苦しいのを半分こ
ガンッと痛い音が聞こえた。
俺はびっくりして肩を揺らしてから、その音の根元に思い当たり苦笑を浮かべる。
俺がイライラすることはよくあることだが、リボーンがそうなるのは大変珍しい。
ポーカーフェイスが聞いてあきれる。
きっと当の本人は、今は自分の部屋だからそんなもん関係ねぇと逆ギレするのだ。
その原因を知っているから俺は別に咎める気はないし、たまにはそうやって少しでも内にたまるストレスを解消すればいいと思う。
だが、そのあとにガッシャン、ドッスンというもう何か巻き込まれてしまっていそうな音になってから少し心配になった。
「もしかして、野次馬が巻き込まれたかな…」
荒れているリボーンに近づくのは躊躇われたが、落ち着いたら後で様子を見に行こうと思っていたのもあるし…それが速いか遅いかで随分違うが…何かあってからでは遅いので見に行った方がいいかと俺は腰を浮かせた。
廊下に出てリボーンの自室に向かいながら、その間にも音は鳴りやまない。
それと同時にびゃあぁあぁ、という声も加わって巻き込まれたのが幸か不幸か子供に戻ったランボだとわかりため息を吐く。
「どうして、火と油が一緒にいるんだろ…」
ランボ自体もあまりリボーンに近づこうとしなくなったのに、どうしてこのタイミングで…。
俺はリボーンの部屋の前まで来ると、タイミングを見計らいドアを開けた。
「つなぁああっ」
「はいはい、怖かったねー。ランボはこのまま外にいってな」
「チッ…」
「チッ、じゃないだろ。今のランボならまだしも、子供ランボに手をあげることないだろ」
「最初はデカい方だったぞ」
飛んできたランボを抱きとめると、部屋から出してそっとしめる。
鍵をかけるのも忘れない。
舌打ちするリボーンを咎めつつ、俺はソファに座った。
リボーンは頭を掻いて、俺の隣に座った。
「守護者を殺す気か?」
「脅しただけだろ」
「そんなんでストレス解消しない、怒るとホント子供っぽいんだから」
いや、大人げないといった方がいいかもしれない。
俺は近くに来てくれたリボーンの肩に頭を預けて見つめる。
「まだすっきりしないなら、俺が相手するけど?」
「痛いのが好きだとは、初耳だな」
「リボーンになら、少しぐらい痛くされるのも悪くないかも、な」
極力俺のことを触らないようにしているのが、逆に痛々しい。
煽るように囁きかけてやると、痛いぐらいに口づけてきた。
舌を無理やりねじ込んで、呼吸を奪うように絡ませてくる。
あまりに長いから、息継ぎができず身じろぐとソファに押し倒され、ネクタイを抜かれた。
シャツに手をかけて、脱がしてくる腕を受け入れた。
「ん…ぁ…」
「その言葉、撤回するなよ?」
「もちろん、受けて立つ」
リボーンが苛立っているのは単純明快。
今日敵対マフィアとの会食があったのだが、俺のことをさんざん詰った挙句こんな若いボスがマフィアの頂点にいてもいいのかと大声で演説してくれ、向こう側の周りにいた仲間がそれに合わせて拍手で同意してくる嫌がらせを受けたからだ。
俺は別に言われた通りだと思っていたからそんなに気にしていなかったが、隣からひしひしと伝わってくる苛立ちに苦笑せずにはいられなかったのだ。
煽ってくる相手側の手に乗るのは癪なので我慢していたが、帰ってきてリボーンは荒れに荒れた。
それが、さっきの音だ。
よく見れば部屋の中の上等な花瓶やらゴミ箱やらが無残な姿に成り果てていた。
しかも、さっきのランボのせいだろうか、部屋の壁にも穴が数個見当たった。
大切にされているのは実感できるが、できれば目の前でそれを実感したいところだ。
だから、リボーンがどんなにひどくするといっても俺は喜んで受け入れるだろう。
こんなにも愛されている身体だ、少しぐらい乱暴に扱ったところで早々簡単に壊れることもなければ、嫌いになることもない。
「リボーンが他に八つ当たりするの、妬けるから…俺にして」
「ツナ…なんでもかんでも受け入れすぎだ」
「今に始まったことじゃないじゃん」
俺もリボーンのネクタイを解いて、シャツのボタンをはずしていく。
俺の方はすっかり下着まで脱がされてしまって、最初にローションが必要だなと近くに隠しておいてあるローションを取り出すとリボーンに手渡した。
「リボーンも、脱いで」
「わかってる」
返事をするなりもうそそり立つ自身を取り出して、俺は見るなり息を呑んだ。
むかむかしてるのに、そんなに求めてくれるのが嬉しくて。
それを、入れられるのかと思うと期待と羞恥で複雑な想いを抱く。
「お前も感じてるな」
「リボーンに、つられた」
見える部分を撫でられてヒクリと身体を震わせる。
リボーンが感じていたら、俺も感じる。
同じような快感を共有したい。
だから、同じような苛立ちだって共有してもいいと思うんだ。
ローションを垂らされて、指を入れ乱暴な手つきで撫でまわされる。
俺はそれを甘受し、開かれる感覚を覚えたのもつかの間。
すぐに出て行った指の後に来る熱に、俺はゆっくりと息を吐き出して力を抜く。
「入れるぞ」
「きて、いっぱいに…して」
ちゃんと予告してくれるだけ理性が残ってるんだな、と少し笑って覆いかぶさってくるリボーンの背中に腕を回した。
ひたりと宛がうと同時にその質量が押し込まれてくる。
「くっ…は、あぁっ…」
入り込んでくる熱にせりあがるものを感じながらも、俺はリボーンにしがみついてうめくように喘いだ。
リボーンは俺の身体を抱きしめて全部おしこめると、動きを止めた。
「きつい…」
「俺の方が、もっときついから…そういうの言う暇あるならもう少し労われよ」
「案外、平気そうだな」
「ほとんど毎日のようにリボーンを受け入れてるんだ、これぐらい平気だろ」
そこら辺の柔い女と一緒にするなといってやれば、ふっと笑われていたわるようにキスをされた。
何度も愛情を確かめるような接触に、俺は身体をすり寄せた。
「もっと、して」
「ツナ…」
「俺のことで苛立ってくれるなら、もっとぶつけてよ」
全部俺が受け止めるから、と笑えばリボーンは俺の自身を撫でた。
苦しさに萎えていたそこは、呼びさますような触れ方に再び頭をもたげさせた。
握られてゆっくりと扱きながらリボーンも動き始める。
「ふ、く…ぁ、ん…んん」
「ツナ、つな…」
「…りぼ、ん…すき」
好きだからどんなにきつくても、痛くてもその全部がほしい。
他で発散されるのが嫌だ。
俺はここにいるのに、リボーンの全部をわかってやりたいと思う。
好きで、愛していて俺にすべてを見せてほしい。
「俺は、どんなリボーンでも絶対嫌わないから…」
「ばかやろう…そんなこと、わかってるぞ」
今更過ぎるだろ、と笑われて俺はそれもそうかと笑った。
接合部にローションを足しながら動いていたせいかきついながらもすべりがよくいつもより乱暴にされても甘い刺激になる。
だんだんと快楽として拾い上げる身体が落ち着かなくなってもぞもぞと逃げようとすれば腰を抱かれて引き寄せられた。
「ひぁっ…あ、だめ…そこ、しちゃ」
「きついだけじゃ、ツナに悪いよなぁ?」
にやり、と調子に乗った時に笑う顔に俺は前言を撤回したくなった。
今現在進行形で嫌いになりそうだと思ったのに、それすらも散らすような律動が開始される。
奥を突き上げる動きにきついのに感じさせられて、いつもより締め付けているせいかリボーンの熱が近くに感じる。
身体の中を貫く熱さに逃げようとする動きは全部封じられて、好きに喘がされた。
奥の奥まで全部がリボーンに侵食されるようで怖くて、嬉しかった。
「もう、だめ…いく、っ」
「何度でも、いかせてやる」
「それ、やっ…やめ、やめっ」
一度だけでは済まされないような発言に首を振って嫌がったが、耳元で愛してると囁かれたが最期、くたくたと力が抜けてリボーンに感じさせるだけになってしまった。
どこまでも壊さず俺をかき回してくる男は、俺を愛することだけはやめない。
「すっきりした顔して寝てる…」
リボーンに喘がされて喉はきりきりと痛んだが、隣で眠るリボーンの顔を見れば文句も引っ込んだ。
身体は気を失っている間に綺麗にされていて、苛立ってたんじゃないのかと苦笑した。
「嬉しいのはみんなで共有して、苦しいのは半分こ。俺とお前で、ちゃんと分けてね」
一人で全部抱え込むのはだめだからね、と寝ているリボーンにそっと囁いて俺はもう一度抱えられてた胸に顔を埋めると目を閉じた。
END