Helianthus Annuus | ナノ
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※本編ストーリーの何処か。時間軸は不明。

※アイゼン→(←)夢主の描写が多め。夢主はまだ感情を取り戻していません

※他のテイルズキャラの出演描写あります

※ほぼギャグ






「演劇ぃ?」

「はい!」

イーストガンド領のタリエシンにて、
ベルベット達一行は補給の為に立ち寄ったこの港町のボラードにとんでもないことを言われたのだった。

「街の復興の一環として定期的にこうした舞台や演劇などを繰り広げているんですが、……タイミングが悪く、役者たちを載せた馬車が業魔に襲われて今彼らは治療中なんです……」

「それで、なんであたし達が演劇なんてものにでないといけないのよ。却下、時間の無駄よ」

「子供たちも待っているイベントなんです!皆さんなら男女いい感じに揃っていますしお願いします!!」

ベルベットの威圧的な態度にも折れないボラードにアイゼンが代わりに言葉を繋げる。


「俺達が目立っては行けない連中だと分かって言っているのか?」

「そこは大丈夫ですって!子供たちが見に来るのが中心なのでそこまで大々的なものではないので、! 」

「なおさら俺達がやる意味が無いな」


取り付く島もない、とはこの事か。アイゼンやベルベットはあくまでも「否定」の態度を出してきているが別にどちらでもいい派のロクロウや、マギルゥ、エリアス。ちょっとやりたがっているエレノアとライフィセットに目を付けてボラード諦めなかった。


「いいんですか副長さん。ここで断ればボラード代を今までの3倍にします」

「さん……っ足元見すぎでしょう!」

「……あくまでも譲らないというのか…いいだろう。三倍出してやる。それでもやらん」

それが、俺の流儀だ。ばしっと言いつけたアイゼンにも折れないめげないだって今度の演劇は娘が特に楽しみに……いやいやとにかくボラードの彼もここで負けるわけには行かなかった。


「今度の演劇は「人魚姫」なんです!!副長は金髪青眼でいかにも、(目つきは悪いが)王子様要素があるので是非とも王子役を、お願いしたいんですよ!」

「待て……人魚……姫だと?」


しかも王子役。思わずアイゼンの横でぼーーっとしているエリアスを横目で見るが「い、いや。俺は、折れん。」と少し揺らいだ視線でボラードを睨みつけた。


「おおーう流儀が揺らいどるぞ」

「アイゼンが王子とか似合わないもんなぁ 。ライフィセットの方がサマになるんじゃないか?」

「ええっ僕!?」


やらないったら、ベルベットがため息を吐くが、ライフィセットの満更でもない様子に、ボラードはそれを見逃さなかった。

「君が王子様かぁそれでもいいかもな!あっ貴方でもいいですよ、!!異国の王子様ってことで!」

「お、俺か?いやぁ俺こそ似合わないだろ」

もはや意地でもやらせたいらしくもう男と女であればいいらしい。ロクロウに頭を下げだしたボラードにベルベットはため息を吐く。

「ロクロウもフィーもその気にならないで。やらないったらやらないから」

「ですがロクロウ王子も案外似合うかも知れませんよ?エリアスと並んでも違和感ない……」

ですし、と言葉を続こうとしたエレノアに、余計な事言わないで、ベルベットが更なるため息を吐いた時


「待てロクロウにやらせるくらいなら俺がやる」

「おっ」
「えっ」
「はぁ!?」
「ほっほーう」
「ええっ!!?」
「?」


「いやーーー!!副長さんならそう言ってくれるって信じてました!!ありがとうございますー!!では後で街の酒場に来てください!そこで脚本家が待っているので!今回の停泊代はちょっと太っ腹に二割引してあげますよー!!いやー助かったー!!!!」


捲し立てるようにそう告げてボラードは一瞬のうちに風のように去っていった。残ったのは呆ける一行とアイゼンを睨むベルベットだった。


「ちょっと……」
「……すまん」

約束してしまっては仕方がない。ボラードはちゃっかりと料金2割を返金して去っていったのだ。ここでトンズラなんてしたら以降の停泊は5割増は覚悟した方がいいだろう。ベルベットもそれは何となく察しているので「酒場……行くわよ……」とげんなりした顔で呟いた。

「……?なに、どうしたの、?」

「演劇だとさ。リアはたぶん主役だぞー!」

状況を理解していないエリアスの頭を撫で回すロクロウにアイゼンが舌打ちして引きはがしながら酒場へ移動を始める。


「人魚姫……懐かしいですね。むかしよく読んでいました」

「どんな話なんだ?」

「かなっしー話じゃよ。人間の勘違いが生んだ悲劇のヒロイン人魚の話じゃ」

「よくわからないけど子供向けの話じゃなさそうだね………」






ロクロウがエリアスと演劇する場面を思い浮かべてしまい思わず口走ってしまったが「人魚姫」とはそういえば悲劇の人魚の話じゃないか、とアイゼンはベルベット同様に重たいため息を吐いた。


「……?アイゼン、も演劇、やりたくない?」

「……一度引き受けたからには悔いがないようにやらねばならん」


よくわからないが、アイゼンにも色々思うことがあるのだろうと、エリアスも納得しようとした時、ライフィセットとエレノアが手を引いてきた。


「でもお姫様ってことはドレスとかで着飾れますよね!!」

「エリアスがドレス……!きっとすごく似合うよ!」

「……ドレス……?」


私はピンクがいいと思います!僕は水色が似合うと思うな!そんな可愛い会話を尻目にアイゼンも
じっとエリアスを見つめてポツリと呟いた。


「……ドレス……」

「……?」

「…いや、演劇も…悪くないな。」



訂正。やはり今日のアイゼンはよく分からない。





🌻




到着した酒場で待ち構えていたのは1人の男だった。今度の演劇の脚本家を務めるという「マリク」と名乗った男はボラードが連れてきてくれた面子の顔ぶれに中々いい奴らを連れてきたな、と笑った。


「必要な役は7人。王子役、王子の従者役、人魚姫役、人魚の友達の役。人魚の声を取ってしまう悪い魔女役、王子の婚約者役それとナレーションだな」

「ほとんど全滅じゃないの……」

代役だらけで出来るものなのか、中止しろ。とベルベットも投げやりでいうが彼は「やると言ったらやるんだ」と謎の情熱を返してきた。

「奴も言っていたと思うが王子役はアイゼン、お前に任せたい」

「 ああ。一度受けたんだ。俺は全力でやるぞ」


手渡された台本を捲り早速読み始めるあたり本気だ。続いて2冊目の台本をマリクはマギルゥへ渡す。

「それから君は人魚を人間に帰る代わりに声を取ってしまう悪い魔女役だ」



「よかったなピッタリじゃないか」

「こらーー!!儂みたいな純粋可憐な乙女になんという役を……!!」

「本音は?」

「大満足じゃ♪さぁて人魚の声という声を取っておかしもちの“お“も言えなくしてやるぞっ☆」


言っている意味がよく分からないが満更でもないらしい。ノリノリで台本を受け取ったマギルゥに続いてライフィセットに「人魚姫の友達の役」の台本を渡した。

「人魚姫の、友達のお魚の役……がんばる!」

「ライフィセットは……お魚……?」

「役の話だよ!」

じゃあ私が魚が常日頃どんな話しているか教えてあげるね……。エリアスに聞かされた魚の話に引きつった笑を浮かべるライフィセットの次に台本を渡したのはエレノアだった。

「君は王子様を助けたという設定の婚約者の姫の役だ!」

「わ、私ですか?!い、いえ…役を貰ったからには全力で頑張らせて貰います……!!」

このまま行くと、俺が従者でベルベットがナレーションか、とロクロウがエレノアの次に渡された台本に「従者役」とあり、予想通りの役に納得してロクロウもパラパラと貰った台本のページを捲った。

「意外とセリフ多いな…」

「 従者役は少ないほうだぞ。……そして!君がヒロインの人魚役だ!」





マリクがばっ、と取り出した台本をベルベットに渡した瞬間、ピタリ、と空気が凍った。




「は、は?あたし!!?」

「ああ!流れる黒髪の人魚姫!いかにも王子役と並んでも謙遜がないからな!!」



そうだった。「人魚役=エリアス」の公定がみんな無意識にしていたがボラードの彼は「人魚役」は誰か言ってなかった。彼が言ったのは王子役のアイゼンだけだ。しーーーん、となる空気の中「どうかしたのか?」と悪気のないマリクの言葉にアイゼンがポツリと口を開いた。




「……ベルベット…か……そうか…」

「一気にテンション落ちとるのぉ……」

「アイゼンって意外とわかりやすい奴だよな…」




「私、は?」

「ナレーションを頼む!」

「いやいやいや逆でしょ。どうやったってあたしよりエリアスの方が人魚役は似合っているから!」

マリクとベルベットが台本の押し付けあいをしている中、自分の台本を取ったエリアスはアイゼンにその本を見せ、心做しかドヤ顔(※表情自体はあまり変わってない)をする。

「ナレーション、がんばる……」

「…………ああ、頼んだぞ…」

「アイゼンそんなにわかりやすく落ち込むなっぐほォ!!」

ロクロウがからかうようにアイゼンの肩を叩いたがロクロウの鳩尾にアイゼンの肘がクリティカルヒットして、床へ沈んでいった。


「落ち込んで等いない。いいか、俺は、落ち込んでいない」

「……うん?アイゼンはまったく、落ち込んでない…」

「いや、待て、全くではない。…多少は落ちこんでいる」

「……どっち?」


ベルベットに台本を受け取ってもらおうと奮闘していた他称恋多き男と言われたマリクはアイゼンとエリアスの会話を聞いて目ざとく、察した。
「なるほど、な……」と意味ありげに呟いて「エリアス、君が人魚だ!」とマリクはベルベットに渡す筈だった台本をエリアスと交換するとその後ろにいた王子役は静かにガッツポーズをした。

「うん……私は人魚だよ……」

「今から役になりきっているのか……!その熱意嫌いじゃない!」


本番は明日だ!お前達頼んだぞ!
彼の熱意に押されたベルベット達は諦め半分面白半分で台本を読み始めたのだった。
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