からまわる
「何があったんだ…!!」
俺の胸ぐらを掴んでいるのは主人の,兄に当たる男だった。
「何故カムイが…!!ジョーカー!答えろ!!」
びちゃ、ビチャン。
彼が俺の胸ぐらを掴んだことにより床に広がった血の上で嫌な音と生暖かいソレが靴に侵食していく感触が広がる。
主人である彼女は,死んだ。
誰のせいで?それは俺のせいだ。
泣き叫びながら治療をするサクラ王女の隣には顔面蒼白で治療の手伝いをするディーアが見えた。
彼女はもう死んでいるのに、意味無いことをしているな、と他人事のように思った。
無反応な俺に痺れを切らしたのかリョウマ王子は手を離すと衛生兵を急いで呼べ!!と叫んだ。
リョウマ王子から解放された俺は、そんなことよりカムイ様の手から離れた、自分の武器を見ていた。
「っ父さん…?」
あれで,死ねば彼女と共にいれる気がした。
彼女の血を夥しく吸った自身の手に馴染む武器を持ち構える。
ああこれで刺せば俺と彼女の血が混ざるのか。
彼女が拒絶した,目の前にいる俺とあの女の血が混ざった息子とは違う。もっともっと繋がれる"血の繋がり"が出来るのだろうか
「おい…!父さん!何をしようとしてる!!それを離せ!!」
「俺に触るなッ!!!お前さえ…!お前さえいなければ…!!!」
ディーアの目が見開かれる。元々悪い顔色が更に青白くなっていく。
ディーアがいなければ何だ?彼女を選んだ?
八つ当たりも甚だしい。彼女を拒んだのは俺じゃないか。
「カムイ様、大丈夫ですよ。独りにはさせません。だって愛してますから。だから大丈夫ですよ」
とどまる事を知らない血で染まっている彼女の亡骸にサクラ王女達を押しのけて手を伸ばした。大丈夫まだ温かい。まだここにいる。
「私は貴方と共に居れればそれで良かったのです」
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