私が救ってあげますからね


(!)注意

・「差し出された手が救いになるとは限らない」のたちアイEND。たちモモ…?
・前回同様に暗い・後味悪い・胸糞の三点セット、残酷な表現と性的表現あり。
・たっちさん生存ルート。
・たっちさんが不定の狂気状態であたまがおかしい。




−−−−−−−




たっちさん。俺、貴方のことを待っていたんです」

身も心も疲弊している状況下で見せられたその姿は私にとって苦痛でしかなかった。

「どうして、たっちさん。俺、しにたくないです」

偽物だと理解していても心が揺らぐ。

「おれのこと、たすけてくれないんですね」

頬を両手で包み込まれ、視線が交じり合う。

「ねえ、たっちさん。おれのこと、たすけてください」

妖しく揺らめく炎に心臓を掴まれたような錯覚にとらわれ、鼓動が激しくなっていく。

「どうしてたすけてくれないんですか」

それ以上聞きたくなかった。
黒衣を纏う骸骨の胸に得物を突き刺し、一気に引き抜く。
突き刺したとき以上に耳障りな音をたてながら骨の破片がぱきぱきと床に散らばり、対峙していた最後の一人がどしゃりと音を立てて倒れた。

死闘に勝利した騎士の男――たっち・みーは胸を抑えながら荒い息を繰り返し、頭のなかに充満した飛び立つような恐怖を振り払うかのように頭を小さく左右に振る。先ほど見た光景はあまりにも恐ろしいものだった。
剣の柄を握る手の震えが止まらず、思わず歯を食いしばる。呼吸を整えようと深く息を吸うたびに噎せかえるような鉄の臭いが鼻をつき、たっち・みーは不快感から眉を寄せた。

ふと視線を巡らす。半壊した玉座の間には守護者たちが無残な姿で点々と床に転がっている。
その一角には巨大な獣が真っ二つに裂かれた姿で事切れており、柔らかそうな灰色と白の獣毛は赤黒い血液で彩られ、腹から漏れ出した臓器が大理石の床を汚していた。目をそむけたくなるような惨憺たる光景だ。

「この獣が来ていなければ、私は死んでいたのだろうな…」

剣を握る手にぎっ、と力が籠る。使い慣れた武器がこの手にあるのはあの獣のおかげだ。
アルベドが激怒して切り捨てていたことからこのハムスターのような大きな生き物は彼女側の存在だったのだろう。それが何故、こちらの味方をしたのかはわからない。死んでしまった者は何も語ることはできないため真相は藪の中だ。

次に、たっち・みーは足元へと視線を向けた。
黒衣を身に纏った骸骨の姿はなく、軍服姿の異形がおびただしい量の血を流して倒れている。異形の名前はパンドラズ・アクター。全てを壊したともいえる元凶だ。

「この異形さえいなければ、こんなことには…」

無意識のうちに銀色に煌めく大剣を振りかざし、幾度となく倒れ伏した異形に突き刺した。突き刺すというよりも叩き潰している、といったほうが正しいのかもしれない。

交戦中にパンドラズ・アクターが語ったナザリックで起きた出来事にたっち・みーは絶句した。怒りで足元がぐらついたことも、静止できないほどの激しい怒りかられたことをはっきりと覚えている。
モモンガを良いように扱い囲った彼が許せなかった。正気を根こそぎ奪っていくどころかまともな精神を取り戻せないようにした守護者たちの行動が許せなかった。
この行為は許されるものだ、これは正義のための断罪だ――そう自身に言い聞かせながら気が済むまで剣を異形に向け続けた。

「そうだ、本物…本物のモモンガさんは…」

たっち・みーはかすれた声で呟くと異形から剣を引き抜き、満身創痍で玉座へと向かった。
低い階段を何段か登った先には美しく輝く玉座が鎮座しており、玉座には黒のローブで身を包み、丸まって震える骸骨――モモンガがいた。重たい身体を必死に動かし、モモンガへと近づくと赤く濡れた手を伸ばす。

「お待たせしましたモモンガさ――」

ばちん、と鋭い音が部屋に響いた。

「――え」

差し伸べた手を振り払われ、たっち・みーは目を見開き、愕然とした声を漏らした。
モモンガの赤く輝く炎にも似た瞳は憎悪の念を抱いていた。見たことも感じたこともない、かつての仲間から受ける視線にたっち・みーは自分の中の何かが軋む音を立てるのを感じ、一歩後退する。

「あ、あぁああ、俺に、私に触るな!」
「モ、モモンガさん。どうして…」
「触るな…いやだ…。お前は、あなたは、まやかしだ…」
「お願いですから私に誰かを重ねないでください!ちゃんと、私を見てください!!」
「消えろ、消えろ、消えろよぉ…。なんで、消えない。い、いやだ…あぁあ…っ」

「私は、たっち・みーはここにいるじゃないですか!どうして信じてくれないんですか…!」

瞬間、不気味なほどに静まり返り――

「正義をかかげるたっちさんが、こんなことするはずがない!!アルベドを、シャルティアを、マーレもアウラもコキュートスもデミウルゴスも、俺の、アインズ・ウール・ゴウンの守護者たちを返せッ!!これ以上俺から奪うなあああ!お前はたっちさんじゃない!!!お前なんか、お前なんかあああああああああ!!!」


赤い輝きが嫌厭に満ちた瞳でたっち・みーを睨み、吼えた。
摩耗した心が悲鳴を上げ――世界は暗転した。







「―――っ、」

艶やかな声で懇願する存在に心が痛まなくなったのはいつからだろうか。
ひたすらに手を伸ばし求めてくる彼に、喜びを感じてしまったのはいつのことだったか。


照明を落とした薄暗い部屋で行われる爛れた行為にたっち・みーは熱を帯びた吐息を漏らす。
白く細い骨の指に手を絡ませ、骨盤に熱源を強く押し当てると組み敷いた存在から甘ったるい喜悦の声があがった。
その様子は実に可愛らしく、たっち・みーは荒んだ心が溶かされていくような感覚に包まれ喉を鳴らす。

「モモンガさん、私が誰だか解りますよね?」
「ヒッ、あ…たっ、たっちさ、ん」
「本当に理解できていますか?」
「ッ、――!」
「…違いますよ」

小さな悲鳴のなかに潜り込んでいた忌々しい名前に、途端にどろりとしたどす黒い感情が湧き上がり自然と声のトーンが下がる。

「どうしてあの異形の名前が?まだ捕らわれているんですか?私が――私こそが本物のたっち・みーであるというのに。モモンガさんの求める私は此処にいるのに、何故、どうして…」
「パンドラ…たっちさん…ん」
「私はパンドラズ・アクターではありませんよ、モモンガさん。私は、貴方の良く知るたっち・みーですよ?」
「あ゛、ぐっ、ぁ、違ッ、ぃ――!」

どろどろと奥底から溢れ出す感情が抑えきれず、たっち・みーは笑いながら恐怖に身を震わせるモモンガの胸骨をがりがりと引っ掻いた。
押し当てていた高ぶりをスライドさせ、ぐちゃりと卑猥な音をわざと立てながら仙骨になすりつけると眼下に映る骸骨が過呼吸にも似た喘ぎを漏らした。

「貴方が、貴方から求めた、そうでしょう。はは、安心して下さい、私の真似事をする者はもう現れませんよ。この先、誰かに惑わされることなんかないんですよ」
「ン、ひ…あ、ぁ」
「たっち・みーという男が嘘をついたことがありましたか?ありませんよね?」
「た、っちさ…ッ」
「貴方を傷つける者は誰一人としていないので安心して下さい。私が、たっち・みーが、貴方を、モモンガさんを守ってあげますからね」
「ッ、ちが、うッ、あぁ…!」

にちにちとした粘着質な音と押し殺しきれていない嬌声が室内に響く。
硬さを増したソレはモモンガのなだらかなカーブを描いた腸骨を攻め始め、強くぶつかるたびに生温い透明な液体をじんわりとこぼし、ぼんやりと白く輝く骨にいやらしい光沢を与えていった。

足の先を丸め、漆黒のローブをぐちゃぐちゃに乱し小刻みに喘ぐモモンガの姿にたっち・みーはどうしようもないほどの劣情を煽り立てられ、てらてらとぬめりを帯びた生殖器でモモンガの恥骨をなぞる。そのまま恥骨同士をつなぐ箇所へとたどり着くと凶悪ともいえるものを打ち付けた。

「たっ、ち…さん、こんなッ、アぁ!こんな、ことッ」
「助けを求めたのはモモンガさんでしょう。私を否定するなんてひどいじゃないですか」
「ふッ、う…ぁ!ちが、ちがう…ひッ!」
「私がいない間、さぞ辛い目にあったのでは?本当の意味で理解してくれる者はいましたか?弱音を吐ける相手はいましたか?安心して身を預けることのできる人物はいましたか?信用できる人はいましたか?全てを叶えられるのは、貴方の目の前にいる私しかいないでしょう?」

――ねえ、甘えて下さいモモンガさん。

蜂蜜と砂糖を混ぜ合わせ、熱し、どろどろに溶かしたような声音でモモンガの耳元で囁く。それは救世主や正義といったものとは程遠い囁きだった。

モモンガの眼窩に灯る赤黒い光が激しく点滅する。言葉にならない母音だけの喘ぎを繰り返し、焦点が合わなくなっているのか輝きを潜めた赤色がゆらゆらと揺らめいている。
視線をさまよわせた始めたモモンガにたっち・みーは下半身がさらに熱くなるのを感じ、そくぞくと身体を震わせる。腹の底から湧き上がってくる興奮に、自然とヘルムの下で笑みを深くした。

「……、ぃ」
「なんですか、モモンガさん」
「たっちさん、どこにも、いっ、いかないで」
「ええ、何処にもいきませんよ」
「あ…、あッ、おれ、すて、すてな…ぃ、で」
「捨てたりなんかしませんよ」

ぶるぶると震える細腕が首に回され、二人の身体がより一層密着する。
眼下で泣き喚く存在を貪りつくしたい。助けなければ。堕ちてしまえばいい。救わなければ。縋ればいい。モモンガさんが悲しんでいる。堕ちろ。どうしてこんなことに。施しを。どうにでもなれ。こんなはずでは。頭が痛い。気持ちがいい。もっと良くなりたい――

「あ、ああ、ちが、違う!お前はたっちさんなんかじゃない!!う、うぁ…たっちさん…たっちさんはどこに…ヒッ」
「私はここにいますよ。ふ、ふふ、私を否定しないでください」
「アッ、あぁああ!たっちさん、たっちさん、たっち、さ…ん…たすけ――」
「ええ、私は貴方を助ける為にいるんです。はは、はははは!」

――ねぇ、モモンガさん、貴方は救われていますよね?
だってこの行為で貴方は喜んでくれるのだから、これはきっと救済のひとつであり、必要なことなんですよね。

タガの外れたような笑い声をあげながら必死に抵抗し暴れるモモンガをつよく掻き抱くと同時に抑えていた欲望を吐き出し、再び欲情に濡れた眼差しでモモンガの腰を抱いた。





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