むかしむかしある所に、それはそれは太陽の様に元気いっぱいな女の子がいました。
女の子の家族は仲睦まじくしく暮らして居ましたがある日、女の子の母親が病に倒れこの世を去ってしまいました。
悲しみにくれた父親はその穴を埋める様に新しい女性と再婚しました。
そして新たな幸せを手に入れた父親とは正反対に女の子にとっては地獄のような日々が始まったのです。
それは女の子の父親が留守の間、継母とその連れ子である姉二人から苛めにあっていたからです。
父親はそれに気付かず今日も出稼ぎに出掛けて行きました。
「竹谷、朝食はまだか?」
「立花先輩、もう昼です…」
私に口答えするな!それと、私の事はお母様と呼べッ!!と今日も八左ヱ門は継母からの苛めに耐える日々です。
そこに姉二人も現れました。
「いけいけどんどーん!竹谷、今から私と一緒にバレーしよう!!」
「八左ヱ門、暇だったから毒虫逃がしておいたぞ!私ってばやっさし〜」
七松先輩、今は芝居中なのでバレーはまた今度誘って下さい。三郎はとりあえず殴らせろ…
と八左ヱ門の気苦労は絶えず今日も八左ヱ門の毛根は死滅して行くのです…
合掌。
「雷蔵そのナレーション何だよ!?」
「だってそう書いてあるんだもん」
このあらすじ書いたの誰だよ!?
と嘆く八左ヱ門を当然の如くスルーして継母こと仙蔵お母様が、そんな事より今晩城で舞踏会が開かれるらしいな?とニヤリと笑みを浮かべました。
何か企んでいるとしか思えません。
そして八左ヱ門に、今晩舞踏会に出かけるので、それまでに衣装を仕入れておくようにと言い付けました。
八左ヱ門は急な事に焦りながらも、用意して置かないと自分がどんな目に合うのかと考えるだけで恐ろしくなり、急いで衣装調達に出掛けました。
「頼む、きり丸!今晩の舞踏会までに三人分の衣装を用意してくれッ!!」
「急にそんな事いわれましても…」
金はお前の言い値でいい!
毎度あり!!
これで衣装の準備は大丈夫だと八左ヱ門は家に帰り掃除や洗濯に取り掛かる事にしました。
そして日が沈み、舞踏会用にと仕入れた真新しい衣装に身を包んだ継母と姉二人は楽しそうに馬車に乗り城に向かいました。
「くそ〜!俺も舞踏会に行ければ美味いもんいっぱい食えるのになぁ〜」
「だったら君も行くかい?」
舞踏会に行った三人を羨ましがる八左ヱ門の前に全身傷だらけの自称魔法使いが現れました。
八左ヱ門は魔法使いを見た瞬間、居た堪れない気持ちになり魔法使いがどこから現れたのか、どうして傷だらけなのか、と聞きたい事が山ほどありましたが、心優しい八左ヱ門は傷の手当てを優先的にして上げる事にしました。
「いや〜すまないね〜」
「別に良いッスよ…」
八左ヱ門が傷の手当てをして上げると、魔法使いは手当てをしてくれたお礼に八左ヱ門を舞踏会に行かせてくれると言いました。
八左ヱ門は、ほんとにそんな事が出来るのかと半信半疑でしたが、魔法使いが何やら呪文を唱えると八左ヱ門が着ていた継ぎ接ぎだらけの服がそれはそれは可愛らしいフリフリドレスに変わっていました。
「…………。」
「それ留さんに頼んで作って貰ったんだ〜」
良く似合ってるよ〜と話す魔法使いとは裏腹に八左ヱ門は顔をひきつらせて、もうこの役ヤだ!と泣き出してしまいました。
ですが、そんな八左ヱ門を気にするでもなく魔法使いは、馬車は家の外にもう用意してあるから!とポンッと肩を叩き、にこにこと告げました。
「あっ!それと魔法の効果は12時までだから気を付けるんだよ?じゃあね〜」
「なんで俺がこんな目に…」
頑張れ八左ヱ門!君の苦労はまだまだ始まったばかりだッ!!