たかが三日、然れど三日。

「はぁ〜」

勘右衛門は只今、学園長からのお使いという名の潜入捜査を頼まれ、とある城の女中として忍び込んでいる最中である。
任務の内容としては、極々簡単な物で城の間取りを覚えて後は紙にその間取りを書き写せば終了という、至って簡単な任務だ。
ただ、城の間取りをバレない様に事細かに調べるのには時間が掛かる為、今回勘右衛門は女中として城に仕える振りをしているのだが、仕えだして二日目で勘右衛門は、ぽっかりと心に穴が空いた様な言い寄れぬ空虚感を感じていた。

「はぁ〜」

本日、何度目か分からない溜め息を吐く。
たかが三日といっていたが、実際にはここに来るまでに一日、そして任務に三日で帰るのにまた一日の行き帰りを合わせれば一週間程だ。
学園を出て来る時には何とも思わなかったのに、三日目にしてみんなが近くに居ないのがこんなにも寂しいなんて…と勘右衛門はまた、はぁ〜と溜め息を吐く、この先お使いの仕事だって増えるだろうし、卒業したらそれこそ離ればなれになるっていうのに、いつの間にか自分の周りにはみんながいるのが普通になっていて、離れて始めてみんなと居る時の自分がどれほどまでに幸福感で満たされているのかが良く分かった。

「会いたい、みんなに…、兵助に会いたい…」

想いを言葉にすれば、それはどんどんと膨れ上がっていく。
その気持ちに、今すぐにみんなの所に帰りたくなるけど、自分にはやるべき事があるだろ!何してるんだ勘右衛門!!と自分を叱咤し女中としての仕事に戻った。
あと一日、自分にそう言い聞かせ、帰りは寄り道せずに真っ直ぐみんなの所に帰ろう!と心に決めて。





「会いたい」たった一言


(ただいま〜)
(((おかえり〜)))
(あれ?兵助は?)
(あぁ…兵助なら勘右衛門不足の禁断症状で部屋で寝込んでる)
(は?)
(それはもう、好物の豆腐が喉を通らない程にな)
(だから早く行ってあげて?)
(うん!分かった!!)




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