異常事態



・P4パロ的ななにかよくわからない大変微妙なもの







近頃、霧の濃い日が続いてばかりで気が滅入る。おまけに霧が薄まったかと思えば雨が振りだす始末だ。

−−この謎の現象が発生し始めた頃から魔界ではある二つの話で持ちきりだった。

一つ目は噂話。
雨の振る夜の午前零時、全身を映す姿鏡の前に立つと別の人物が映ることがあるという話だ。
ちなみにその映った人物は運命の相手、という乙女チックな話つきだ。

二つ目は失踪事件。
上記の鏡の話の続きでその別の人物を見てしまった者は三日以内に姿を眩ますことがあるらしい。
現にその鏡の噂を試し、成功した悪魔らの一部は姿を消してしまっているのだ。下級悪魔から上級悪魔、ときには魔神級の悪魔までもが。


「全く、何が起こっているというのだ…」


ヴァルバトーゼはフェンリッヒから渡された失踪者のリストを一人眺める。

分厚く重なった紙束の多さに溜め息を吐いてしまう。
呆れてしまうほど下層区の住人の名前が異様なまでに多い。好奇心から面白がって試した結果というものだろう。
逆に、上層区に住む魔族の名前は両手で数えられるくらい少ない。だが、それも日に日に増えていくことだろう。

「鏡、か」


ふうと息を尽き、ぐっと背を伸ばす。

−−そういえば今日は雨が降っていたな。掃除が大変だとプリニーたちが愚痴っていたことを思い出し、ヴァルバトーゼはじっと窓を見つめる。

窓の向こうはしとしとと降り続く雨で濡れた世界が広がっており、見ているだけで憂鬱な気分にさせられる。
一体この噂と事態はいつになったら収まるのか。収まるどころか広がっていくばかりだ。
今はまだ面白がっていられる範囲だが、このまま行けば混乱を招く恐れがある。

−−誰かが止める必要がある。


「……試してみるか」


まあ、その別の人物とやらを見れなければ意味がないわけだが。







ちっ、ちっ、と時計の針が進む音と雨音にヴァルバトーゼはちいさく息を吐く。

−−もうすぐ零時だ。
ヴァルバトーゼは鏡の前に立ち時間が来るのを待つ。一秒二秒と時間が経つたびに時計の針の進む音が寝室に響く。

−−こちり、
時計の短針が午前零時を指した瞬間、ヴァルバトーゼは目を見開いた。


「映ったことには映ったが、これは−−」


鏡に映ったのは金色の瞳をした自分だった。薄暗い中でも爛々と輝くそれはひどく不気味に思える。

ただ、聞いていた噂とは違かった。成功した場合、鏡に映るのは別の人物。失敗したらそこに映っているのは当たり前のことながら自分自身のはずだ。
だが、目の前に映るそれは金色の瞳をした−−約四百年くらい前の、暴君と呼ばれていた頃の姿をしているのだ。

思わず鏡に指を這わすと鏡に映るもうひとりの自分は目を細め、にっと口角を上げて笑うとこちらに向かって手を伸ばしてきた。
その姿を見た瞬間、ぞくりと背筋が震え、ヴァルバトーゼは咄嗟に腕を引っ込め鏡から離れた。


「今のは一体ッ…」


鏡には狼狽えた様子でこちらをみている赤い瞳をした自分が映っている。

先ほどまで映っていたのは一体、なんだったのか?
眉をひそめ辺りを見回す。誰もいない。だが、誰かに見られているような気がしてならない。

ふと、鏡に視線を向けた。そこには、赤い瞳の自分のすぐ後ろに、金色の、



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