プロローグ



それから(以下省略
……すみませんもう展開に着いて行けなくてこんな始まり方で許してください。

クロムに「お父様」発言をした謎の仮面の剣士────マルスの正体は未来から来たクロムさんの娘、ルキナだった。
この先の未来────邪龍が目覚める絶望の未来を回避すべく、神竜の力により未来から父を守る為に時を超えてきた。……との事で。
目覚めた邪竜、絶望の未来……ルキナの話により、一時は混乱したもののイーリス自警団は、……クロムは、彼女を何のわだかまりもなく受け入れた。

……だからそれでいいのかイーリス国民。色々と寛容すぎるだろう。王が"そんなん"だから国民も"そう"なのか?なんなんだ。
仮に彼女がそんなとんでもない設定を練ってきた刺客だとしたらそれこそ一環の終わりだと言うのに。

訝しげな視線を送る私なんてきっと彼らには見えていないのだろう。ルキナは過去の父と母感動の再開に涙を流している。
楽しげに話している彼らを見ていると、私だけがこの場において異物になったような気がした。

ちなみに、ルキナが正体を明かした際「私たちの娘はこんなに綺麗に育ったんだって」というあの場にいた私に見せつける用なスミアさんの台詞に、思わず胃から"いつもの"が込み上げてきたのは仕方がないと思います。

貴女の旦那様を巡る勝敗は決しているというのに、嫉妬が怖いです。私はしがないお腹に穴の空いた軍師なんで許してください。



────なんて事を思いつつ、態度には出さずに胃と胸を抑えながら他の方に歓迎されているルキナを細々と名を呼んだ。

「あー……、えーっとルキナ……さん?、貴女にはこの軍と行動を共にしてもらう形でよろしいでしょうか?」

王族であるクロムさんを既に「クロムさん」とさん付けで呼んでいるのだ。未来の王に無礼かも知れないが、仰々しい呼び方にすると彼が何故か怒るので悩んだ末に同じくさん付けで声をかけると、漸く彼女はこちらを見た。……否、睨みつけられた。


「はい勿論です。…………貴女は、ルフレさんですよね」

「そうです。……未来でもご存知でしたか?」


彼女が自称未来から来たが嘘でないのであれば、確かにクロムさんの補佐として働いていた私と面識があってもおかしくないだろう。
すると、彼女は「ええ、よく知ってます」と淡々と答える。









「……未来で貴女とはそこまで面識はないのですが、未来の世界でお父様から話は聞いていました。



確か────よく吐く軍師がいる……と」










せめて「少し変わった軍師がいる」とかが良かった。
お前は俺の半身だ!!とか意気揚々と言っておいて娘に紹介するのが胃が弱い軍師ってどういう事だ。



「あらあらまあまあ……クロムさんちょっと後で話があります」

「!!……っお父様に近づかないでください!!」

まるで猫のように威嚇をし、クロムさんに近づこうとした私の腕をつか父親そっくりなルキナさんさんの母親似の要素を垣間見た気がした。

嫉妬深さって遺伝するんだ……。私の腕を掴んで睨む、ルキナに苦笑を零して伸ばした手を力無く下ろす。────彼女のクロムさんの娘たる唯一無二の証拠となる聖痕が刻まれた左目が鋭くなる。それと同時に溜め息を吐いた彼女は渋々私の腕を離してくれた。


「……その目、本当にクロムさんとスミアさんの子なんですね」

「────ええ。これとファルシオンがなければこんな突拍子もない夢物語のような話、きっと"貴女は"信じては貰えなかったでしょう」

なんだそのお前以外は信じてくれましたでしょうけどマウントは。
言っておくが、貴女の父親は「うちの軍は誰でもウェルカム!」な本来なら一国の王としてはありえない懐の緩さなのだ。私と過保護な従者位は疑ってないととっくに寝首を取られてもおかしくないのだ。唸る猫のような娘さんに「不敬です!」って手を斬り落とされそうなので言わないけど。


「……この軍にいる内は、貴女の指示に従っておきます……あ!!!」


渋々私との間に人1人分の距離をとった彼女は、次の瞬間まるで何かを"思い出した"かのような声をあげまたもや私の腕を掴んだ。

「えっと……な…、何ですか?」

「ルフレさん!今からこの軍はどこへいかれますか!?」

「えぇえ?……この後の予定は一度軍義をしてクロムさんと決めてからになりますね」

「ならその進軍の道中でいいので探して欲しい"人達"がいるんです!」

やけに食い気味に迫るルキナさんはクロムさんに似ていることもあって振りほどくことも出来ずにたじたじになってしまう。突如大きな声を上げたルキナの声に反応して先程事情を説明した軍の皆も何だ何だと集まってきた。

「一度落ち着いてルキナ…どうしたの?」

落ち着かせるように彼女の母であるスミアさんがルキナさんの肩をそっと抱いた。母に触れられて少し落ち着きを取り戻したのかルキナさんは一度呼吸を落ち着けた後、恐る恐る口を開いた。


「いえ……実は私以外にも未来から来ているのです」

「えっと……"なにが"ですか?」

「私の仲間です」

未来での仲間?だとしたら未来でも生きている今の軍の仲間だろうか。
ルキナが見た所10代後半〜20代前半と見ると、未来では今の軍の人達は現役では無いはずだ。
つまり、"それ以外"の"もの"。想像が付かない。

だからこそまたもや嫌な予感しかしなかった。軍師にとって予測できないもの程怖いものは無いのだ。胃に穴が空いているかもしれない私にこれ以上の負担はやめてくれ。今日はエチケット袋持ってきていないんですよ。





「えっと……なんと言ったらいいか……私の仲間は未来の皆さんの子供です」







「はぁ?」








「ですから、この軍の夫婦の方々の子供です!今この地に未来から私と共に来ているはずなんです!」



ですですです


やたらと響いたその声が脳に反響して意味を理解するのに時間がかかった。


「は、?へ??」






コノグン ノ フウフ ノ コドモ
このぐんのふうふのこども

この軍の夫婦の子供?????
いやいやいやいや、ルキナと違って生まれてすらない。というか新婚や付き合いたてとかで夫婦ですらないカップルばかりだが???

だがそんな私の気持ちなんて露知らずなイーリス国民はやはり寛容だった。



私たちの子供!? 
そっかそっかーなら探しに行こうかー
えーどんな子だろー!
ははは君に似て可愛い子だろうね!








ルキナさんのその言葉に誰も疑うことはせずむしろ今から探しに行こうか!的な流れになっている軍のそのゆるーい空気に吐き気ではなく頭痛がしたのは仕方がないと思います。だれかEveを。胃にも頭痛にきくやつを下さい。


あの、
いや、
うそでしょ、
えっ?
おい、
ちょっと待ちましょう。皆さん正気に戻って。















結婚したばっかりで皆妊娠すらしてないじゃないか!!!


そんな私の心の叫びは露知らずリア充達は嬉々として自分たちの子供のことをルキナさんに尋ねていた。

────とりあえず迎えに行くって何処にですか????

【戻る】

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -