「貴女がお父様を殺したんです……!」
知ってる(棒)
ちょっと絆絆うるさすぎたんじゃないですかね?(棒)
内心そんな事思いながら夕日が綺麗だなーとルキナさんの後ろで沈みゆく夕陽を見ていた。
(毎度毎度……どの世界でも彼女は変わらない)
不思議な事にルキナさんだけは3度目のこの世界でも前の世界でも何も変わらない。父親似と言ってもとても不気味である。こちらに威嚇する様に剣を突きつけているが経験値3倍の私に取って小娘の剣など取るに足らず。ましてや可愛い可愛い息子がいるのに殺されてたまるかって感じて「彼」の登場を待っていた。
「ルフレさん……!貴女には死んでもらいます……!」
「何をしてるんだッ!!」
きたーーーーー(棒)
ナイスだクロムさん。その調子でそのヒステリックを頼んだぞ!
「じゃあ僕はこれで」
「えっちょっ話は済んでません!」
「ルキナ、落ち着け!」
「お父様!止めないでください!」
よくもまぁあれだけめんどくさい男を父さん父さんと慕えるものだな、
ザクザク、と音をたてて芝生を踏みしめて後ろの親子から遠ざかって行くとそう言えばアズールさんも意外と父親っ子だったと、思い返す。
「父さん、見てよ僕が仕留めたんだよ!」
「父さんってば僕ばかり構ってないで母さんの所にも行ってよね」
「父さんは凄いなー、僕には出来ないよ」
「父さん、」
「父さん」
「………………、ちがう」
そう呼ばれたくない。"私"が本当に呼ばれたいのは――……
◆◇◆
そのまま戻ってもよかったのだがやはりこの間の傷のことといい、彼が気になったので自分のテントではなく、アズールさんの元へ向かうと相変わらず女の子に話しかけようとしていた。……させてたまるか。
「アズール。ちょっと君に話が…」
「あっ、父さん!見て見てこの前の傷。ちゃんと治してもらったんだよー」
ウッいい子!!女の子にごめんね、と言って声をかけた僕の元に笑顔で走ってくるアズールにときめきがかくせない。
「う…うん。良かったね」
「うん、心配かけてごめんねー」
「いや、その…僕も、この前は無神経なことを言って悪かったよ。アズールはちゃんと戦ってたのに何も分かってないみたいなこと言って…」
「あぁ、なんだそんなこといいんだよ、僕も悪かったんだし」
「でも…」
"私"は貴方の悲しむ顔は見たくないんだ、
言いたくても言えない言葉にハクハク、と口を開くが音にはならなかった。グッ、と堪えて俯くと無理やり顔を上げされられてアズールさんと視線があった。
「…笑ってよ、父さん」
「え?」
「そんな神妙な顔してたら、暗くなっちゃうよ。笑って笑ってー。ほらほらー」
「あはは…!く、くすぐらないでよ…!」
なんだこの恋人同士のようなやり取りは……!!?エッ好き!!言葉を紡ぐ前にパっと手を離されてアズールさんは微笑んでいた。
「ははは!さすが父さんいい笑顔だね!父さんにはずっと笑ってて欲しいなー。僕はみんなが笑顔でいられるような世界を取り戻すためにここに来たんだから」
「…それが君の、本当の使命かい?」
女の子にモテる為じゃなく……?
「そうだよー。この前は嘘ついてごめんね。でも…これからは父さんには本音を話すって決めたから」
「そうか…良かったよ」
これは前前世でも知らなかった事だ。聞けて嬉しい。
父親も悪くないな、なんて思ってしまう。
「でも、僕が本音を話しだすと
うっとうしいかもよー?
こう見えて僕、すぐ落ち込むし。
かなり後ろ向きだし、すぐ泣くし。
特にナンパに失敗した時なんかは目も当てられない感じになるし」
なんてね、そう笑うアズールさんについ「知ってます」って言いたくなった。ナンパに失敗したら人のテントに忍び込むんですもんね?
……でも今はそんな事されない、知らない。今は父親なんだから。
「………アズール。そうやってもう無理に僕を笑わそうとしなくていいよ」
「笑いを取ろうとしたわけじゃないよー僕が女の子を好きなのは本当だし!」
「女好きなのは認めないけど僕も、君が強がらずに生きていけるような(この)世界(は)を取り戻す約束するよ。未来で死んだ僕の分まで(は)君を守るだから…辛い時は、もっと僕を頼ってね」
あくまで本音は隠す。でも、嘘は言ってない。
「…父さん……ありがとう!父さんったらそんなに僕のこと考えてくれてるんだ…!」
「あたりまえじゃないk」
最後の「か」を言い終わる前に、アズールさんが抱きついてきた、?んん?えっだきつ、ハグ?why??
頭が理解する前にアズールさんが付けていた香水の香り(確かサルビアの花の香りと言っていた)が鼻を掠めて脳が一気に覚醒した。
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙アズールさんがぁぁぁ!!わた、じゃなくて男の"僕"に!!ハグを!!!!!!首にしがみつく形だから若干苦しいがそれより胸がいっぱいになった!!!!
「わっぷ…!アズール!首にしがみつかないでよ…!(嬉しさで胸が)苦しい…!」
「だって…父さんがそんなこと言うなんて思わなかったんだもん…僕も父さんを守るよ」
今度こそ父さんを死なせたりなんかしない
"僕"の目を見て、そういったアズールさんの顔はとても真剣なものだった。
なんて親思いのいい子なんだ。思わずうるっと来てしまうがそのセリフは中中心が抉られる。この空気の中誰が自分を犠牲にする気ですと言えるだろうか?
「だから…もう僕を置いていかないでね…」
「……うん…………」
守りたい、その笑顔。
ズキズキズキズキ
でもごめんなさいたぶん置いていきます。
とてもこころがいたいです。