赤色の君が



「おにいちゃん…ねぇ、大丈夫かなぁ…?」


背中には芝生の感覚、そして聞きなれたリズさんの声が耳に入るとああ「戻った」んだな、と他人事のように思った。

「だめかもしれんな。」

「そ、そんなぁ!あ!」


体の脱力感は抜けないが、目を開けるとそこには「あの時」と同じ3人……クロムさん、リズさん、フレデリクさんが目に入る。

手の甲にはギムレーの紋章。
戻れてる、そう確信して体を起こした。





今度こそは間違えない。



「気がついたか?」

「平気?」

「こんな所で寝てると風邪引くぞ。立てるか?」


指し伸ばされたクロムさんの手に捕まり、立ち上がると黒いコートからパラパラと草が落ちる。

軽く手で残った草を払い落としているとクロムさんが苦笑いで私の髪の毛にも着いていた草を払って、



とんでもない爆弾を落としてきた。

「怪我は……無いようだな。いくらとはいえこの辺はまだ治安が良くないからな。」

「は?」


デリカシーの「デ」の字も無い男だと思っていたがここまでとは。後で腹にトロン刺す。ぎらり、と思わず睨みつけてしまうとフレデリクさんがクロムさんを庇うように前に出てきた。

「不躾ですね。助け起こしてもらったのにも関わらず例もないとは……クロム様。このような不審なはほおっておきましょう。」

「あ"?」

流石に肉……フレデリクさんの発言でトロンメーター振り切れたぞ。誰が男だ。
…………まさか!!今回は体格がいい見た目とか……?
あれ?そう言えばクロムさんと目線が……変わらない気が、……?


「あー……えーと、その、私どんな姿してますか?」

「?、あっ。アタシ鏡あるよ!」

胸がひらべったいのは多分、貧乳だから、声が比較的低いのはそういうハスキーね声だから。
色々言い訳をして恐る恐るリズさんから借りた鏡を手に取って自身の姿を見た。






正直いって、神様は、ナーガ様は私が嫌いなのかと思ってしまった。
いや邪竜だから嫌われてもしょうがないけど、しょうがないけどさ





「よりにもよって男かよ………………」



鏡の中には赤い髪をした「男の私」が写っていた。





◆◇◆


それからなんやかんやあって、いやほんとなんやかんや。この辺りの説明は省いても皆さんご存知でしょう。メタ?私そんなコトバシリマセン。

まあとりあえずなんやかんやでイーリス自警団の軍師になった前世と違う意味で私は頭を抱えていた。


「……男……どうしろと……」

「どうしたの?ルフレ?私があなたを苦しめる人をのろってあげるわ……」

ぺったりと背後からくっついてくるサーリャさん。前前世にも前世にもいなかった彼女はペレジアの呪術師だったが何故か懐かれた。
彼女のバインバインなおっぱいが背中に当たるが今はそれがとても鬱陶しかった。

呪いはいいから乳をくれ。まさにこれだ。


この姿でアタックした所できっとアズールさんを困らせるだけだ。監禁でもすればいいが私はあくまで「アズールさん"と"幸せになりたい」のだ。一方的なのは良くないですよね。え?じゃあ何でセレナさんを……?その名前は出すな。気持ち悪くなります。
ともかく、私の愛だけを押し付けるつもりはないんです。そう、だから前の世界でも「直接」は手を下してません。あれはギムレーのせいですし、私は世界を救っただけなんですから。
それの恩恵として「やり直し」が出来たっていいじゃないですか。
誰にも迷惑を掛けていませんし……そもそも皆さん記憶がないんですからね。

さて、改めてどうしたものかと無骨になった自身の手を見つめた。その手の甲には相変わらずギムレーの紋章があったがそれはどうでもいい事だ。


「サーリャさん、性転換の呪いとかないですか?」

「あら……ルフレは男の方が好み?なら男になる……と言いたいところだけどその呪い(まじない)は最低でも5、6年はかかるわね」

「5、6年か……」

それではアズールさんに振り向いてもらう所か既に恋人が出来ているかもしれない。
遅すぎる……ならばいっそ娘でも産んでその娘をアズールさんとくっつける?いや遠回り過ぎるしアズールさんが誰かを愛するという事が吐き気しか起きないし、そもそも娘が生まれてくる確証がない。

今回"は"恋人になることは無理だろう。だがアズールさんをほかの女性にあまり近づけることがなく、尚且つ近くにいれて愛される存在……

背中にくっついていたサーリャさんを引き剥がしてクロムさんに声をかける。

「……クロムさん。次の交渉先はフェリア連合ですよね?」

「ああ。俺は姉さんのように交渉は上手くないが……お前が居てくれたら×××××××××××××××」

クロムさんの話を後半聞き流しつつ、ならばあの暗愚王と戦った時に共闘した「彼女」に会えるかもな、よし、と小さな声で呟いた。




ちなみにクロムさんの運命の相手(笑)、今回はソワレさんでした。わードン引きー(棒)






どうせ結ばれないというのなら


(アズールさんの父親になってやる……!!!!)



◆◇◆




前世でリヒトさんがオリヴィエさんとくっついても、ロンクーさんとくっついても「アズール」さんは変わらなかった。
「父親」が誰であれ、アズールさんが産まれるのは知っている。ならばこれを利用しない手はない。
女を抱けるか?と聞かれたらちょっと悩みどころだがこれが愛の試練だというのなら乗り越えてやろうではないか!!



「オリヴィエさん?何をしているんですか?」

ニコニコと人当たりのいい笑顔で私……いや「僕」は"彼女"に近いた。

待っててくださいね。
アズール(私の息子)さん

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