遠ざかる意識 [ 63/156 ]
それから何日経ったんだろう?檻の中は常に暗く、火を灯した証明に寄ってほのかに明るい位で外の時間の感覚を忘れさせた。
業魔には食事も要らない、らしくご飯を持ってくる聖寮の人達もいなかった。ただたまに水を持ってくる程度だ。乾き飢えた業魔が共食いする事もあるらしく、それの配慮ってロクロウは言っていたが人魚にとって水というのは生命の源だ。
でも檻の中の業魔たちと分け合うと水はほんの少量しか回って来なかった日々が続き、等々乾きが限界を向かえた。
「…………ぅ……」
「…おい、リア?」
ロクロウが私の肩を軽く揺する感覚がした。けど、起き上がる事ができない。何処か鉄臭い石畳の冷たい感触が体に伝わってくる中意識が段々と遠ざかるのを感じた。
「しっかりしろ、リア!どうしたんだ?!」
「は……っ……」
水が命の源、と言ったが正式に言えば人魚は海の清らかな気が必要って欠けた記憶の中で誰かが言っていた。もうちゃんと喋る気力もなくて小さな声で「海……」と呟くと体に浮遊感がした。ロクロウに持ち上げられたのだろうか?その感覚すら曖昧だ。
「海だな!分かった!」
分かった……?ロクロウの言葉の意味が理解出来ずに持ち上げられた時に零れた力の抜けた腕がゆらゆらと揺れた。壁際にいた獣の業魔たちへ大声を上げた。
「おい!!お前らが脱出しようとしていた時掘った壁はどこだ!?」
「お、おう!ここだ……!でもそんな所見ても海だぞ…?」
「良いからそこのレンガ剥がせ!」
ガコンッ!!!!
何やら大きな音が聞こえたと思ったら懐かしい気配を感じた。体が少し満たされるその気は……
「潮……風…………?」
「海には届かないか……おい!リア!」
バシバシ、力加減を知らないロクロウに強めに頬を叩かれた。鈍い痛みがする。けど意識はまだ朦朧なままだ。
「…………み……ず……」
小さな声でそう言うと、完全に視界が黒くなってきた。
「応!水だな!飲め……なさそうだな…あー……リア。あとで殴ってもいいからな?」
気を失う前にそんな事をロクロウが言っていた気がする。
🌻「ん…………」
「おっ。起きたか?」
口の中が水分で潤っている。水を飲んだのだろうか?
ぼーー、とする頭に少し頭痛を感じながら視界が少しずつ正常になっていく。完全に見えるようになると真っ先に写ったのはロクロウの顔だった。どうやらロクロウにもたれ掛かる形で寝ているようだ。
「水って言っていたから水を飲ませてとにかく潮風浴びさせた。聖隷の治療法なんてわからんからな……大丈夫か?」
「……ん……だいぶ…………?」
壁から光が見える。外の光だろうか?ていうことは今は朝なのか……ああそうじゃない。その光の差す場所には人の腕が通るくらいの穴が空いてあり、そこから潮風が吹いてくる。心地のいい風だ。
「こいつらが脱走しようとした際掘った穴らしい。まあ崖っぷちだってことが分かって諦めて放置していた場所だったが役に立ったな」
「……ありがと……う」
「1度寝ればいいさ、そのままでもいいぞ」
「……う……ん……」
ロクロウに髪を撫でられながらそのまま目を閉じた。
体の力が抜けていく。頭の中に過ぎるのは潮風の気配がする綺麗な青い瞳の彼だった。
アイゼン…………、会いたいな……
時間だけが、ただ過ぎていく気がした