誰か俺の平穏な日常を返してくれ…


その日もいつも通り生物委員会で飼育している毒虫が脱走して、学園中を走り回っている時だった。私服姿の三郎と兵助が血相を変えて走って来たのだ。二人は大変だ!やら、緊急事態だ!やらと二人して俺をガクガクと揺らしてくる。俺は二人に思いっ切り揺さぶられ気分が悪くなりながらも二人を落ち着かせ、なにが大変なんだと聞けば二人して勘右衛門が!やら、雷蔵が!やらと、わたわたし出した。
俺は二人に何かあったのかと思い、二人がどうかしたのかと再度聞けば三郎と兵助は俺に、お前も今すぐ着替えてとりあえず付いて来い!と言い出した。この時に気付くべきだったんだ。気付いていればこんな事にならなかったのに!俺の馬鹿!!

「二人は甘味屋に入ったみたいだな」

「ああ…俺達も行くぞ、竹谷お前も早く来い」

二人がいう緊急事態とは勘右衛門と雷蔵が二人で町に出掛ける事だった。冷静に考えれば分かった事じゃないか…
いつも冷静沈着な兵助がそうじゃなくなる時といったら、豆腐がらみか或いは勘右衛門の事しかないし、三郎が興味を持ち尚且つこいつが焦る事といったら雷蔵の事しかない。
しかし何でこいつらは隠れるように二人を尾行してるんだ?雷蔵と勘右衛門の事だ、自分達も一緒に町に行きたいといえば快く承諾してくれるはずだ。疑問に思った俺は二人に尋ねてみた。そうすれば、三郎と兵助曰わく二人は以前から一緒に町に出掛ける約束をしていたらしく、そんな二人の邪魔をしたくないので二人が仲良く買い物している所を温かく見守る為だというのと、もう一つは二人がもし悪い虫にでも絡まれたりしたら大変だからこうして見張ってるんだとの事。
とりあえず、犯罪の一歩手前を行く友人達にいろいろ突っ込みたい所だが、二人に突っ込めばあの二人がどれだけ可愛いのかお前には分からんのか!?と惚気話を永遠にされるのは目に見えているので心の中で突っ込んでおく。
そして二人を追って甘味屋に入った俺達は二人がぎりぎり見える位置の席に座った。尾行されてるとも知らずに勘右衛門と雷蔵は、楽しそうに注文した品をもぐもぐと食べながら話している。そして、俺の目の前にはそんな二人を見て興奮気味の馬鹿二人…
たまに店員が怪しげに此方を見てくるので俺は早くこの場から立ち去りたい気持ちでいっぱいだ。
俺は溜め息を吐きながら注文した甘味でも食べようかと思ったら、目の前の二人が今までに無いくらい興奮したかと思えば今度は大声を上げて叫び出したので、店員が凄い形相で睨んでくるのに焦った俺は二人にお前らちょっと静かにしろ!と注意すれば、何故か顔面に激痛とひんやりとした感触が俺の顔面を覆った。

「「ばっか?!大声を出すなバレるだろが!静かにしろ!!」」

その瞬間、静かにするのはお前らだ!とか、今すぐ俺の頭の上にあるその手を退けろ!とか、お前らのせいで注文した蜜豆が台無しだ!とか、いろんな事が頭の中を巡り今すぐにでもこの馬鹿共に思いっ切り叫んでやりたい気持ちでいっぱいだが、ここは我慢だ…我慢だ八左ヱ門!と自分に言い聞かせる。
そんな俺の心情等知るよしもない二人は、見たか今の!?二人で食べさせ合いっこして可愛いな!等と息遣い荒く話していたかと思いきや、ヤバい早く追うぞ!と、わたわたし出した。どうやら甘味を食べ終わった勘右衛門と雷蔵は会計を済ませて店を出て行ったらしく、後を追うように三郎と兵助も慌てて席を立ち店を出て行った。
えっ、ちょっと待て!?俺らまだ会計済ませてない…よな‥。
もしかしてあいつらの分まで俺が支払うのか!?




竹谷の災難


(遅いぞ竹谷!)
(見失ったらどうするんだ!)
(お前ら俺になんの恨みがあるんだ!!)





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