ひらひら、ひらひら。
純白が風に翻って踊る。
「スモーカーさん!」
純白を風にはためかせ、俺を見つけるとナマエは一目散に駆け寄ってきた。海軍の制服とはまた違う白が陽の光を受けて眩しい。
「意外と似合うな。馬子にも衣装ってやつか」
「褒めてるようで貶してますか?」
「精一杯の褒め言葉だ」
ひどい、と言いながらもナマエは楽しそうにけらけら笑う。幸せそうに微笑むナマエに、純白のウェディングドレスはよく似合っていた。
「しかしお前が結婚するとはな」
「自分でも驚きです!」
「物好きな男がいて良かったな」
「スモーカーさん今日は褒めると見せかけて貶す日ですか?」
はは、と乾いた笑い声が漏れる。ナマエは一瞬膨れてみせたが、すぐにまた笑みを戻した。それと同時にノックの音がして、式場のスタッフが顔を覗かせる。
「そろそろお時間なので準備の方をお願いします」
「あっはい!スモーカーさん行きましょう」
「あぁ」
葉巻を消して俺はナマエの後に続く。外は快晴で、馬鹿みたいに結婚式日和だった。
「花嫁の方はこちらでお待ちください」
スタッフに言われナマエはドアの前で立ち止まる。振り返り、小声で俺に耳打ちをする。
「スモーカーさん挨拶お願いしますね」
「あぁ」
頷き、俺はナマエとは別の方向に歩を進めていった。
「仲人さんはお席でお待ちください」
そう言い残しスタッフが立ち去る。本当に馬鹿みてえだ。好きな女の結婚式で、仲人をするなんて。
「…バカ野郎が」
幸せになれよ、なんて意地でも言ってやらねえ。
腐った恋路
万が一不幸になったら戻ってこいバカ。