赤色の君が



とある竜の背中の上、暴風に吹かれはためく黒いコートが鬱陶しい中、倒れるもう1人の「自分」を冷ややかに見つめていた。

後ろからかけてくるのはクロムさん。恐らくトドメを刺しに来るのだろう。だがそれをさせる気は無い。
隠していた魔術書を取り出すとこれ以上踏み込めないように結界を貼った。簡素なものだが解くのには呪術師でも最低5分はかかるだろう。今回はサーリャさんというメンバーがいた為の対処だった。


すると、結界を貼られたことにクロムさんが叫ぶ、「おい!!何をしてるんだ!!ルフレ!!」

「最後までうるさいヤツだなぁ君は、」



適当な笑顔を作ってクロムが叩く結界から離れる。すると、奥の方から赤色の髪が、私と同じ色の髪が風にあおられてばさばさと靡かせながら"彼"が叫んだ。
ああ可愛いな。アズールさんは何色でも様になってる。

「父さん……ッ!!」

「ルフレさん……!!」

その、彼の後ろにはオリヴィエさんがいた。
ああ、泣きそうな顔をしてる。彼にそっくりだ。

彼女はアズールさんの為に1度抱いた時以来疎遠になってた。私が意図して避けていたのだ。ただ彼女を利用した。ごめんね、貴女に愛情を与えられなくて、こんな私を彼の父親にしてくれて

「何してるんだよ父さん……!!ほら、早くこっちに……!」

「ルフレさん!!戻ってきてください……!」

母さんを、僕を1人にしないでよ……!!




悲痛な叫びだ。まるで親を求める幼子の様に顔をくしくしゃにして叫び、結界を叩いて手を伸ばしている。
でもね、"私"は止まるつもりはなかった。



約束破ってごめんなさい。でもね、次は、

次こそは貴方に愛されたいの


サルビアの香りを纏う彼に背中を向けて私は瀕死の邪竜の胸にキルソードを突き刺した。



「お、のれ……ッ」

「貴方にもわかるでしょう?しってるよ、だって君は"僕"じゃなくて"私"なんだもの」


だから、私の我儘で死んでください。


ゆっくりと剣が沈みゆく中、私の体も少しずつ消えていく。
ああこれで「戻れる」次こそは、次こそは。今度こそ間違えない。



「父さん…………ッッ!!!!」






その呼び名は今後ないと願いたいなぁ
でも貴重な体験だったよ、アズール。僕の息子。


(確かサルビアの花言葉って「家族愛」だっけ)

香りまで私を追い詰めるなんて、
次は是非プルメリアの香水を用意しててくださいね?



「さようならアズール(僕の息子)





次は息子なんかじゃなくて恋人を望みます.

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