私には常日頃から毎日欠かさず日課にしている事がある。
それは変装道具の手入れでもなく、よい子のは組を驚かして遊ぶ事でもない。
それは五年い組の尾浜勘右衛門にある事をするのが最近の日課であり、楽しみでもある。

「ひゃぁ?!」

「後ろががら空きだぞ!」

鉢屋またお前かッ!と勘右衛門は尻を押さえて威嚇してくる。
勘右衛門の威嚇など私にとっては子猫が逆毛を立てて威嚇しているような物で可愛いものだ。
そんな勘右衛門を見て私はケラケラと笑い、五年にもなって後ろを取られる勘右衛門が悪いと答えその場からそそくさと退散した。

「お前さぁ〜勘右衛門を苛めるのも程ほどにしろよ?」

「なにをいう。苛める所か、これでもかという程可愛がってるじゃないか」

俺にはお前の愛情表現が分からんと八左ヱ門にいわれ、私はそんなに分かりづらいか?と聞けば、あれは嫌がらせにしか見えないといわれた。
そんなに私の愛情表現は伝わりにくい物だろうか…?

「てか何で勘右衛門の尻を触るのがお前の日課な訳?」

「目の前に好みの尻が合ったら触るのは当然だろうッ!!」

あと反応が良い!と私が力説したのに対して八左ヱ門は哀れむような蔑んだような目で見て来る。
そんな目で私を見るな八左ヱ門、お前とて好みの尻が目の前に有れば触りたいと思うだろうと問えば、まぁ〜尻は別として触りたいと思うけどお前のやり方は世間一般的に間違ってると思うぞ?といわれた。

「雷蔵…私の何がいけないと思う?」

「えっ?全部?」

いつもの迷い癖はどこへやら、迷わず答える雷蔵の言葉にピシッと音がする様に固まってしまった私に雷蔵は、冗談だよ〜冗談。とりあえず八左ヱ門のいってる事は正しいと僕も思うよ、とにこっといわれ多少凹んだがこんな事で折れる私では無い!
こうなれば勘右衛門に直に聞くに限る!!「そんな訳で、今すぐ勘右衛門をこちらに渡して貰おうッ!」

「断るッ!!」

パァンッという音と伴に襖を閉められた。
チッ…豆腐小僧風情が私の邪魔をするとは良い度胸だ。
こうなれば手段は一つしかない…

それは辺りが寝静まった丑三つ時、私は兵助と勘右衛門の部屋に忍び込み兵助に気付かれないように勘右衛門を担いで外に出た。

「勘右衛門起きろ」

「うぅ〜ん…」

ぺちぺちと勘右衛門の頬を叩けば、んっ‥なに〜?と寝ぼけ眼に目を擦りながら勘右衛門が目を醒ました。
勘右衛門は何が何だか分からないという顔で目をパチパチさせて、えっ?えっ?なに!?ここどこ!?兵助は?!と寝る前と状況が違う事に混乱している。
まぁ、当然といえば当然だが勘右衛門の口から自分の名前より同室者である豆腐小僧の名前が先に出た事に多少ムッとしながらも、混乱して挙動不審な勘右衛門の肩をガシッと掴み、私は真剣な顔で勘右衛門に自分の行いについてどう思っているのかを問い質して見た。

「で、勘右衛門は嫌なのか?」

「嫌っていうかいきなり後ろからやられるのはちょっと」

心臓に悪いし、とぶつぶつ呟く勘右衛門に、それじゃあ触らせてくれといえば良いんだな!?と問えば、何でそうなるんだよ!だいたい触らせてくれっていわれて触らせる奴なんていないよ!!と少し頬を染めながらいわれた。
ちくしょー可愛い奴め、と内心思いながらもどっちにしろ嫌なんじゃないかとうなだれた。

「えっと…、よく分かんないんだけど明日早いから俺もう行くね?」

「…………。」




彼曰わく、「挨拶」だそうで


(待て勘右衛門ッ!!)
(なっ…なに?!)
(私はこれからも今まで通り勘右衛門の尻を触る事を止めんぞッ!!)
(なんでッ!?)
(それが私であり、朝の挨拶代わりだからだッ!!)
(だったら始めっから聞くな!
この変態ッ!!)



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