Helianthus Annuus | ナノ
更にそれから数十年 [ 35/156 ]

面舵いっぱーい!!
男達の大きな声が海上で響き渡る中、アイゼンは甲板で過去に出会った人魚のことを思い出していた。
それが顔に出ていたのか、この船の船長であるアイフリードが心水を片手にアイゼンの名を呼んだ。

「アイゼンえらく上機嫌じゃねぇか。」

「ん?…ああ少し昔を思い出してな…」


この海域は当時俺がこのバンエルティア号を器としていた時に何度か来たことがあった。
あの時は死神の呪いが最悪のタイミングで重なってしまい、嵐の中の海に振り落とされて死を覚悟したが人魚のエリアスによって助けられた。
それももう随分昔の出来事であるがもしかしたらまた彼女に会えるかもしれないと少し浮ついていたらしい。

「お前が前に言っていた人魚がいるかもしれねぇんだろ?」

「まあな………おいアイフリード…分かっていると思うがアイツには…」

「手出し無用、だろ?お前の恩人に、しかも女をどうこうする趣味はねぇよ。安心しろ。」

いい女だったら紹介しろよなー、と冗談半分に奴は言うと(本気部分はあるのはこの付き合いでわかっていた)心水を置いて甲板から船長室へ戻って行った。



「……懐かしいな、」


ここ数年で世界は変わった。
業魔が人にも見えるようなり、そして聖隷も認知できるようになった。

……そして俺も変わった。今はもうこの呪いを解く気はない。俺はもうこの呪いと一生付き合う覚悟で器をこのバンエルティア号からコインにしたのだ。
このコインは海賊として異界を回っていた時に見つけた。偶然にもあの時エリアスと見つけたカーラーン金貨と同じ物で俺はその巡り合わせに柄にもなく運命を感じたものだ。

キンッと持っていたコインを弾く。結果は相変わらず裏、死神の面だった。…あいつは俺とは真逆でこのコインで表しか出したことが無かったな…。

「人魚は幸運の象徴なんだよ!」
「だからアイゼンの不幸も私がふっ飛ばしてあげるね!」



昔過ごした島が見えてきた。上陸に心躍るなんて俺もまだ若いな…、
久々に訪れたその島はエリアスと過ごした頃と変わっていなかった。

心水の蓋を開けて煽る様に飲めば上陸するぞー!!と船員たちの賑やかな声が聞こえた。
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