エピローグ



「おにいちゃん…ねぇ、大丈夫かなぁ…?」

「だめかもしれんな」

町外れの道。こんな所で堂々と寝ている奴がいた。
いや、寝てるのではなく死んでいるのかもしれないな、と冗談を妹をからかう為に言うと二つに結んだ髪を揺らしながら「そんなぁ!」と大袈裟に跳ねた。

まあ、冗談はさておきこんな所で寝ているのであれば起こさなければならない。今は何かと治安が悪い。その為に俺たち自警団がこうして見回りに来ているのだ。

「あ!起きた!」

「大丈夫か?」

起こすまでもなく俺達の声に反応したのか、目の前の奴は起き上がった。それと同時に深く被っていたフードがハラリと落ちてその表情の全貌を露わにした。

まさか……女だったとは。尚更こんな所に寝かせているわけには行かない。

「立てるか?」

手を差し伸べると倒れていた女は白髪の長く結われた髪をを揺らしながら俺のことを見て目を見開いた。そして「ありがとう、ございます。クロムさん」と静かに呟くと……、

「お前に名乗ったか……?いや、それより

なんで、お前は泣いているんだ……?」

「えっ、」

なぜ泣いているのか、自分でもよくわかっていないらしい。泣いていた本人もとても困惑した表情で「分かりません」と涙を拭いならも彼女は


「でも多分嬉し涙、だと思います」

そう言って笑った。

それが俺達の、この国の軍師となるルフレとの出会いだった。



◆◇◆



「ルフレさん?すっごい軍師だよね!」

「こら、リズ。はしたなくてよ」


それから色々あり、ルフレ、と名乗った彼女を我が国……イーリス王国の一員として迎えてしばらく経った。彼女は軍師としての才能を秘めており、俺達自警団の良きリーダーとなっていた。

最初は素性も知らない奴と、怪しむ者が多くいたがこうして話を聞いているとみんな少なからずルフレに心を開いてきているようだ。

自警団は今日は休日だ。久々の休みに各々が好きなように行動をしていた。その最中妹のリズと会いルフレの事をふと聞いたのだ。隣にいたマリアベルも「優しいのは、認めますわ。助けてもらいましたし」とどこか照れた表情で語っていた。

「フレデリク、どうだ?ルフレは出会いこそあれだったがやはりいい奴だろう」

「ええ……最初は疑っていましたが今の彼女は自警団の良き軍師となっております。怪しい行動もありませんし認めざる終えません……ただ……」


「ただ……どうした?」

心做しか顔色が悪いフレデリクの言葉の続きを待っていると、口元を押さえながら続きを語る。



「むりやり熊肉を食べさせられました……」

「そ、そうか……」

見た目に反して中々気の強いやつらしい。


若干顔色の悪くなったフレデリクを連れたまま今度は城下町へと足を向ける。
休日とはいえ、こう言った街の様子を見るのも王子としての役割だ。まあ俺の場合好きでやっているだけなんだが……

店を出している店主たちに一件一件挨拶をして回る。
気前のいい店主たちはこれもあれも持ってけとありとあらゆる物をくれたが気にしないでそのまま店を頑張ってくれ、とだけ告げてまた次の店に移る。
ここは……装飾屋か。色とりどりのアクセサリーが並んでおり、店主は俺の事を見るやこう言った店でのお決まりの台詞をいってきた。

「これはこれは!クロム様もどうですか?気になる女性へのプレゼントに」

「商売繁盛してるようだな。だが今の俺には生憎と渡す予定がないからな……」

「そうですか……でも自警団の若い皆さんはこぞって指輪を買いに来てますよ!クロム様も先こされないようにいつでもお待ちしておりますよ」

「なに?自警団のヤツら……が?」


まあ、あいつらも結婚していてもおかしくない歳だ(人のことは指を指すな)でもそういった浮ついた話題など聞いたことないが……だが言われてみればココ最近、ガイアは大量のお菓子を抱えてソワソワしてる、気がする。
女は苦手だとか言っていたロンクーすら箱を片手に右へ左へと明らかに挙動不審だった。

子供だと思っていたリヒトも落ち着きがなかったし、結婚貴族のヴィオールも最近大人しい。


他にも他にも……1度気づくと全てのピースが当てはまるようにそういえばあいつは、とみんなどこかしら浮ついていた。


「なあフレデリク、あいつら一体いつの間にいい人が出来たんだろうか……?」

「と、とても魅力的な方がいたのでしょう」


フレデリク、お前さっきの顔色から一転してなんか赤いぞ。まさかお前もか





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