お仕置きという理由

普段の業務に慣れてくれば甘さが出てくる。
最初こそ警戒していたが、すっかりそれを忘れてしまったのだ。
通りすがりに感じた尻への感触。せりあがってくるようなぞわりとした嫌悪感に俺は鳥肌を立てていた。
けれど、そこで声を上げてしまえば相手を喜ばせるだけだと知っているから俺は必死で声を抑えていた。
だが、隣にいたリボーンはそれを見てしまっていたのだ。
視線を巡らせた先、どす黒いオーラをまとったリボーンはこの後の俺の不運を告げるようだと自分の尻を触られたことよりこの後の尻の心配をしてしまっていた。



「で、どこ触られた?」
「見てたんだよな?」
「ああ、見てた。が、自己申告制だ」

帰ってきて、部屋に入るなり始まった取調べさながらの尋問に俺は少し引き気味だ。
というか、顔が怖い。近づけるなと言いたいのにそれすらも許さない気迫。

「お偉いじいさまに尻を撫でられました」
「油断するなって言ったよなぁ?」
「…ハイ」

もっともです…とこのことについてはリボーンに逆らえる気がしない。
再三言われていたのだ。あいつには気を付けろ、いい趣味してないからな、と隣で耳打ちするぐらいに警戒を怠るなと言われていたのに、俺はやってしまった。
そして、去り際に見たあのにやにやとした顔…思い出すだけであの感覚をよみがえらせてしまいそうになる。

「ってことで、仕置きが必要だな」
「…ですよねー」
「わかってんなら、おとなしく後ろ向け」
「バックかよ」
「お前最近生意気になってきたな」
「リボーンがそんなだからですー」

けれど、リボーンに言われるとつい命令に従ってしまうのは昔からの身体に染みついた癖というものなのだろう…。
俺はおとなしく背中を向けて壁に手をついた。
ベルトを外されてネクタイを解かれる。
後ろから回ってきているのはリボーンの手なのに、さっきのことを思いだしてついびくついてしまう。

「硬くなるな、力抜け」
「わかってるよ…」

すかさずリボーンの声が聞こえて、俺は深呼吸しながら力を抜く。
シャツのボタンを外しスーツも脱がされた。
そのまま床に落とされてしわになるのに、リボーンは見向きもしない。
胸を撫でて突起に爪を立てられると自然と上がる呼吸。ツナ、と耳元に吹き込まれて身体がしびれたように動けなくなる。
リボーンの声はずるい、俺が何もできなくなるのを知っているみたいに狙って吐息を混ぜて言ってくるのだ。
俺が好きだと一言も言ったことはないのに…。

「ローション」
「ないよっ、こんなところにあるわけないだろっ」

そんな準備のいいことがあってたまるか、とわめけばリボーンはいったん身体を放した。
というか、わざわざ寝室に取りに行っている。

「今日はこのままか…」

なんとも情けない姿である。
でも、ローションがないからそのまますると言われなくてよかったと思うべきなのかどうなのか…。
やってることは最低なのでどっちにしろ俺は怒っていいはず…たぶん。

「つべこべ考えてんな、やるぞ」
「はいはい」

リボーンとのこういう行為にも慣れて…慣れたくなかったけど…なんだか自分が爛れてしまったように感じるけれど、結局それを許してしまっているのはそこにちゃんと愛があるからで、なかったらまずこんな行為していない。
後ろからまた回ってきた手にじわじわと性感を煽られて、腰を突きだすようにすればズボンを下ろされる。
下着も同様に引き下ろされて外気にさらされると同時にローションがかけられた。
絨毯にこぼれるのも気にすることなくすぐに指が入ってきて中をかき回す。

「んっ…んっ」
「この尻は誰のだ?」

少し怒りを混ぜた声でリボーンは聞いてきた。
誰のって当然俺のものに決まっているだろう、という返事するのは知られているだろう、お前じゃねぇぞと先に釘を刺された。
中の指がふやされて感じるところを刺激される。
壁についた指先に力を込めると同じ場所を擦りあげてきて、早くも達しそうになってしまう。

「ふやっ…あぁっ…りぼーんの、リボーンので…いいからぁっ」
「なんだそしかたなくってのは」
「いやっ…あっん」

リボーンの怒りを混ぜた声と同時に奥を突き上げられる。
思わず声が上がるのもかまわずに焦らすように中をかき回されていやいやと首をふった。

「で、誰のだ?」
「リボーンのっ、リボーンのものっ」
「じゃあ、これからも勝手に触らせんなよ」
「んっ…わかったから」

リボーンの言葉に無理やり頷かされて、指が抜けていく。
もう少しでイきそうだったのに、と呼吸を整えていればすぐにそこに熱いものが押し当てられて柔らかくなったそこに入り込んでくる。
ずるりと、こすりあげる動きに俺は息を呑んだ。

「ツナ…」
「ひぁっ…」

思わず閉じた口を唇に指先を押し当てられて開かされ声が漏れた。
自分の声ほど恥ずかしいものはないのに、それを平気でやってくる。
後ろを睨み付ければ、ねっとりと耳たぶを舐められて震えると中も連動して締め付けリボーンが甘噛みした。

「つな、もっとだ…」
「んっ、はぁっ…はぁっ」

リボーンに言われるままに締め付ければ、ゆるゆると抜かれて一気に突き上げる。
最奥までいっぱいにされて背を反らして感じ入った。
壁についた手はいつのまにかリボーンが握りしめていて、背中にもぴったりと重なる肌。
スーツも擦れてるからきっとボタンだけ外したのだろう。
自分はそんなに余裕ぶって…ずるい。

「リボーン…もっと、もっと…おくまで」

俺ばかりは嫌だと振り返ると、リボーンは俺の腰を掴みなおして今度は容赦なく突き上げてきた。
奥へと伸びてくるような突き上げに、自然と俺も爪先立ちになってしまう。

「やぁっ、あぁっ…もう、だめ…ひっ」
「もっとだって言っただろうが」
「むりっ、もうはいんないっ」

予想以上の快楽に立っていることもつらくなって、壁に寄り掛かってしまえば、しっかりしろと腰を抱かれリボーンと密着する。
それすらも苦しくて、瞬間足に力が入らなくなってしまった。
けれど、支えられているので抜けることもなくむしろ力を抜いてしまったためにリボーンに片足を持ち上げられて好き勝手蹂躙された。

「あぁぁっ、もうやだっ…やぁ」
「やじゃないだろ?ツナ…いいっつってみろ」
「んっんっ…ひぁっ、い、いー…だめ…あっ、いくぅ」

リボーンに言われた通りにいえば、ますます感じてふるふると首を振る。
さっきから感じすぎて、先走りはとろとろとあふれ絨毯を濡らしている。
もう少しなにか刺激してくれたらイけると後ろにいるリボーンの首に手を回した。
振り返れば、唇が目に入りちろりと舌を差し出す。

「口で言え、ばか」

リボーンはにやりと笑ってそんなことを言ったくせに俺の唇をふさいでキスをしてくれた。
中を突き上げながら器用にディープキスを施されて、最奥をぐっと突き上げられたとたんリボーンを締め付け、俺はようやく達することができた。
それと同時に力が抜けて、ずるずると俺はその場にへたり込みリボーンは俺の唇を追って一緒に座り込んだ。

「はっ、もう…いいから…はぁ」
「立ったままじゃ面倒だな…」
「それ今気づくの!?」

リボーンの冷静な一言に突っ込めば、しかたないと俺を抱き上げて寝室に連れて行かれる。
腰が抜けているのでここで抵抗はしない。
したらそのまま落とされるのがオチだからだ。

「仕切り直しだな」
「今度はお仕置きじゃなく、だろ?」
「よくわかってんじゃねぇか」

にやりと笑うリボーンに、何年一緒にいると思っているのだと笑う。
まぁ、正直そんなリボーンに何回も付き合うほど体力はないのだけど、リボーンの言いたいことだけはよくわかるようになってしまったんだ。
これも、恋人だからだよなぁ…なんて甘い考えに頭を埋め尽くされるが、すぐにそこに高ぶりを押し付けられて我に返った。

「ちょっ、なんで勃ってんの!?」
「俺は足りてねぇ」
「もう少し待ってっ…俺まだ、むりぃー」

言葉の途中にもかかわらず柔らかくなったそこに入り込まれて語尾が甘いものになってしまうが、俺の心は必死の抵抗をしている。
なのに、ゆっくりと揺さぶられて中がリボーンを許してしまう。
自分の思い通りにならない身体ってなんだ!?もしかして、本当に俺の尻もリボーンのになってしまったのか!?
末恐ろしい状況にウソだろ、と驚きに泣きたい気分だ。

「俺の身体が、俺のじゃないなんて…嘘だ」
「ふっ、今頃気づいたのか?大事にしてやる、安心して身をゆだねろ」

今日もリボーンは俺様です。
ついでに、本当にこいつの恋人でいいのかと不安になってきた。
でも、結局愛されてるし大事にされている…とは思ってるので大丈夫、きっと。
こんなお遊びに付き合ってしまうほどには、やっぱり惚れこんでいるわけで…惚れた弱みだよなぁと結局あきらめるそんな仕事終わりの就寝前…。


END





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