青色のバレンタイン
旧サイトの呟きに載せていた「青色の君と」のバレンタインの番外編 2月なので再喝しました 青色の君の本編終了後の話
ルフレはカレンダーのわざとらしくハートで印を付けられたのを見て、ため息を吐いた。
「とうとう"この世界"でもその時期か……」
聖バレンタイン 恋人の日なんて言われてるのはわけがある。好きな人に女性から男性へチョコレートを渡す風習の日だからだ。
私だって過去にチョコのひとつや二つや三つや四つ、渡したことはある。主に彼に ていうか彼にしか渡したことがない気がする。
桃色の彼に渡した時、 「中々こせ、い的な味だね」 そう言って彼は歯形を残したチョコを片手に医務室に運ばれた。
黒色の彼に渡した時は笑顔で受け取ってくれたがその後医務室に運ばれたと聞いた その時はセレナさんに看病されていたらしい 私のチョコで他人の恋愛イベントおきて「解せぬ」と言った記憶がある
赤色の髪の彼に渡した時は 家族チョコという事で渡してその後にマリアベルさんに「児童虐待はいけません」と言われた。解せぬ。
緑色の彼時はその場で受け取って貰えないと思って自室に置いてきた。 その後自室で倒れてる彼を見つけた仲間達が奇襲だと騒いでたがあの時の私は(食べてくれたんだ…!(トゥンク))となっていて喜んでた 違う、そうじゃない、私。自分の食べたチョコで倒れた事を喜ぶな。
そしてあの時もその時も……まあいい記憶はあまりない。
この世界でのバレンタインは彼を避けていた時期の為、1度目は回避出来た。 だが今回は私が戻ってきてから初めてのバレンタインということである。 付き合ってる……というか旦那である彼には当然チョコを渡さないといけない。 本来ならチョコ以外ですまそうと思っていたのに息子のマークが手を回してカレンダーにわかりやすいハートマークを付けやがった。マークだけに。……ゲフン、なんでもないです。
多分本人はルキナに貰う(予定)を書き込んだだけだろうがこのカレンダーの14日にハートマークが書かれて以来、彼がどこかソワソワしている。 ……恐らく、私が書いたと思われているのだ。
これではあげない訳には行かなくなってきた。 そういう訳なので一週間前からオリヴィエ達主催の料理教室を開いてもらっていた。 いた。過去形である。悲しかな。
料理教室最終日だった先程、マリアベルは「旦那様にお渡し下さい」と胃腸薬をくれた。 ティアモは「これは一種の才能なのでは……?」と鋼鉄所に持ち込むといい剣が出来そうと鍛冶師に言われたとか聞いた。 オリヴィエは「私の息子ならきっと大丈夫です。なんせあのクロム様の子でもあるのですから」女神の微笑みで匙を投げられた。
一週間。料理を教えてくれた先生達が無言で首を振ってしまったまま、バレンタインデーは本日だと言うのに私の手元には鋼の塊の様なチョコレートがあるだけだった。いや、これチョコレートなのか?鋼ですって出した方が納得がいく鋼だ。 いや、チョコレートなんですよ。湯煎して、溶かして、固めた。なのに選ばれたのは鋼でした。
「……市販の……買いますか」
前回のやべー"私"達と違って幾分正気な私はこれは人にあげていいものではないということを理解している。 前までは……手作りに拘っていたのはきっと、彼なら、食べてくれる。そんなフィルター50枚重ねしていたのである。彼等の胃腸のご冥福を祈る。さて。ではこれはゴミ箱に捨てないとな、とキッチンの生ゴミ入れに入れようとした時、後ろから誰かの手が伸びてきて私の持っていた鋼を奪った。
「もしかして、そのチョコ捨てようとした?」
「……チョコじゃないです鋼です。これはsweetじゃないですsteelです」
「いや、チョコでしょ。しかも僕のために作ってくれた」
誰かの手。なんて言ったけどその手の正体はとっくに分かっていた。そのまま彼は後ろから私を抱きとめるようにして鋼を「食べてもいい?」といたずらっ子のように笑った。
「……市販の買ってくるので。それ食べたらお腹をきっと壊します」
「僕が、これがいいんだよ」
「……美味しくないです」
「……ルフレは変な所で鈍いよね。僕は君が作ってくれたチョコが食べたいんだ。味なんて関係ないよ」
ああこの人はいつだってどこに居たって私の欲しい言葉をくれる人だな。
諦めてはが……チョコから手を離すとアズールと向き合った。 「……胃腸薬あるのでやばいと思ったら言ってくださいね」
「いらないよそんなの」
笑いながら、彼は私のチョコをガリガリと凡そ普通のチョコではならない様な音を鳴らしながら完食して、
彼は美味しかったよ、と微笑んでくれた。
"初めて"、笑って心から喜んで貰ってくれたので思わず泣いてしまったのは無理もないと思う
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2021/02/01 14:47
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