冷血、ストイック、一匹狼、口が悪い。これらの言葉の数々は全て彼のためにあるようなものだと思う。
しかし、今の彼を教団のみんなに見せてあげたい。こんな風に微笑んだり、口数が多い彼を見たら驚くに違いない。


「眠いね」

「別に」

「じゃ、何でベッドに居るの」

「…気にすんな」


二人で一つのベッドに体を預け、二人で一つの毛布を掛けて暖まる。いかにも、と言ったこの甘いシチュエーションを望んだのが彼だと知ったら、みんなはどんな反応をするだろうか。アレンはきっと彼をからかう。ラビはオレもイチャイチャしてぇさ、と叫ぶ。リナリーは羨ましいわ、と笑う。みんなの顔が浮かんでは消え、わたしは可笑しくなって思わず小さく吹き出した。


「ねえ、神田」

「違うだろ」

「何が」

「わかってるだろ」

「ふふ、ユウ」

さっきまで見つめ合っていた彼、神田ユウが、わたしがファーストネームで呼んだ瞬間に顔を背けてしまった。どうやら自分で言っておいて恥ずかしがっているらしい。彼の真っ赤な顔がそれを物語っている。

静かな部屋に、わたしが再び彼の名前を呼ぶ声が小さく響いた。


「私のこと愛してる?」

「……一緒にいて楽だ」

「愛してる?」

「……まあ」

「あ い し て る ?」

「……ああ」


意地でも『愛してる』とは言わないらしい。まあでも、わたしは愛の言葉を何度も囁かれるよりも、抱きしめられたり、彼の体温を身近に感じられる方が好き。それでもやっぱり、わたしも女として、愛の言葉は憧れる。



照れ隠しにわたしの髪を梳いていた彼は、ふいに口を開いた。


「おい」

「ん、」

大好きな彼の声がするほうへ顔をむければ、黒耀石のような深い光を放つ彼の瞳にわたしの顔が映っていた。
ああ、今ユウの目の前にいてユウが見ているのはわたしなんだ、と実感できるこの瞬間がものすごく大好きだ。
冒頭でも述べた通り、彼は冷血でストイックで一匹狼で、おまけに口が悪い。だけど教団一モテるし、彼が告白された数は両手でも足りないほど。これらは既に周知の事実だ。
でも、わたしが彼のモテ具合に嫉妬しているなんて、きっと本人はこれっぽっちも知らないんだろう。



悠久とも言える間見つめ合ったわたし達は、どちらともなく目を閉じた。

ついでに言っておくと、彼がゆっくりと近づいて来る気配を感じられるこの瞬間もすごく好きだ。


そして、『ふに』とも『ふにゃ』とも言えない感触と共に、ユウの柔らかいけど男らしい唇がわたしの唇を掠めた。
爽やかな石鹸の香りがわたしを包み込む。ユウの香りが体を駆け巡ると、体中の遺伝子が熱をもったように騒ぎ出してユウのことが愛しくて愛しくて堪らなくなる。
わたしは本当に神田ユウが大好きなんだ。

ちゅ、という微かな音。
それを合図に目を開けた。




「名前、」

「なに」







「愛してる」















(わたしたちが愛し合うことは、きっと必然)




20101004


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いちゃいちゃパラダイスを書けたのでよかった。やっぱりユウくんは最強です。

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