「今日って七夕だっけ?」
いつもの様に五人でごろごろと寛いでいる時に勘右衛門がぽつりと呟いた。
その問に雷蔵が、そういえばそうだね〜とお茶を啜りながら答え、兵助がもうそんな時期かと読んでいた本から目を離し答えた。
「ねぇねぇ、折角の七夕だし願い事書こうよ!」
「おっいいな!」
紙って何でも良いのかな?と盛り上がる勘右衛門と八左ヱ門を雷蔵は微笑ましく眺め、三郎はそんな二人を子供だとちゃかし、兵助はみんながやるなら自分もやると答えた。
そして五人は、わいわいがやがやと盛り上がり早速用意した紙に黙々と願い事を書き出した。
「出来たっ!!みんなは?」
「「「「バッチリ!」」」」
ねぇねぇ!見せ合いっこしよ!!と勘右衛門がうきうきしながら話すのに八左ヱ門がニカッと笑いながら、じゃあ俺からいくぞ?と書いた紙をみんなに見せた。
【 出番が増えますように!! 】
「うん…、普通過ぎて何もいえん」
「な、なんだよっ!!別にいいだろっ!!」
三郎の哀れんだ眼差しを受け八左ヱ門が少し顔を赤くしながら三郎に食いかかるが、三郎はそんな八左ヱ門をにやにやとした笑みで笑いながら受け流す。
端から見ても確実に八左ヱ門で遊んでいるなと思われる状況に勘右衛門が助け舟を出した。
「まぁまぁ、俺も八左ヱ門と願い事一緒だし」
「そうなのか?」
うん、と勘右衛門がにこにことしながら答え、自分が書いた願い事をみんなに見せた。
【 みんなの出番が増えますように! 】
「どこが一緒だっ!見ろ八左ヱ門、勘右衛門はお前と違って私達の事も考え“みんなの”と書いある辺りお前と違うな!!」
「へぇへぇ、ど〜せ俺は自分の事しか考えてませんよ〜だ」
拗ねてしまった八左ヱ門を勘右衛門は、まぁまぁと宥め、雷蔵はそんな三人を眺めながら、兵助は何て書いたの?と尋ねれば兵助は、これといいながら書いた紙を見せた。
【 豆腐と勘右衛門に挟まれてイきたい 】
「一人で逝けっ!!」
「一人でっていうと二人をおかずにして的な?」
違うわっ!!お前の変な妄想に勘右衛門を巻き込むなっていう意味だよ!!と三郎と八左ヱ門が二人して声を荒げ、雷蔵は勘右衛門を守る様に自身の後ろに隠した。
「なっなんだよ!?ちょっと正直に願い事を書いただけじゃないか!!」
「正直過ぎるわっ!!」
三郎と八左ヱ門の二人から責められ、兵助は少しムッとしながら、だったら三郎は何て書いたんだよと三郎に尋ねた。
すると三郎は、ふふんと自慢気に願い事を書いた紙を兵助に見せた。
【 雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵雷蔵 】
「とうとう呪詛にまで手を出したか…」
「呪詛とは失礼な奴だな?!」
私の願いはこんなうっすいかみ切れなんかに書くなんておこがましいぐらいに崇高なんだよ!と三郎が反論するのに、兵助は例えば?と三郎に尋ねてみた。
「雷蔵とにゃんにゃんしたいとか…」
「俺と対して変わらないだろ」
「豆腐しか頭にない奴と一緒にするなっ!」
「雷蔵しか頭にない奴にいわれたくない」
うぐぐぐっ…と唸る三郎と何やら勝ち誇った様な笑みを浮かべる兵助達に苦笑いしながら勘右衛門は、雷蔵は何て書いたの?と未だに自分を背に庇ったままの雷蔵に尋ねると、雷蔵は恥ずかしげに自分が書いた紙を勘右衛門といつの間にか隣に来て居た八左ヱ門に見せた。
【 三郎が僕と勘右衛門の前から今すぐに消え失せますように 】
「ある意味一番酷いな…」
「そう?」
にこにこと顔は笑っているのに何やら黒い物を感じる雷蔵に、八左ヱ門は少し冷や汗をかきながら引きつった笑みを浮かべた。
あなたの願い事は何ですか?
(ちょっ…雷蔵酷いっ!!)
(あっ俺もそれに変えよ)
(んじゃ俺も変えるか)
(お前ら酷すぎるっ!!勘右衛門は私の味方だよな!?)
(えっ!?おれ?)
(なにいってるの?勘右衛門は僕達の味方に決まってるでしょ)
(酷いっ!!)