人の話は最後まで聞きましょう
何もない日はいい、少し休んでもいいって気になるから。
でも、本当に気だけなんだけど。
「おら、さっさと片付けねぇと終わらねぇぞ」
「おにぃ」
けれど、そんな少し休んでいい…があだとなる時もあるのだ。
隼人が珈琲の豆を切らしたからと買い物に出るのを確認して、俺はそっと執務室を抜け出した。
やらなければいけないことは当然のようにたくさんあるし、まだ終わってないのもあるし…正直休んでいる暇なんてないのだが、いまだにダメツナといわれるだけあってさぼり癖はあまり直らなかった。
こんなんじゃだめだってわかってるよ、それはもう十分にっ。
だけど、誰もいなくて一人執務室で仕事してるって、寂しいじゃないか。
なんて思いながらどこでサボろうか算段していたら、大量の資料を抱えたリボーンと鉢合わせしてしまった。
俺の超直感が逃げろと信号を身体に送った時にはもう遅かった。
『おい、何してんだ?ボォス』
『…ひぃ』
肩を掴まれあえなく御用。
暇なら俺の手伝いできるよな?
と肩をたたかれてしまえば逆らうことなんてできず資料庫に資料を片付けに来ているところだ。
「…これ、普通の資料と違う…?」
「ああ、それは重要資料だからな奥の部屋に置いてある奴だ」
手分けして片付けているとほかのと異なるファイルに入っているものはどうやらたやすく持ち出しはできないもののようだ。
指で示された先にある重厚感のある扉は少し薄暗くていつもあまり近づきたくない部屋の一つである。
「貸せ、お前は扉の前に居ろ」
「わかった」
扉を開けると中は電気をつけないと暗くて、リボーンが入るなりスイッチを入れた。
俺は閉まってしまう扉を抑えていたが、まだ手元に残っていたほかの資料が崩れてしまい散らばっていく、それを直すのに手を離してしまった。
俺は部屋の中に入りそのファイルを拾って手元に戻しているとリボーンが声をかけてくる。
「ちゃんと押さえてろよ、もししまったら内側からじゃ開かないからな」
「え…あ、まって」
今とんでもないこと聞いた、とっさに顔を上げたがむなしくもガッチャンと扉が閉まった音が部屋に響いた。
伸ばしかけた手は空中で止まり、俺はリボーンを恐る恐る振り返った。
「…ツナ、お前…馬鹿だバカだと思ってたが、ここまでとはな」
「絶望すんなよっ、なんかいろいろとダメージ大きいからっ」
とりあえずガチャガチャやってみるが、開かず。
窓はなく、電気も部屋についた蛍光灯二本だけ…。
「ちなみにいうと電波もシャットアウトしてるからケータイはアウトだぞ」
「追い打ちっ」
「まぁ、ここにあるのは他言無用持ち出し禁止のレッテルのついたものばかりだからな」
「なんでそんなものが必要になったんだよ」
「そりゃ、必要な時もあるだろ。資料だぞ」
リボーンのもっともな言葉にそりゃそうかとため息を吐く。
状況を考えると、こっちから連絡はできない。
外の誰かに気づいてもらうほかないということだ。
「リボーンは誰かに言ってきた?」
「言うわけねぇだろ」
「隼人…は買い出しで、二時間は帰ってこないだろうし。俺がいないのに気付いてもリボーンと一緒なら心配ないって思うかも…」
「絶体絶命ってやつだな」
まさにその通りだ。
だけどこんなところで飢え死にだけはしたくない。
「誰か…気づいてくれる、よな?」
「こんな奥の部屋ふつう気づくか?」
「いや、でも…いないならそれなりに探すだろうし…」
「こんな広い屋敷、見つかるのはいつだろうな」
リボーンは適当な場所に座ると、俺を手招いた。
俺はリボーンの隣に座ってそっと身を寄せる。
二人きりって、嬉しいけど、ちょっと寂しい。
「なぁ、本当にここから出る方法ないのか?」
「考えてみろ。扉は開かねぇ、窓もない、通気口はあるが、人すら通れない。出口はどこだ?」
「…ごめん、俺のせいで」
謝るとくしゃりと頭を撫でられた。
リボーンを見れば、いつもより優しい顔で笑ってる。
そっと近づいてくる身体にそういえばリボーンとこういう雰囲気になったのは久しぶりだって気づいた。
「ん…」
ちゅっと音を立てた口づけ。
すぐに離れるかと思ったその感触は二度、三度と続いて目を開けるとリボーンがまっすぐ見つめているのに気付いた。
「も、なんでこんな状況でっ…」
「こんな状況だからだろ、お前が忙しくなって俺もこっちまで手が回らなくなって、夜は真っ先にベッドだ。忘れられたかと思ったぞ」
「そんな、ことないよ…っていうか、仕事回してるのリボーンだぞ!?」
「仕方ねぇだろ、やれるやつは限られてんだ」
文句言うな、といってまた口づける。
何度もそうしているうちに自分の中から飢えている欲が生まれ始めた。
「こんな、ときなのに…」
「こんなときだからだろ、ツナ…」
優しく名前を呼ばれて、もっと近づけと腰を抱かれた。
卑怯だ、そんな風に言われたら拒めるはずない…。
「リボーン…」
「壁に手をつけ」
「え、まって…本気で!?」
「俺は冗談で言ってんじゃねぇぞ」
壁が埃っぽいのに気付いて我に返るが、リボーンは冗談でもなく大真面目だ。
こういうときのこいつの根性ホントやだ…。
そう思っている隙にリボーンに身体を支えられ、無理やり壁に手をつけさせられた。
出ないと俺はこの壁に顔を擦りつけることになってしまう。
ついた手には埃がついていて、こんな部屋でやるの本当に嫌だなと思うのに、リボーンは止まってくれない。
まぁ、立ってやってくれるだけましなのかもしれない…。
…って、何流されようとしてるんだ俺!?
よく考えろ、ここから一刻も早く外に出て自分の部屋で…もしくは、リボーンの部屋のベッドですればいいだけじゃん。
「まっ…リボーンっ」
「ここで過ごす時間が最後になるかもしれねぇのにか?」
「え…?」
「もし、このまま助けが来なかったら俺たちはここで飢え死に、もっと悪ければ白骨死体だ…このままでいいのか?」
「なん…で、そういう…」
「いいのか?」
耳の裏を舐めてうなじへと口づけが下りていく。
いいのか?だめに決まってるだろ、白骨死体なんて…絶対そんなことにはならないのに。
わかってる、助けは今日中に来るんだって…なのに、ここにきて理性が手放されようとしてる。
「リボーン…ベッドがいい」
「ベッドなら、あとでいくらでもしてやる」
「なんで…今なんだよぉ」
「燃えるだろ?」
燃えないからっ。
といっても聞くわけがないってのもわかってる。
腰に押し付けられるそれが固く熱を持っているのを俺に知らしめてくる。
つまり、俺に拒否権はない…と。
「…なるべく、早く…」
「ふっ…わかった、あと一時間半ってところだな」
何かリボーンが言っていたが、俺にはわけがわからず服の中にリボーンの手が差し込まれた。
早く追われるなら何でもいい、と俺は目を閉じてリボーンの手に集中する。
とてもじゃないが、この状況には燃えれそうにない…。
「ん、ふ…アッ、いきなり…」
「さっさとこの状況忘れたいんだろ?なら、一番手っ取り早い」
ベルトを緩めて自身を扱きはじめる。
俺は壁に手をついているせいでリボーンの動きを制限できない。
好き勝手に俺の身体をまさぐる動きに、身体が反応し始める。
自身は硬くなり、先端から先走りをあふれさせる。
くちゅくちゅといやらしい音が聞こえて、首を振るのにリボーンの熱い舌が首筋をなめあげるだけで変な声が出た。
「んぁ…りぼーん…」
「ツナ…感じるだろ?」
聞かれてこくこくと頷いた。
リボーンが触れるところどこもかしこも感じている。
それもこれもずっと触れられていなかったからだ。
それが今、こうして満たされていく。
もっとというように腰が揺れて、小さく笑う声がした。
「もうほしいのか?」
「…ぅう、ほしい…かき回して」
もう意地もなかった。
リボーンの甘く優しい声で聴かれてしまったら、逆らうことなんてできない。
下着ごと落とされて、股が一瞬冷えたと思ったのに、後ろに入り込んできたリボーンの指にすぐに熱くなる。
欲しいものが与えられたと身体が反応して指を締め付ける。
「はぁん、はぁっ…あぁ」
「もうどろどろじゃねぇか」
「…だ、ってぇ…」
指だけなのに感じて、食い締めてもっともっとと身体が求め腰を揺らしていればリボーンは前に手を回してきて先走りじゃなくてもう白いものが混じり始めているそこを撫でて小さく笑う。
俺は泣きそうになりながらも、ほしいと身体が訴えるまま腰を揺らし続けていた。
「溜めてたのか?」
「ん、んっ…リボーンが、してくれる…まで」
「じゃあ、出してやらねぇとな」
「ぁあっ、まって…やぁ、でちゃう…だめっ」
リボーンの声と同時に自身を握られて再び扱かれた。
中から指で突き上げながらのそれに俺は一気に高められて耐える間もなく白濁を放っていた。
だが、それで終わるわけがなかった。
リボーンはそのまま中の指を増やし二本の指で俺が言った通りかき回してきた。
いろんなところを刺激する動きに一回いったのにまたすぐ自身が復活する。
「んぁ、あぁっ…りぼーん、リボーンっ…あぁ、やだ…これじゃ、やだぁ」
「ん?言いたいことがあるなら、ちゃんと伝えろ」
優しく促す声と、容赦ない突き上げに俺は端も何も捨ててリボーンを振り返り、頬を撫でた。
「奥に…ほしい」
「…奥、だな」
にやりと笑った顔はこの状況には似つかわしくなくかっこよく見えて指が抜かれてまだ少ししか慣らしてないのに、という言葉は飲み込んだ。
そんなこと今更過ぎて、宛がわれる熱に気持ち良さが先行していた。
「ぁ、ああっ…」
「つな、こっちむけ」
入り込む熱に声が出て、一気に奥まで到達すると短い命令に俺は涙目になりながら振り返る。
塞がれる唇に、少し無理をしている態勢でしているからかすぐに離れてしまう唇を追ってすぐに塞がれる。
舌を絡ませて、垂れる唾液を飲み込んだ。
そのうち中のものもゆっくりと動き始めていて、こすりあげる自身に俺は手を握りしめていた。
「はぁ、んぁあぁあっ…もう、でる…」
「なら…そのまま、しめてろ」
後ろに力を込めると、締め付けたまま抜き差しされて今までにない刺激に逃げを打つ腰をリボーンが差さえた。
ふるふると首を振るのに。容赦なくそのまま駆けあがらせられた。
「ぁっあぁっ、いく、いくっ…ひっ!!!」
「ん、つな…っ」
中へと放たれてリボーンが短く脈動する。
注がれる熱に身体を震わせて、抜き去るその瞬間まで俺の中がリボーンを求め続けていた。
抜けたとたん力が抜けるのをリボーンはそのまま支えて、俺の後ろから自分の腕を見て時計を確認した。
「あと三十分か…まぁまぁだな、少しだけでないようにしてろよ」
「なに…?」
「獄寺が帰ってきたらすぐに駆けつけるだろ」
リボーンは器用に俺の服を整えながら言った言葉に耳を疑う。
隼人がすぐにくる!?
「ちょ、えっ…は!?」
「俺が何もしないでここに来たと思うか、ツナがさぼらないようにちゃんと見張ってろって言ったからな。帰ってきてお前がいなかったら屋敷中の家宅捜索が行われるぞ」
「……心配した、じゃん」
「まぁ、これぐらいのスリルはあった方が楽しめるからな」
口笛でも吹きそうなぐらい軽々しいリボーンに騙しやがって、と力ないこぶしを当てるぐらいが俺の精一杯だった。
あんなに不安にさせて、結局すぐに迎えがくるなんて…。
「ばかリボーン」
「ふぁ、たまには俺だってさぼりたいときがあるんだ。それに、お前もヨかっただろ?」
欠伸をしながら笑われて、俺は顔を逸らした。
正直…まだ足りないぐらいだけど、触れ合えたことはうれしかった。
「要望通り、獄寺が来たらベッドで仕切り直しだ」
「仕事は?」
「それは、明日仕切り直しだ」
「…もう」
結局明日に伸びるだけじゃないかといってやるが、ちゅっとかわいい音を立ててキスをされてしまえばそれでほだされるのだ。
簡単すぎる、と思うのに安堵したからかそれで許してしまった。
リボーンの宣言通り、隼人が帰ってきた後大捜索が行われ俺たちは出してもらえることになった。
しかもあまり時間がかからなかったところを見ると、ここの線を考えていたようだ。
「なぁ、もしかして飢え死にって…」
「ああ、嘘だぞ。そんな嘘信じる方がバカだと思ってたが…」
「ばかぁあっ」
とりあえず、俺はベッドで仕切り直しじゃなくバスルームで仕切り直しになったがリボーンには文句ひとつ言わせず俺の身体を洗わせた。
当たり前だ、変なことを言って俺を翻弄した挙句あんな埃っぽいところでことに及んだのだから。
でも、一つ教訓にはしておきたい…人の話は最後まで聞きましょう。
END