桜の季節、きみとふたり


縁側で桜の花びらが舞い散る風景を眺める。
日本庭園風なそこは雲雀さんが独自に所有している日本のアジトだ。
表向きはしっかりとした名前で登録されているのだが、俺達にいう時はいつもアジトだとか隠れ家だとか言っているのでそれでいいのだろう。
春になり、桜が綺麗だから部屋を貸してあげるよと珍しく誘われた。
雲雀さんはいいんですか、と聞いたらディーノと温泉の予定だから今年の花見はそこでしてくるのだそうだ。

『僕が見てあげられないから、君たちが見てあげてよ』
『はぁ…わかりました』

機嫌がよさそうなのを見ると相当ディーノさんに何かさせたのだろう。
俺は雲雀さんがいつかディーノさんのファミリーを裏から制圧していそうで若干の恐怖を覚えている。
まぁ、あの人のことだから悪用するようなまねはしないのだろうが…。

「それにしても、綺麗だな」
「そうだな」

俺の膝にはリボーンがいてのんびりと眺めている。
今は仕事のことを考えるのは止めて休日を楽しんでいる。
なんとかもぎ取って逃げるように来た日本は変わらず、母さんに挨拶をしたのちここにきた。
食べ物も飲み物も好きにしていいという言葉のまま、俺達は好きに台所を使ってありものの団子やらお茶やらを用意して縁側で寛いでいた。
リボーンの膝枕の要望には少し戸惑ったのだが、二人きりじゃねぇかと言われてしまえば拒否する理由はない。
もそもそと動く頭に気を取られつつも風に舞って降り注ぐ花弁は雪のようで目を奪われる。

「ホントに花見ごろだな」
「ああ、寝てもいいか」
「いいよー、俺も眠いし」

少し寝ようかと髪を梳く。
くるんとした揉み上げを指で遊んで、そっと瞳が閉じられるのを見つめていた。
このまま寝られたらきっと足がしびれてしまうが、リボーンもこのところ気の置けない毎日を送っていたので、少しぐらい我慢してやろうと思う。
背もたれにしている柱に身体を預け、俺も少し昼寝をしようと目を閉じた。
春の暖かな気候は日本特有のものだ。
久しぶりに我が家にきた気分に浸りつつ、時間を忘れた。




少しの肌寒さを感じて目を開けると、すっかり日は沈んで庭に設置されたライトが桜と庭を照らしていた。
膝を見るとリボーンはいなくてどこにいったのかと探すと奥の部屋に明かりがついていた。
俺は目を擦りつつ、そっちに向かうと夕食の準備をしていたらしい。
日本家屋に似合わないイタリア料理がテーブルに並べられていた。

「リボーンらしいな」
「なんだ、食いたくねぇなら食べなくていいぞ?」
「ちがうって、そんなこと言ってないだろ」

小さく笑ったら怒られた。
というか拗ねられたというのが正しいか。
そんなことないからと座れば手を合わせて食べ始める。
リボーンがこうして甘やかすせいで、俺はまったく自炊能力がないのだが…本当にこれでいいのだろうか。
ちらりと、リボーンをうかがうとなんだと目があった。

「リボーンはさ、俺が何もしなくてもいいのか?」
「…させるだけ無駄だろ。ダメツナ」
「あー、最初から諦められてるのかよ」

昔からのダメさ加減を思い出させてくれるその言葉に俺は呆れたため息をついた。
けれど、リボーンはそうがっかりするなと言葉を続ける。

「俺がこれぐらいしないと割に合わないだろうが」
「は?」

なにか俺はしていたのだろうかと首を傾げると、リボーンは目を細めて笑っている。

「まぁ、自覚がないのはそれが当然と思われてると取るがな」
「はぁ!?」

ますますわからない。
リボーンの言葉に何がだと頭にハテナマークを浮かべまくるが、リボーンはそれ以上言うことはなく黙々とパスタを口に運んでいる。
いう気がないみたいだから俺も途中から飽きて食べる方に集中した。
食べ終われば、食休みを挟んで交互に風呂に入ると寝室に行けば開け放たれた障子があってそこからも桜を眺めることができ、少し肌寒さを感じるが花弁が舞いこんでくるそれを見れば、しめることはできなかった。
しかも、布団がしっかりとくっつけてならべてあるところを見ると今日はこの景色を見ながらするようだ。

「はぁ、恥ずかしいやつ」

さりげない気づかいに俺は顔を手で覆いながら、リボーンを待った。
寝転がって待つと、うとうととしてきて桜の桃色がきれいだと感じながらゆっくりと意識を手放そうという時だ、襖が開けられてリボーンが入ってきた。
オールバックにした髪で浴衣が似合いすぎて、そろりと目を向けた。
触れたくて手を伸ばすと隣に座ったリボーンはそっと覆いかぶさってくる。

「寝るか?」
「お前を待ってたんだから、寝るわけないだろ」

首に手を回してちゅっと唇に触れると、リボーンの口角が引きあがっていつもの不敵な笑いを浮かべる。
庭から差し込むライトに照らされたリボーンの顔がとても優しい表情をするのがわかるから俺の身体に入っている力がゆっくりと抜けていく。
浴衣の合わせから手を差し入れて、胸を弄られそっと突起を掠める掌に押し付けるようにすると素直に尖ったそこを摘まんでくる。
呼吸を乱すともっと刺激を与えられて、溢れる声を手の甲で抑えた。

「聞かせろ」
「んあっ…ふぁぁっ、リボーン」

シュルリと腰から帯が引き抜かれる。
下着を身につけていなかった俺はすぐに高ぶったそこも露わにされた。

「待たれてんのがわかるのは嬉しいもんだな」
「…知ってるくせに」
「こうして目でわかるのは、それだけで興奮すんだろ?」

太股に押し付けられた熱に、俺はカッと顔を赤くした。
リボーンの興奮を教えられて、見つめ返すと一緒にするかと手を握られてそこに導かれる。
下着の中から自身を出して二つを重ね一緒に扱かれる。
最初はリボーンが動かしていたが、途中から自分で扱いていた。

「ふ、りぼーん…あっ、あっ…」
「気持ちいいか?自分から腰振ってるぞ?」
「いわな、で…あっ、やぁぁ…そこ、こすんな…ぁっ」
「自分でしてるだろ」

小さく笑いながら言われて、そんなことないと首を振るけれど、自分の手が止まってないことに気づいているからこれ以上何も言えない。
気持ちいいぐらいの刺激に泣きそうになりながらリボーンを見つめれば優しいキスをされる。

「もっと、ちょうだい…」
「どこにだ?」
「っ…」

意地の悪いリボーンの言葉に睨めば、ほらと急かされる。
俺の後ろはキュンキュンと自分で蠢いていて、恥ずかしいほどなのにリボーンはそれ以上を求めてくる。
迷った挙句に小さく、あそこ、と呟いた。

「どこだ?聞こえねぇぞ、ツナ」
「ばかっ…あほ、いじわるいっ…リボーン」

恥ずかしくてこれ以上言えなくて、泣きだしてしまえば苛めすぎたかと笑いながら宥めるように俺を抱きしめてくる。
今さらそんな風にされたって絆されないんだからなと言ってやると、そうかと軽く流しながら俺の身体を引き起こして胡坐をかいたリボーンの足に跨がされて座らされた。
抱きつく形のままリボーンは俺の尻を揉んできて、声をあげる羽目になりながら中に両手の人差し指が張り込んでくる。
いつもと違う感触に戸惑いながら左右に開かれるのと外気が入りこんでくる感覚に俺はリボーンの乱れた浴衣を掴んだ。
そして、俺のそれに自身が擦りつけられる。
一番欲しいそれを、リボーンの方だけを握って扱いた。

「ほしい、これ…ほしいって、ねぇ…リボーン」
「もう入りそうだな…風呂で広げてきたのか?」
「ん、だって…せっかく二人きりなのに…」

秘かに期待していたことを笑われるのかと思ったが、リボーンはそんなことはなく、指を抜くとそこに自身を宛がってくる。
俺が自分で体重をかけるようにして腰をゆっくりと降ろしていく。

「ん、んんっ…はっ、りぼーん…あっああっ…」
「支えるか?」
「ひ、も…だめ…あーっ、ふぁっ」

リボーンの声にも間に合わず、ガクンッと力が抜けて奥まで一気に入りこんだ熱に俺は一回吐き出していた。
そして、休む間もなくリボーンは動きだして、腰を掴んで上下させられていたのだが、途中で動きづらくなったのか俺は布団に押し倒されて、腰を抱えあげられ足を胸につくぐらいにされ腰を卑猥に動かしてくる。
自分でもわけがわからなくなりながら、身悶えているとリボーンがじっと俺を見つめているのがわかって顔を隠そうと腕をあげるとそのタイミングで手を布団へと押さえつけられた。

「あぁ、ふっ…やめ…みんなっ…もぉっ」
「みせろ、可愛いぞ…ツナ」
「やぁだ、も…だめっ…ふぁっ、あぁっ…いく、いくっ」

見るなと言っているのに、リボーンは余すことなく全部を見ていて恥ずかしいのと止められないので、俺は中のリボーンを締めつけながら二度目の白濁を放った。
そして、リボーンもようやく俺の中へと注ぎこんだのだった。
ようやく止まった律動に力を抜けば、リボーンは顔を近づけてきて自分から舌を伸ばした。
舌同士が触れ合って、絡め取るようにリボーンに吸われた。
けれど、中のリボーンは力が衰えることなくむしろゆっくりと腰を揺らされてやんわりと俺は胸を押し返した。

「も、むりだって…ば…」
「ああ、わかってる」
「わかってない、じゃん…アッ、うごかさないで」

リボーンの声に絆されつつも、首を振るがゆっくりと動きを再開してくる。

「だめ…ねぇ、リボーン」
「すまん、止まらねぇ」

ばかぁと罵る言葉を最後に、俺は喘がされる羽目になり、結局空が白み始める時間までリボーンに離してもらえなかった。




「のど…がらがら」
「水飲むか?」
「ん…ありがと」

綺麗にされた布団に寝かされて、リボーンは甲斐甲斐しく面倒を見てくれる。
そうして、俺は気付いた。

「割に合わないって…このことかよ」
「ようやく気付いたか…このまま気付かなくてもそれはそれで面白そうだと思ったんだがな」
「…もう、べつにそういう風にしてもらわなくても…交換条件でセックスしてるわけじゃないし」
「俺がしたいんだ、させろ」
「なら…いいけど」

リボーンが嫌で、俺とセックスするにはこうするしかないと思っているのならそれは違うと言いたかったが、そうじゃないと言われて俺はそっと安堵した。
リボーンに甘やかされるのは好きだけど、そういう関係を求めているわけじゃない。
できれば、対等で…たまに甘やかされる…そして、リボーンのほしいままに求めてほしいと思うのは我儘だろうか。

「すき、なんだからな」
「わかってるぞ、俺だって好きだ」
「ん…」

事後の後にとびきり甘くなるのが、好きだと言ったら味を占めそうなのでこれ以上は言わないようにする。
ひらりと舞いこむ花弁に、風流だと感じるが結局目の前のリボーンには敵わない。

「これも、花より団子って…ことなのかな」
「ん?」
「なんでもなぁい」



END





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