監獄の乙女 [ 65/156 ]
ウォォォォオォォ!!
雄叫びを上げて檻から出ていく業魔たちは次々と聖寮に襲いかかっていく。そんな光景を尻目に未だに逃げていない業魔から情報を聞き出す。
南側の檻からはアイフリード、という海賊の情報が聞けたが他の檻からはまともな情報を持っている業魔はいなかった。
「チッ……無駄足か……」
「ここにいる業魔達は数年前に収容された者ばかりです。外の新しい情報を握っているのは本の僅かでしょう」
後ろから着いてきていた自称「元」聖寮の聖隷が先を急ぎましょうと急かしてくる。確かにここにいもまともな情報はこれ以上は手に入らなそうだ。
北側の檻も一通り見て回った為外に出ようと背を向けると未だ残っていた業魔たちが何やら騒いでいた。
「おい……どうするんだ俺達もでるか?」
「いや……お前出るって事は分かってるのか……!?」
「俺たちの癒しのアイドルリアちゃんと会えなくなるんだぞ!!」
「それは大問題だな!」
「…………なに、“あいどる“って」
「さ……さあ、よく分かりません。」
シアリーズも知らない単語らしい。
ギャーギャーと叫ぶ業魔たちに思わずポツリと呟く。
「ていうかその"あいどる"も出ていってるんじゃないの」
「はっ……!」
「そ、そうか!!」
獣の業魔達は頭の中まで獣なのだろうか「阿呆らしい……」と溜息を吐くと「あいどる」の話をしていた業魔達も慌てて檻の外に出ていった。その後を追って檻から出る。何にせよもうここには用はない。
🌻「ふぉっくっしゅ……っっ」
「なんだ?風邪か?」
「誰かが「噂」してるのかも……」
檻から開放された業魔達が倒したのか、気絶している対魔師からロクロウが武器を拝借していると、またくしゃみが出てきた。人魚は風邪ひかないはず、?なのになぁ。
「出口……わかるの……?」
「いや知らんがまあこの倒れている奴らを辿っていけばいずれ出口に着くだろう」
「……結構適当だね」
「応!行き当たりばったりも大事だぞ」
なら早く行こう、とロクロウの袖を引っ張ると聖寮から奪った小太刀をじっと眺めて動かない。
なにか気になる事があるのだろうか?
「ロクロウ……?」
「ん……?ああスマン。俺も一緒に出口まで行きたいところだが俺は“號嵐“を探さなきゃならないんだ」
「ごうらん?」
「太刀だ。ちょっと訳ありでな」
それを探さないと俺はここから出るわけには行かないんだ。……だから、な?と笑ったロクロウは私に小太刀を振りかざした。
サッと詠唱をすると水が弾けた。
ロクロウが足に付けられていた紋章が入った枷を破壊したてくれたお陰だ。
「おおーー……術が出せる」
「応!よかったな!これでお前も自分の身が守れるだろ」
「うん、ありがと……」
ずっと使えなかった治癒術をロクロウに施すと私を助けてくれた時に付いた鍵爪の痕が消えていった。良かった。治せる……
「ん?ああそんな傷もあったな……ありがとなリア」
「ううん……こちらこそありがと……ロクロウ」
もっとちゃんとした手当をしてあげたいが聖寮の声も業魔達の怒号と混ざって聞こえてくる。あまり悠長に話している場合では無さそうだ。発動できるようになった聖隷術で脚にバリアーを張ると久々の感覚に違和感を感じるがペタペタと黒いレンガを踏み慣らした。
ではここでロクロウとはお別れだ。でもアイフリードが言っていた……別れの時の言葉は一つしかないって
「"また"ね」
「応!またな!!」
こう言えばまたきっと会えるって、言っていたんだ。だからなるべく"笑顔"で手を振ると死ぬなよーって間の抜けた声が後ろから聞こえた。
多分大丈夫?だと思う。アイゼン曰く、「悪運が強い」って言われてるもんね