黒色の君へ




「僕はアズール。よろしくねルフレさん。」

前と変わらぬ名前を名乗った愛しい人はどうやらオリヴィエさんとロリコンからおっぱい星人へと進化したロンクーさんの息子(として生まれる予定の人物が未来から来たというよくわからない存在)…らしくロンクーさんと同じ黒色の髪をかきあげて器用にウィンクをした。



父親が違ってもアズールさんはアズールさんだった。

母の血は強し(ルキナさんを除く)




ルキナさんを初めとした未来から来た子供たちはアズールさんとの再開を喜んだ。私は四の五の言わずにもちろん彼を歓迎した。即刻遺跡に居座っていた賊たちを壊滅させ、たのだが、このアズールさんとは恋人のコの字にもなっていない事を忘れていたのである。


「やあルフレさん、今日も綺麗ですね!良ければ一緒にお茶でもどうですか?」

「あら、アズールさん!!いいですよ?どこに行かれますか?」

私が拠点としているテントを捲って現れたアズールさんにわかりやすい態度で"私は貴方が好きです!!"という態度をとるが変な所で鈍い彼には通じていないようだった。

「え!?いいんですか?いやー色んな女の子にフラれてたんで慰めてもらおうときたのは当たりでしたね!」

「むっ、なら次から私のところに真っ先に来てください。お茶なんていくらでも付き合いますからね?」

「それって……いえ、なんでもないです!」

ニコニコと人当たりのいい笑顔で段々と距離をとるアズールさんに前はもっと歩み寄ってくれたのに……やはりこの姿がダメなのか……?

ああ、前話で言い忘れていたが過去に戻るという謎の体験をしている私はなんと容姿も変わっていたのだ。
前は銀髪の平均的な女の子だったのだがいまは小柄で胸もなくちんちくりんなロリコン大喜びの幼女体型になってしまったのだ。アズールさんは以前、子供は苦手と言っていたのを少し聞いてしまった。
子供、という程の体型ではないが前と比べるとどうしても凹凸が貧しい気がしてため息を吐いた。


「あっまたため息吐いてますね、幸せげちゃうますよー?」

「誰のせいだと……、いえアズールさんは悪くないですね……。ロンクー(ロリコン)さんの思考は似なかったのですね貴方は……」

どちらかと言うとおっぱい星人の方が受け継がれてそう……ぐぬぬと自分の体型にやり切れない怒りがあった。
するとロンクーさんの真摯な思考、と意味を捉えたのかアズールさんは苦笑いで答えた。

「そんなことないですよ?だってさっきも真摯な気持ちで声をかけたのにフラれちゃいましたし…」


「…私にも真摯な気持ちで声をかけているんですか?」


「そりゃ、そうですよ!!いつもお仕事頑張ってるルフレさんに元気になってもらおうと僕なりの真摯な気持ちです」

「嬉しい…なら、この後のデートも楽しませてくださいね?」

「で、デート!!?そんなつもりじゃ……」


そんなつもりじゃない?私はそんなつもりなんです。
彼は初対面の人にはモテないが軍の女の子(特に未来から来た女の子達)にはモテていることは知っていたので私はわざとみんなに見せつけるようにアズールさんの腕に抱きついた。

「違うんですか……?」

「……う、上目使いはやめてください……」

おお、この体だと上目使いがさらに有効になるのか、一つ勉強になった。ルンルン気分でそのまま街のカフェまでアズールさんとくっついて歩いていると前方からセレナさんが大きな袋を抱えて歩いてきた。

「あらアズール……!!…とルフレさん。」

「……こんにちは…」

「こんにちはセレナ。買いものかい?」

今度の世界のセレナさんはグレコさんとティアモさんとの間産まれたので髪の色は落ち着いた赤色をしていた。彼女はそんな赤色髪を靡かせてそうよ、とつっけんどんに返事をした。

「ちょうど荷物持ちが欲しかったの。アズール、これ持つの手伝って貰えない?」

「あー……えーっと……」

いつもならここで気のいい返事をしていたのだろうアズールさんがチラリと私の事を見た。もちろん私の事を優先してくれるのだろうと鷹を括っているとあろう事か私の腕からするりと抜けたアズールさんはセレナさんの荷物を持った。

「ルフレさん、ちょっとごめんね!すぐに戻るからさ……!!」

「……私の事を誘っておいて、他の女の子の所に行くんですね」

最低です。
彼が私の事を優先してくれなかったという事実が重くのしかかり泣きそうになるのを堪えて彼を睨みつけると彼はわたわたと必死に弁解をはじめた。

「うわわ!そんな怖い顔しないでってせっかくの可愛い顔が台無しですよー!!?」

前はここで「美人な顔が」って言っていたはず。……つまり私の評価は美人から可愛いに格下げ(?)されてしまったのか!?

「…………どうせ美人じゃないですよー……」

「へ……?そんなことないです、ルフレさんは可愛いの中にふとした瞬間の美人な感じがにじみ出ていますよ!」

真面目な顔をして距離を更に詰められた。そ……そんな力説されると私は調子に乗ってしまうぞ。

「ち、近いですよ!?キスでもしたいんですか?」

「ルフレさんがしたいのであれば……っていたたた!!」

「いつまで遊んでいるのよ!!ほらさっさと行くわよ!」


アズールさんはそのままセレナさんに引っ張られて、連れていかれてしまった。


吐き気はしない。けど、





「邪魔ですねぇ」






私は次の進軍の軍事書を取り出すと
▲▲▲
▲△▲
▲▲▲

▲=敵兵
△=囮役
の△にそっとセレナ、と書き込んでおいた。

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