Helianthus Annuus | ナノ
海へと続くアカ [ 37/156 ]

嫌な予感が拭えないまま白い砂浜を点々と「赤」に染めている跡を辿る。
砂浜にこびり付いたソレはだいぶ時間が経っているようにも見える。


(業魔の血かなにかだろう。そうだ、あいつは大丈夫だ。)


先程アイフリードにいったようにあいつも聖隷術を使えた。それに人魚は普段海の中で生活をしているはずだ。
そう自分に言い聞かせて赤い道を少しずつ、だが確実に1歩ずつ進んでいった。










しばらく辿っていると血の跡は海へ続いていた。途中で途切れており、そこから先は穏やかに揺れる波があるだけ……、尚更嫌な予感が膨れ上がる。

普通の人間や業魔であれば 怪我をした際に海になど入らない。つまりこの血の跡を残した持ち主は「海の方が安全」と考えてその先に向かったと言う事だ。
海の中が安全という種族なんて、片手で数えられる程度しか知らない。

ここまで来たが、海へ続いた血痕は流石に辿れない。自分は泳げないのもあるがここで引き返す方が、本当はいい。


だが

「死神の勘か……、」

宛にならないと、奴には笑われるだろうがなぜだか引き返しては行けない気がした。俺は腹を括ってコートを脱ぐと潜ませていた携帯浮き輪を手に血が途切れた場所から海へ潜った。


(エリアス……!)

あの血がエリアスである確証はない。だがゼロではない。
だが無我夢中で海の中を進む、まだ浅瀬なので波も荒くなく、脚を取られることも海藻が絡まることも無かった。

ゆっくりと、少しずつ泳いでいたが、突如体の自由が効かなくなる。

(っ……でかい波がくる――…!)

最悪のタイミングだ。俺の呪いが発動したのか波が少しずつ最初とは変化を付けて蠢いて来ていた。そのせいで思った動きが出来ずにいると予想通り轟轟と音をたてて大きな波に体が飲まれた。


「ゴッ……ブッ……!」

流れに逆らおうとするがその弾みで海水が入り、むせ返る。くそ……!やはり引き返した方が良かったか!……だが……!

「舐めるなァ!!」


海上へ1度上がると近くにあった岩礁に無理矢理聖隷術で出来た鎖を飛ばすと体が波の流れに逆らうように移動した。
岩に捕まり、改めて呼吸を整えて潜ろうとしたその時、俺が捕まっている岩にも血が付着している事に気がついた。

しかも浜辺の比ではない量の大量の赤がべっとりと俺の手まで染めていた。

「近い……」

この岩礁にたどり着いたのは偶然だったが死神の不運の「偶然」など奇跡に近い。
辺りを見渡して鮮やかな海を見下ろすと少し離れた位置にもう一つ大きな岩礁があった。
自然の力で大きな穴が空いてるその場所へ目標を定めて再び息を吸って海へ飛び込んだ。



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