あいのゆくえ



・まさかのロザリンド→フーカ
・アデルが地獄に面接を受けに来ていない
・アデルの存在がログアウト
・ログアウトどころかアデルとは一体何だったのかという状態

−−−−−−−



これが心替わりというものか。

ロザリンドはぽつりと呟いた。全てはあの日−−アデルには秘密で、こっそりと地獄に仕事の面接を受けにいったことが全ての始まりだった。

そこで、ロザリンドは面接官の一人−−プリニーを模したような帽子を被った人間の少女と出会った。
面接官は天使や人狼や吸血鬼と他にもいたが、ロザリンドはどうしてもその人間の少女だけが気になってしかたがなかった。


「……。」


吸血鬼の話を聞きながらロザリンドはなんとなく視線を少女のいる方へとずらした。


「…っ!」

「む、ロザリンドよ。何か問題でもあったか?」

「いや、なんでもない。話の続きを聞かせてはもらえぬかの」


微笑んでごまかしてみれば、吸血鬼は首を傾げつつも「それでは、」とすぐに話を再開させた。

ロザリンドは安堵の息を吐くかわりに拳を軽く握る。なんとか表情には出さなかったものの、内心では焦っていた。

−−め、目が合ってしまった!
気の強そうな焦げ茶色の瞳。目と目が合ったその瞬間、胸がきゅうっと締め付けられるような感覚に襲われた。

その時は本当に一瞬のことだったため、ロザリンドは面接の緊張からきたものだろうとしか思っていなかった。なんせ、ロザリンドはこれが初めての職探し−−産まれて初めての面接なのだ。
だから、この胸の締め付けられる気持ちは面接に対して生まれたものに違いない、と。

だが、時間が経つにつれその人間の少女を目で追うようになっていたのだ。
最初のうちは色々と無茶ばかりして目が離せない存在、妹のように可愛い存在、そう見ていたがどうもそれだけではなかった。


「余としたことが、情けない」


同性−−しかも魔族ではない人間の少女を恋愛対象として捉えるとは、なんということじゃ!
ふるふると頭を横にふり想いを否定し掻き消そうとするが、思い浮かぶのは天真爛漫に笑う少女の姿ばかり。


「これは重症じゃ」


眉を下げ、深く息を吐くロザリンド。
異性同士ならば−−もしかしたら結ばれたかもしれない。同性同士では叶う訳がない。でも、それでも、


「しっかりするのじゃ、余は魔王ゼノンの娘ロザリンドだぞ! くよくよしていてもどうにもならぬぞ!」


ぱん、と頬を両手で軽く叩き自分自身を励ます。
世の中には、当たって砕けろという言葉が存在する。それなのに、当たるまえから砕けていてどうする!


「ああもう、余はどうすれば−−」

「あれ、ロザリンじゃん。どうしたのこんなところで」


伝えられたら、どれだけ心が軽くなることか。


(胸が詰まって息苦しい)




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