私は此処にいます
ミナキに会えた。
その事がすごく嬉しい。
けど、私は「スイクン」
貴方が私を「ミズキ」と呼んでくれることはもう無い。
あまりの驚愕に
言葉が出ない。
叫びたいのに
貴方の名前を
大好きだって
言いたいのに
私は此処にいるよって
泣き叫びたいのに
『彼が…貴女が言っていた「ミナキ」さん、ですか?』
『は、い。…「この」世界のミナキでしょうね。』
『…スイクン、過去に縛られてはならんぞ。』
ホウオウからの転生の条件の一つ。
関わりを絶つこと
これは過去に縛られ過ぎた人からポケモンへ転生した青年が昔、人間を何人も殺した例があるかららしい。
その事件以来ホウオウは転生をさせる際にいくつか約束をさせるのだ。
『人間時に関わりがあった人物とは関わりを絶つこと』
『マスター(主人)と認められる人間には大人しく捕まること』
そして、
『別の世界で生きるということ』
その三つの約束を守ると誓い、転生をするのだ。
そこまでして,生にしがみつき今の私はここにいる。
そう、私はホウオウに誓ったのだ
ミナキ…、彼らと関わりを、
絶つことを
『…わかってますエンティさん。ホウオウ様の約束通り、関わりを絶ちます。…皆さん行きましょう、ホウオウ様はまだお目覚めになられてないんですよね?』
『…ああ、お前が眠りについていた時、目覚めてはないまだ時間がかかるだろう』
『なら早く…』
行きましょう。
その言葉は少年の声で遮られた
「はじめまして、だね。僕はヒビキっていうんだ。」
ばっ!!と後ろを振り向けば先程ミナキと此方を見ていたゴールド君…じゃない、少年がいつの間にか下に降りてきていた。
「君はキレイだねスイクン。」
エンティさん、ライコウさんもその少年の声に反応し、すぐさま戦闘体勢にはいった。
「僕、君が好きだな。」
「俺、ミズキさんが好きっス」少年と,過去の彼が被る。違う。彼はゴールドではない。
「だってこんなにキレイなポケモンはじめて見たよ」
そっと、触れられる距離に近づいてくる赤い服の少年、…ヒビキ君。
少年の後ろにはベイリーフが震えながらこちらを見つめてた。
…この世界のゴールド君…じゃない、ヒビキ君はチコーリタを選んだのか
前の世界ではヒノアラシだったのにね。
『おいっスイクン!!そやつから離れろ!!!』
ヒビキ君のその動作にエンテイさんが「何か」を察したのか私に向かって叫んだ。
『え…?』
「ああ、はじめましては間違いですか?ねぇ『ミズキ』さん?」
その甘ったるい声と共に頬を撫でられた。
気持ち悪い
直感が「ソレ」を拒絶した
『っっ…!!!!!!!!』
私はヒビキから逃げるように、焼けた塔から飛び出した。
「俺、ゴールドって言います!!よろしくお願いしやーす!!!」
「ミズキさん!!!!」誰、だ
「アレ」は
何で私の名前を知ってるの?
ミナキ、は
ミナキは私をわからないのに
あんな少年は私をわかったのに
「私」を見つけられたのに
ミナキは私を、ミズキを見つけられないの?
その日エンジュシティはずっと大雨だった。
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