Helianthus Annuus | ナノ
天に響く術 [ 45/156 ]

聖隷術の練習する為にエリアスが集中できるようにと案内されたのは船の船首甲板だった。先程まで集まっていた船員たちもそれぞれの持ち場に戻っているため、回りに誰もいないことを確認するとアイゼンは詠唱を唱える。

「障壁集く肉叢に… バリアー」

「しょうへき…つど…?」

「バリアー、という技は要は肉体強化の初歩の聖隷術だ。かけた対象の防御力を上げることが出来る。今の詠唱は一例だ。詠唱は術師によって異なるからな、脚を大地に……いや、お前の場合は水か。水で包み込むイメージをしてやってみろ。」



「うん…、清らかな水の護りよ、包め、バリアー…っ…、?」

脚を意識して詠唱をするとエリアスの脚を中心に透明な膜が現れキィン―――、と甲高い音が鳴り響くと同時に術は成功した。

「成功だな。少し歩いてみろ」

「うん、………なんか、不思議…?」

キシキシと一歩進む事に木を踏みしめる音を確認しながら恐る恐る歩くエリアスにそのうち慣れる。とアイゼンは小さく笑った。

「これ、が聖隷術…?」


「そうだ。今回は補助術だがお前の得意とする水属性の聖隷術は回復系統が覚えやすいだろう。……お前達人魚も使えるはずだが聖隷術の事をなんて言っていたんだ?」


訪ねた後に、ふ、と思い出せる筈がないか、とどこか悲しげな表情を見せたアイゼンに、エリアスは小さく、「知ってる」と答えた。

「……覚えている、のか?」


「うん、……あれ、の名前は…天響術……」






「私たちが使っているのはね、天に響く術と言うのよ、それで天響術。」



「……"誰か"が、教えてくれた…、」

「……そうか、」

私の頭を撫でるアイゼンの顔は小さく微笑んでいたがやはりとても哀しそうな表情だった。








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アイゼンの詠唱→エドナ(TOZ)参考



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