勘右衛門には少し厄介な癖がある。
それは仲が良くなると何の気兼ねもなく抱き付いてくる事だ。
普通の奴なら、なんら問題はないその原動だけど、俺は勘右衛門を友達としてじゃなく、その、異性に抱く様な感情を抱いている訳で、そんな事をされると気が気じゃない…

「へいすけ〜お腹減った!!」

「ッ!?」

勘右衛門がいつもの様に、にこにこしながら、早く食堂に行こ!と抱き付いて来るから俺の心臓はバクバクと早鐘の様に脈打ち、余りの音の大きさに、この音が勘右衛門に聴こえてしまうんじゃないかとさえ思ってしまう程だ。

「勘ちゃん、いきなり飛び付いて来たら吃驚するだろ?」

「えへへへ、ごめんごめん」

勘右衛門はそういいながら、悪戯っ子の様にぺろっと舌を出して謝って来た。
そのちょっとした仕草にもドキリと心臓が跳ねる。

「(おちつけおちつけおちつけ、落ち着くんだ…平常心、平常心だ兵助)」

「ほら、行くよ!」

俺はギュッと勘右衛門に手を握られ、そのまま引きずられる様に食堂に向かった。
その間も俺は自分に言い聞かせる様に、平常心と落ち着けという言葉を繰り返す中、勘右衛門は鼻歌を歌いながら、いい天気だね〜とにこにこと話す姿に、やっぱり可愛いなぁ〜と食堂に行く道すがらしみじみと思った。

「あっ!今日のA定豆腐だって!」

「知ってる」

「さすが兵助!ばっちり調査済みか〜」

にこにこと話す勘右衛門が、兵助はA定食だよね?と聞いてくるので、こくりと頷き肯定する。
すると勘右衛門は、おばちゃんにA定食を二つ頼んだ後にくるりとこっちを見て一言、俺の豆腐兵助に上げるね!とにこっと告げてきたのに俺の心臓はキュンと跳ねた。
そんな俺の心境など知る由も無い勘右衛門は、おばちゃんから今日の晩ご飯を受け取ると、きょろきょろと空いている席を探して座り、二人でいただきますと手を合わせて食べ出した。

「あっ、兵助ご飯粒付いてる」

「え?」

勘右衛門は、ひょいと口元に付いていたであろう米粒を取り上げ、暫し見詰めた後に、パクッと食べた。

「かっかか勘ちゃんなにして!!?」

「ん?だって勿体ないし」

ことりと首を傾げながら、なんでそんなに焦っての?と不思議そうな目で可愛らしく聞いてくる勘右衛門に、もう俺の頭の中はパンクしそうだ。





そんな無邪気に触れないで


(天然たらしか…)
(お!ろ組も授業終わったんだ)
(おう!あ〜腹減ったー)
(あははは、で何がたらしなの?)
(こっちの話し…な?い組の秀才でヘタレな兵助君?)
(うっさいこっち見んな)
(もう、三郎だってヘタレのくせに茶化さないの)
(らっ雷蔵!私は決してヘタレでは!)
(はいはい…)




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