「取り敢えず、先生方に報告して、これからの事を相談した方が良いんじゃないか?」

兵助の言葉に、そうだなと答えて自分そっくりな彼に、ちょっと先生方に説明して来るからここに居てね?と不安げにこちらを見上げてくる彼の頭を撫でながら問えば、彼は小さくこくこくと頭を縦に振った。

「…勘右衛門いつまで撫でてんの?」

「え〜だって可愛いんだもん」

でれでれとだらしない顔で自分そっくりな彼の頭を撫でる友人に、はぁ…と溜め息を吐き、先に行くからとスタスタと歩き出した兵助に勘右衛門は慌てて立ち上がった。

「あっー待って兵ちゃん!それじゃあ行って来るから、勘はここで大人しくしててね?」

「勘?」

「そっ!名前一緒だから」

これからそう呼ぶね?とにこやかに笑う彼に、わかったと答え、それからいってらっしゃいと手を振る勘に勘右衛門はまた嬉しそうに手を振り、行ってきますと答え先に行った兵助の後を追った。

「はぁ〜、これからどうなるんだろ…」

自分はちゃんと元居た場所に戻れるだろうか?、ここから追い出されたりしないだろうか?、もし追い出されたらどこに行けばいいのだろか?、みんな心配してないかな?とこれからの日々に不安が募り、どうしようかと悩んでいると襖の向こうに見知った気配がした。

「勘右衛門入るぞ?今度の合同実習についてなんだが…」

「鉢屋っ!!」

「鉢屋?」

部屋に入って来た、自分の友人そっくりな人物に思わず声を上げてしまい、しまった!と心の中で毒突き、勘右衛門は自分から血の気が引くのを感じた。
目の前に居る彼、鉢屋三郎は訝しげに自分を観察する様に、じろじろと見詰めた後に先程より声のトーンを低くし、お前誰だ…と少し殺気を放ちながら問い掛けてきた。
勘右衛門は、どうしようどうしようと募る不安やら恐怖やらを抑える事が出来ず、自然と声が震えてしまうが、それでも何か喋らないと!と声を絞り出した。

「あの、その、おれっ!!」

「…あのさ、そんなに泣きそうな顔をされると物凄く罪悪感を感じるんだが」

「ご、ごめんっ!!」

三郎は目の前でびくびくと震え、瞬きすれば今にもその大きな瞳から滴が零れるんじゃないかと思う友人そっくりな彼の傍に近寄りその頭をポンポンと撫でた。

「あー、なんだ…私が悪かったから泣くな」

「ふぅ…ひっく……」

「あー、もう、だから泣くなって」

三郎は、自分の知る友人では有り得ないだろうその姿に、懐から手拭いを取り出し何だか幼子の様に脅える彼の涙を拭っていると、背筋にヒヤリと嫌なものを感じた。

「三郎なにやってんの?」

「か、勘右衛門!?こ、これには訳がっ!」

「ふ〜ん…」

自分を冷ややかに見下ろす友人の瞳に背筋を凍らす三郎とは裏腹に、勘右衛門はこの世界での唯一の頼りである人物が現れた事に安堵し、我慢していた涙が溢れ出た。

「…う゛っ、かんえも〜ん、っ…、ひっく……」

「あ〜よしよし、もう大丈夫だからな?悪い奴は俺が今すぐ三途の川に沈めてやるから、な?」

自分の横をすり抜けて、よしよしと泣いている目の前に居る友人そっくりな彼を勘右衛門は抱き締めながら何やら恐ろしい発言をした事に三郎は、えっ!?と顔を引きつらせた。






この世界での寄る辺


(覚悟は出来てんだろうな?)
(まっ、待て勘右衛門!
話せば分かる!!)
(問答無用ーっ!!!)
(ぎゃあああああああ!!!!!)





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