「雨降ってるね」

「そうさね」

「ってことは、部活無いね」

「そうさね」

「どこで遊ぶ?」

「そうさね」

「日本語喋れ」

「うん、」

「じゃ、ラビ家へ行こーう」

「うん、相変わらずだね」




授業がいつもより少ない6時限で終わったラッキーな日。
「雨降って部活出来ない、残念」なんて気持ちが微塵も無いわたしとラビ。
そんな不謹慎にも程があるわたし達は当たり前のようにラビの家へ向かう。






「おっ、ユウちゃん部活かい?」

荷物を持って廊下へ出れば、竹刀を背中に担いだユウちゃんこと神田が睨みを効かせながら颯爽と歩いていた。


「てめェは部活ねェのかよ」

ちゃん付けに若干反応して眉間に皺を寄せたものの、普通に話し掛けて来た。


「だって雨降ってるし」

「…ハッ」

「ユウちゃんは剣道部だから雨も何も関係無いもんね、お勤めご苦労様でーす」

「で、これからどうすんだ?」

「んー、ラビ家で遊ぶ」


そう言うと、神田はちらり、と私の後ろにいるラビに目を向けた。


「ま、せいぜい襲われないように気をつけるんだな」

「ユウちゃん変態ー」

「そうさ、こんなゴリラを襲う物好きはそうそう居ないさ」

「ゴリラはないだろ、元祖変態は黙らっしゃい」

「うぃー」

「んじゃ、またねー」


おう、と片手を上げて返事すると、神田は廊下を歩いて行った。

その後ろを神田ファンらしき女子達がストーキングしてたのは黙っておこう。




***






「傘」

「傘がどうしたんさ」

「傘ナッシング」

「ん、入れさ」

「さんきゅっ」

ラッキーとばかりにラビの大きな傘に入る。
男のクセにオレンジ色の傘はどうかと思うけどね。

でも、流石ラビ。
私のこんな片言でもちゃんと意味を汲み取って理解してくれる。



さっきよりいくらか強くなった雨の中を、ラビと相合い傘で歩く。
普通は女が傘を持ってるんだろうけど、生憎、ラビの方がこういうのはしっかりしてる。




「ね、もっとちゃんと傘ささないの?」

ラビのブレザーの肩が、水を吸い込んで紺色から黒に変色してるのを見て私はそう言った。


「いや、これでダイジョブ」

ラビはニッと目を細めて笑った。

そんなこと言ったら、全く濡れてない私が少し罪悪感を感じる。
わたしとラビは小学生からの幼なじみだけど、昔からラビはこういう風に何気ないところで優しい。



「…ありがと」

「ん、なんか言ったさ?」

「何でもないっ」

「何さー気になるー」

「空耳空耳」





***





「おじゃましまーす」

「ちょい待っててさ。今タオル持ってくる」

「いえっさー」



無事ラビ家に到着。
ちなみに、ご両親が海外出張とやらでラビは事実上一人暮らしです。

ラビが戻って来るまで、二人分の靴を揃えて待つ。



「名前」

声のする方へ顔を向けると、視界が真っ白になった。それと同時に、花みたいな甘くていい香りが鼻をくすぐる。


「このタオル、ラビの匂いがする」


ラビは肩にタオルをかけて「そうか?」と自分のタオルの匂いをかいでいた。


(なんか、安心する)






***






「で、何して遊ぶさ?」

「それなら私持って来たよー」


ラビ家の広いリビングのソファーで、ラビが煎れてくれた紅茶を飲む。


「えーっと…あったあった。トゥットゥルー!」

「しょこたん?」

「ドラクエ8ー」

「わざと一人で遊ぶもの持ってきたさね」

「ちゃんとメモリーカードもあるよ」

(こいつ、完璧確信犯さ)



名前は慣れた様子でテレビの下からプレステを引っ張り出してきて、コンセントをさした。
画面が切り替わり、お馴染みのあのテーマが流れ出す。




「必殺!おっさん呼び!」

相変わらず色気ねーなーと思いながら、楽しそうにゲームをする名前の横顔を見る。


その横顔を見て、オレの心臓は正直にも鼓動が高鳴り始める。


ああ、好きだ。


はぁ、と自然にため息が口をついて出た。
名前はそんなオレの様子にも気づくはずがなく、画面に向かって必死に叫んでいる。



幼なじみとはいえ、誰も居ない家に男と二人きりと言うシチュエーション。
こいつは緊張とか、なんにも感じてないんだろうか。

さっき学校で「ラビん家で遊ぶ」って名前が言った時、態度には出さなかったけど内心オレ、嬉しかったんよ?

ここに来る途中だって、名前が恥ずかしそうに「ありがと」って言ったの、実は聞こえてたけど、もう一回聞きたくてつい聞こえてないフリをしてしまった。オレも確信犯かも。






「なあ、名前」

「ヤンガスぅぅぅ!逝くなぁぁぁ」

「なあ、名前。スマブラしよ」

「今大事なとこだから無理」

「なあ、名前、」

「よっしゃあ!倒した!」

「好き」


「レベルアップ来た!えっとお色気スキルと…」







―ブチッ―


突如真っ暗になったテレビ画面。
名前の態度にブチッと来たオレは、ブチブチッと電源ボタンを連打した。


「ちょ、何すんのハゲ!今やっとラスボス倒したのに!」

苦労が水の泡になった名前は、涙目になりながらオレに掴みかかってきた。
まあ、その怒りは分からないでもない。RPGでセーブしないで電源ぶっちぎるなてご法度だもんな。オレだったらそっこーキレる。



「名前、オレが何て言ったか聞いてた?」

「んなもん、スマブラなんて一人でやってよ!」

「いや、スマブラじゃなくてな、その後…」

「ああ、好きってこと?」

「へ?あ、ああ…」


















「んなの、私も好きに決まってんじゃん」
















(あ、ラビのセーブデータ消しといたから)





20100830

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