勘ちゃんが誰にでも優しくて慕われるのは分かるけど、恋人は俺なんだよ…
だから、俺と二人っきりの時に俺じゃない誰かの話をするのは止めてよ。

「それでね、その時の八左ヱ門がまた可笑しくって」

今日は委員会もなくて、せっかく勘ちゃんと二人っきりでのんびりお茶したり二人で勉強が出来ると思ったのに、確かに今のんびりとお茶しながら勘ちゃんと縁側で喋ってるけど…

「兵助、聞いてる?」

「あ?あぁ…聞いてる聞いてる」

「嘘だ…だって兵助さっきから凄く上の空だし、なんか機嫌悪くない?」

勘右衛門は稀に勘が鋭い時がある。
それは大抵、相手の機嫌が悪い時や落ち込んでいる時で、そっと傍に居てくれる事が多い。
この間それが俺だけじゃなくて学園の生徒、上級生や下級生関係なくみんなにやっている事だと知って、やっぱり勘右衛門は優しくて良い奴だと思ったと同時に他の奴に其処までしなくていいんじゃないか、と少しの苛立ちを覚えた。

勘右衛門は物じゃない。
自分の考えで行動する生きた人間だ…
だからずっと自分の傍を離れないように括り付けて置く事なんて出来ないのは分かってる。
でも、自分の知らない場所で知らない奴と勘右衛門が一緒にいて勘右衛門がソイツに笑いかけているのかと思うと、どこの誰かも分からない忍たまに嫉妬した。

「ごめんね…」

「えっ?」

「兵助ってあんまり怒る事とかないし、さっきまで普通だったから俺が何かしたんでしょ?だからごめんね」

心の中を読まれたのかと思った。
自分でいうのも何だが、俺は感情を表に出すのが苦手で周りの奴らからは何を考えているのか分からない等といわれるが、勘右衛門にはどうやら分かってしまうみたいだ。

「兵助?」

黙り込んでしまった俺に勘右衛門はやはり自分が何か怒らせたのかと不安げな顔を此方に向けて来る。

(勘右衛門は悪くない。)
(俺の心が狭いのが悪いんだ。)

そう伝えれればどんなにいいか…
こんな簡単な一言も出て来ないなんてみっともない。
でも、やっぱり恋仲の相手が別の男と一緒にいる所を考えると、それが例え友人の雷蔵や三郎そして八左ヱ門だとしても嫉妬の炎を抑える事が出来ない。
心の狭い自分に苛立ちを覚え始めた時、ふわりと暖かい物が俺を包んだ。

「かっ、勘右衛門!?」

「俺も兵助と一緒だからね?」

俺が驚いて何が、と尋ねると勘右衛門は自分も周りの人間に嫉妬してる、と可愛く下を出しながら答えた。
俺はその言葉に嬉しくなって、離れていこうとする勘右衛門をもう一度引き寄せ重ねるだけの軽い接吻をした。

「…んっ」

勘右衛門は赤くなった自分を見られるのが恥ずかしいのか、ギュッと抱き付いて俺の胸に顔を埋めて来た。
耳まで赤くなってる勘右衛門が愛おしくて可愛くて大事にしたいと今更ながら思えた。
そして、勘右衛門のお陰で段々と嫉妬の炎が薄れていく。
だってこんな可愛い勘右衛門を知ってるのは俺だけだと断言出来るから…




唇は君を感じるため


(勘ちゃんもう一回してもいい?)
(い、いいよっ…)




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