さてさて、少しやる気を取り戻した八左ヱ門が家の外に出ると、そこには魔法使いの言葉通りに馬車が用意されていました。
「八左ヱ門遅いッ!!」
「なにやってんの勘ちゃんッ?!」
えっ？俺、馬車役！頑張って引くね〜と目の前に荷車と共に待機している勘右衛門が居ました。
にこにこと笑う勘右衛門に八左ヱ門は、頑張らないでッ！とまたもや涙が込み上げて来ました。
そんな八左ヱ門を気にするでもなく勘右衛門は荷台をバシバシと叩き、早く早くと八左ヱ門を急かし荷台に乗せると城に向かう為に走り出しました。
「疲れた…」
「うん、なんかごめん…」
美味いもんいっぱい持って来るからそれで許してくれ、と城に到着した途端にぐったりとへたり込んでしまった勘右衛門に八左ヱ門は許しを請いました。
勘右衛門はそれに、絶対だぞ〜と少し頬を膨らませながら答えました。
八左ヱ門はそんな勘右衛門の頭を撫でてから、お城の中に入って行きました。お城の中はとても華やかで、美味しそうな食べ物も沢山あったので八左ヱ門は早速、自分用と勘右衛門用にと何か持ち出せないかと食べ物を物色し始めました。そんな時、会場がざわざわと騒ぎがしくなりました。
どうやら、お城の王子様が現れた様です。
舞踏会に参加している人達は我先にと王子様に話し掛け、王子様に気に入られ様と必死です。
ですが、王子様は彼らには目もくれずキョロキョロと誰かを探している様です。
八左ヱ門がそんな王子様を眺めていると、王子様と目が合いました。
すると、王子様はズカズカと八左ヱ門の方に向かって来ました。
「何で八左ヱ門がシンデレラ役なんだよ、勘ちゃんを出せ！」
「兵助苦しいッ!!おおっ、お落ち着け！話せば分かるッ!!」
どうやら王子様はお目当てのお姫様が見当たらない事にお怒りの様です。
八左ヱ門の胸倉を掴み上げ詰め寄ります。
そんな王子様に八左ヱ門は、たじたじです。
どうにか王子様を落ち着かせようと必死に辺りをキョロキョロと確認しテーブルの上に王子様の大好物である豆腐が入ったサラダを見つけました。
それを王子様の目の前に差し出し、この場を何とかやり過ごせないかと必死です。
差し出されたサラダを見て、王子様は一瞬キョトンとしましたが、直ぐにサラダを受け取り食べ始めました。
「で、何で八左ヱ門がここに居るんだよ？俺はてっきり勘ちゃんが来るものだと思ってこの役を引き受けたのに」
「あぁ〜、えっと〜、勘右衛門はだな〜？その〜、何かの手違いで馬車役だった…」
はっ？と王子様が間の抜けた声を発し、八左ヱ門にもう一度いってくれと頼みました。
それに、八左ヱ門はもうやけくそだッ！といわんばかりに、勘右衛門は馬車役なのッ！と声を荒げました。
その言葉に王子様は開いた口が塞がらず、大きく目を見開きパチパチと瞬きを繰り返した後にプルプルと震え出しました。
「それじゃあ何か？その話が本当なら八左ヱ門、お前は勘ちゃんの上に乗ったって事か!?」
「誤解を招く様な言い方するなッ!!」
事実だろッ！と王子様は八左ヱ門に怒り心頭の様です。おおおっと！ここで王子対シンデレラのバトル勃発かぁ!?
ちょっ！ちょっと三郎邪魔しないでよ〜！
まぁまぁ良いじゃないか！私の役はとっくの昔に終わって暇なんだ、それに此処はこの劇の一番の盛り上がり所だろ？
なら！この学級委員長委員会委員長代理である私が盛り上げなくて誰が盛り上げるというのだッ！ささっ雷蔵は喋るのに疲れただろう？ゆっくり休んでくれ！
ふぅ…。さて兵助と八左ヱ門はっと、おおっと何やら王子がシンデレラに服を脱ぐ様に迫っている！これはまさかのくく竹フラグか!?
「さっさと脱げッ！勘ちゃんが馬車役なら俺がシンデレラをやる!!それで二人結婚してハッピーエンドだ!!」
「意味分かんねぇしッ!!」
おっと残念！くく竹フラグは消え失せました!!
ライバルが減るチャンスだと思ったんですが、ほんとーに残念だ…。誠に残念だ！全くもって残念だッ!!
三郎？ちゃんとやろうね？
はいッ！では気を取り直して行きたいと思います!!
どうやら王子はシンデレラの服を脱がす事に成功した模様です。
身ぐるみを全て剥がされたシンデレラが余りの惨めさに泣いております！
ざまぁみろ！八左ヱ門の分際で私より出番があるからそうなるのだ！
おっと…王子がこれまでにないくらいの気持ち悪い笑顔で城の外に駆け出しました！
「勘ちゃ〜ん!!」
「あれ？兵助？？」
勘ちゃん、一瞬に幸せになろうね…。
ぎゅっと勘右衛門の手を握り締め王子が愛の告白をした模様。
だがそんな王子の言葉に勘右衛門は頭に疑問符が浮かぶばかりだッ！
三郎嬉しそうだね？
あぁ！嬉しいとも!!八左ヱ門も兵助も惨めに終われば良いさッ!!
はぁ〜気分爽快！あっ、雷蔵！これから勘右衛門と三人で町に何か食べに行かないか？
ん？いいよ〜僕もお腹減っちゃた！
灰かぶり姫
(あれ？これで終わり？)
(というかシンデレラって
こんな話だったか？)
(だいたいこんな感じじゃない？)
(ぜってー違うと思う…)
(そっかな〜あっ、ねぇねぇ留さんそれより僕たちもご飯食べに行かない？)
(そうだな…)