―――――― UP TEMPOC ――――――
食堂にて。
「ねぇアレン」
「んだよ」
「ちょい紳士スタイルどこ消えたのよ」
「知るかよ」
「知れよ」
そう言いながらも、私はガツガツと飯を平らげるアレンの向かいに座る。ラビ事件から数日後、次はこれだよ。ザ・理不尽と言っても過言ではないアレン・ウォーカー。どいつもこいつもコノヤロー!白髪ヤロー!
「何か今白髪ヤローって聞こえましたけど」
「気のせいでしょ」
「…ふん。で、今日はどうしたんですか」
ああ、やっぱり、アレンの隣は落ち着く。お互い憎まれ口を叩こうとも、なんだかんだ悩み事があるとアレンの元へと来てしまうのが私の癖。アレンもなんだかんだで相談に乗ってくれるから、口に出さなくてもアレンが私を理解してくれてる事は分かる。
「あのさ、最近モテなくなった」
「それが悩みならいますぐ帰れ」
「冗談冗談」
「ふん」
しかし、半分事実でもある。今までは結構な頻度でアプローチを受けていた覚えがあるが、あのラビとか言うエクソシストとの騒動があってからはぷっつりとその波が途絶えてしまった。
「ま、皆さんがあなたの悪女っぷりに気付いたってただそれだけの事じゃないですか」
アレンは淡々と言葉を並べた。
「悪女とか人聞きが悪い事言うなし。この天使と見紛う私の顔を見てから言いなさい」
アレンは一瞬食器から目を離すと、私を上から下までじろりと見て、ハッと鼻で笑った。
「ちょ、今鼻で笑ったでしょ!」
アレンはことごとく私の言葉を無視して、再びご飯を頬張りはじめた。
ムカ
「ふーん…そういう態度とるのねー神田呼ぶよ」
アレンは神田、と聞くなりかっ!と目を見開いた。
「呼べるもんならどうぞ」 「かんだぁー!」
二つ向こうの席で例の如くざる蕎麦をすすっている神田に声をかける。声が聞こえたのか、神田はぴくっと体を震わせて、辺りをキョロキョロと見回した。 しばらくして、ようやく私とアレンの席で目が止まった。相変わらず鈍臭いなぁなんて思って手招きしたら…
「ちょ、酷っ!」
神田に中指を立てられた。そうだった。あいつもアレンに次ぐザ・理不尽男の一人なんだった。 アレンはそのやり取りを満足そうに見て、みたらし団子を食べている。なんつーどや顔。
ああ、なんで私の回りはこんな人達ばっかりなんだろう。
恋の味を教えよう (そんなの、熟知してるはずだった)
20100822 BYなふぃー
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