぐちゅっと卑猥な水音が俺の耳に入ってくる。
恥ずかしいぐらいにその音を響かせてリボーンの指は俺の中をかき回した。
リボーンの指は巧みに俺の感じる場所とそうでない場所をこすり、俺がこのままイってしまいそうになるたび、リボーンはその手を緩める。
いい加減にしろと、睨み付けてもその顔に迫力はないぞと笑われて終わる。

「ば、かぁ…ひぁっ」
「今日はぎりぎりまで我慢させるからな」
「やっ、やめ…ちょ、リボーン」

リボーンの言葉に絶望して必死で逃げようと腰を引くが、リボーンはかまわず俺の腰を引き寄せ濡れた指をますます深くねじ込む。
二本だったのが三本になったのを感じながらそのままイかせてくれればいいのにとリボーンを見つめた。

「だめだぞ、ツナ…今日はたっぷりお前のかわいい顔を見せろ」
「っ…なに、ばかな…こと」

恥ずかしいことを言うなと視線をそらしてこの言い方だと今日はとことん焦らされるのだろうと半ばあきらめ気味に抵抗する力を緩めた。
こうなるとリボーンはしつこい、本当にしつこい。
泣いても縋っても煽ってもリボーンは俺を焦らし続けた。

「やだぁ、も…やめ、ふぁっ」
「そろそろ俺も…入れるぞ」

ようやくリボーンは終わらせる気になったらしい。
俺の中から指を抜くとそこにあてがわれた熱に俺は、身体を震わせた。
早くほしいとリボーンを見つめるとすぐにやるとばかりに瞳が合図した。
ゆっくりと入り込んでくる熱いものに俺は喉を反らせその熱に吐息する。

「ひあっ、あぁっ…リボーン、もっと奥にっ」
「吸い付いてくるみたいだな…気持ちいいか?」
「ん、もちい…から、うごいて」

不本意だが、これ以上俺は耐えることができない。
今すぐにでもイってしまいそうなのに、リボーンは俺のものを握って出すこともままならない状態だ。
これ以上待たされるのは苦痛にしかならず、リボーンが動くたび快楽で意識が飛びそうになる。

「あっ、あっ…やだ、ぁ…もう、だめ…いきたい、いきたいっ」
「もうすこしだ、ツナ」

耳元でリボーンの感じた声を聴いて、ますます感じて中を締め付けてしまうとリボーンがにやりと笑って俺を見る。
しかたないだろう、そんな風にされたら誰だって感じるものなんだ。
いらっとしたついでに俺は握った手をリボーンの胸に押し付けた。
殴りつけたつもりだが、力が入らないのは明白でリボーンは俺の中を堪能するように自身をこすり付けてくる。

「んんっ、め…もう、りぼーん」
「…こらえ性のないやつだな」

お前の方が遅すぎるんだという減らず口をたたく前にリボーンは最奥へと突き上げてきた。
頭の中で花火が起きたようにぱちぱちとはじけもう限界で、リボーンに揺さぶられるまま身体を縋らせていた。
そのうち、リボーンは満足したらしく中で白濁を放ち、俺もようやく指を離されて解放されたのだった。
その時にはもう体力も限界で、かすみゆく意識の中これの仕返しを絶対にしてやると心に決めた。





朝起きると身体はだるかったが、手触りはさらさらとしていてリボーンが後始末をしてくれたのだというのがわかった。
けれど、昨日のことは忘れもしない。
隣で我知らずと寝こけているリボーンの頬を引っ張ってやりたかったが必死で抑え込む。

「よし、今日も仕事だ」

気持ちを入れ替えて、首を振ると俺はベッドから起き上がった。
リボーンはこのまま寝坊させてやろうと思って支度をしていると、いつもの時間に目覚めたようだ。

「はようだぞ、お前もういいのか?」
「ん、大丈夫だけど」

にこっと笑ってちゅっと頬にキスをする。
リボーンは今一瞬何が起こったのか理解できていなさそうな顔をして俺を見つめ、俺は何でもないことだと身支度に戻った。
さっさとすませると、先にいってると朝食の場へと向かう。
リボーンは防戦と取り残されていた。
俺が考えたのはこれだった。
今日はとことん、リボーンを煽りすべてかわして見せる。
昨日の苦痛を俺は忘れない。

「十代目おはようございます、何だか今日はすっきりとされていますね」
「そうかな。昨日よく眠れたせいかもしれない」
「そ、それはよかったっす…ね」

若干俺の笑顔に隼人が引いた気がしたが気にしない。
俺の顔がどんなであれ、今日の俺は怒っているリボーンに対してすごく怒っている。
だから、誰も話しかけないでくれ。
今日はリボーンに怒りの矛先を向けるって決めたのだ。
隼人のおびえた視線を感じつつ、朝食を食べ終わる頃になってリボーンが食堂へと入ってきた。
俺はすぐに立ち上がり、リボーンの横を通り過ぎようとして腕を掴まれる。

「どういうつもりだ?」
「ん?なんのこと?」

知らぬふりをして、仕事しなきゃだからとリボーンの手を離させた。
仕事と聞いてはひきとめることはしないリボーンだ、簡単に離れた手に俺はそのまま食堂を出た。

「さて、これからどうやってやろうか」

煮るなり焼くなり、俺にはたやすいんだぞという意思表示を込めたつもりだ。
リボーンは俺の弱点を知っているかもしれない、けれどそれと同じぐらい俺だってリボーンの弱点を知ってるんだからな。
恨み言を心中で呟きながら、呪いをかけるような要領で今日一日が始まった。

まずは、すれ違いざまに警戒するリボーンに上目づかいでなにしてるんだ?と首をかしげて見せる。
初歩的だが、これでも結構リボーンがこういうのを気に入っていると知っている。

「今日はいったいなんなんだ」
「だから、何のことだって」

笑ってごまかしその場を後にした。

そして、次。
書類を持ってきてくれたリボーンの手にさりげなく触れて、ぎゅっと一瞬だけ握ってすぐに離す。

「ツナ…」
「ふふっ」

だんだんと俺の意図がわかってきたのか咎めるような声に笑って見せる。
こういう時のリボーンってなかなかかわいいんだよな。
なんつうか、お預け食らってる時の顔によく似てる。
情事を思い出してうずく身体に知らぬふりをする。
ここで俺が煽られてどうするんだよ…。
あきれつつも、リボーンの視線を感じながら俺は書類に視線を落としていた。

次、日は沈み今日のノルマを達成し終えた俺はようやく自室へと戻ることを許された。
だが、部屋に入った途端横から伸びてきた手に一瞬動きが遅れた。
電気をつける前で、視界も不明瞭。俺は簡単に誰かの腕の中へと囲われた。
けれど、すぐにその正体が明らかとなる。
この匂いは、リボーンだ。

「離せよ」
「お前今日一日よくも俺を煽ってくれたな」
「昨日俺をあれだけ焦らした罰だ、もっとじれろ。煽られろ」
「ほう、で…俺を抱いてほしい、ってことか?」
「違うっ、勘違いするなよっ」

耳元でいやらしい声を吹き込まれて背筋が震えた。
これはやばいとリボーンの腕の中で暴れるが、当然のように強いその腕は外れるはずもなく俺の危機感は高まっていくばかり。

「やらない、今日は絶対やだっ」
「あれだけ煽られて、俺が焦らされただけで終わるわけないだろうが」

ぴちゃ、と耳たぶへ舌が触れる。
いやいやと首を振るのにリボーンは離してくれない。
やばいやばいやばいやばい…。
頭の中で盛大に鳴り響く警報音。
逃げれない、後に引けない。
どうしてあの時俺はリボーンを躱せると思ったんだ?
そんなの無理に決まってるだろ、こんな暗闇で待ち構えているなんてそもそも頭になかったよっ!?
俺のバカ俺のバカ俺のバカ…っ

「ツナ、今日もたっぷり…かわいがってやるからな」

覚悟しとけ、と吹き込まれて最後…俺の腰は翌日立たなかった。
立てるようにしてくれていた昨日は本当にリボーンからしてみれば序の口だったのだと俺は思い知り、大人の余裕も崩れ去り、俺はもうあんなことを考えるのはやめようと心に誓ったのだった。



END







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