「友梨!!おそいわよ。」



部屋には静音と櫻野がいた。
静音はドレス、櫻野はお洒落なスーツを着ていた。


「どうしたの、二人ともそんなお洒落して。」


「全く、サプライズパーティーになるはずだったのに、校長が言っちゃうから。」


そうだったんだ…。
思わず涙が溢れる。


「あー泣かない泣かない。これから友梨もお化粧するんだから。」


「うー。」


「うーじゃないわよ。ほら、こっち来て。」


静音は手際良く、私の顔にいろいろ塗ったり、アイラインをひいたりとしてくれた。


「はい、完成。」


「わー。ねえ、鏡見たい!!」


「ダメよ。それより、これつけといて。」


「なに、これ。周り何にも見えないよ?」


「そりゃそうよ、目隠しだもの。」


「ええなんで!!」


「さ、髪の毛もやるから、櫻野くん、手伝って。」


「あ、うん。」


「お二人とも、無視ですか。」


「友梨。これからバタバタしていて、言う機会ないかもしれないから、今言うけど、友梨がどんな答えを出しても、私はずっとあなたの親友よ。私たちが卒業したら、必ず、友梨のこと探し出して、会いに行くわ。だから、そのときまでに、胸大きくなっておきなさいよ。」


どんな答えを出してもってなんだろう。


「ていうか、途中までいい話だったのに、ひどいよ静音!!」


「思ったことを言ったまでよ。こんな小さくてよく校長も満足するわね。」


「校長はそんなこと気にしないもん!!!」


「君たち、僕がいること忘れてない??」


「あ、忘れてた。てか、目隠ししてるから見えないし。」


「いいのよ、どうせこの人女の子みたいなもんじゃない。というより、女の子よね。」


「山之内…。僕にそんなこと言ってもいいのかな??」


うわー!!目隠ししてても
櫻野の黒いオーラを感じるよ!!


静音を殺さないでーって言おうとしたら、
誰かが、コンコンとドアを叩いた。


「入るよー。お、友梨ちゃん可愛い!」


「あ、その声は鳴海先生だー!!ってえ、私の顔見えるの?」


「その目隠し、今井さんの作品で、着けてる人は何も見えないけど、他の人は目隠し自体見えてないからね。」


「蛍ちゃん凄すぎ!!」


「今更よ。さあ、髪の毛も出来たわ。」


「ありがとう!静音!」


「あ、それから、その目隠し自分では取ろうとしても取れないらしいわ。」


「さすが、俺の妹だな。」


「おー!シスコンとくれば、今井ね?」


「誰がシスコンだ。ほら、靴持ってきたぞ。」


「そうそう、友梨ちゃん。ドレスも持ってきたよ。」


「よし、じゃあ、ちゃっちゃと着せちゃいましょう。」



ということでどんなものかも分からないドレスを着た。


「うん、ピッタリだね。さすが校長よく分かってるね友梨のこと。」


「本当ね。うん、綺麗よ、友梨。」


「さあ、行くよ、お嬢様。」


「えー。櫻野キャラおかしいよ!!」


というと、頭を撫でられた。


「友梨が可愛いからご褒美。」


え、今日みんなおかしいよ!
ちゃんと女の子扱いされてる気がする。


そっか。
やっぱり最後、だからか。


なんて考えながら、櫻野と今井に支えられながら、
何処かに向かって歩いていた。


「着いたぞ、友梨。」


「あれ、今井ここどこ?」


「ここは、パーティー会場だ。ちなみに、会場に入るとその目隠し取れるようになってるらしい。」


「そっか、分かった。」


「じゃあ、入るぞ。」


ガチャッ






え……………………………………。



なにここ。




絨毯が真ん中にまっすぐひいてあって、
左右には友達や、後輩や、先生たち。

そして、前には、行平校長。



「ここって、もしかして…」


「結婚式場だ。さあ、腕を組んで。」




なかなか頭がついていかない。


ってことは今歩いているのは、バージンロード。ってことは!!!


「今井、私のお父さんだったの???」


というと、どっと笑いが起こった。
どうたら、ドレスにマイクがついているようだ。


「お父さんの代わりだ。今日だけだからな。て言うか、同い年だろうが!!!」


って真面目に答える今井に
また、会場はどっと笑いに包まれた。




「友梨綺麗よ!」
「おめでとう友梨先輩!!」
「素敵よ〜〜!!!」


みんな…。
ありがとう。



そして、行平校長の前まで来た。
今井は腕をそっと離すと、静音の隣に並んだ。


会場は静かになる。


「友梨。急にこんなことをして、すまない。」


「校長…。」


「ここまでしたら、ずるいと思われるかもしれない。でも、答えを出してくれ。周りのことは気にしないで、自分の意思で。」



そっか、さっき静音が言ってたのは、このことか。
どんな答えを出しても。

ここで校長と結婚して、妻としてここに残るか。
それとも、この学園のことは忘れて、両親と住むか。



「友梨。もし、イエスなら、これを受け取って、もし、ノーなら受け取らないでくれ。」



「校長…。」





「川崎友梨さん。私と結婚してください。」


と言って、指輪の箱をこちらに差し出した。


まあなんとも高そうな指輪。




今までのことを思い出してみた。
そしたら、まあ、なんて校長の顔しか出てこないことか。
それに、私を笑顔にするのも、幸せにするのも行平校長しかいないんだ。
今までも、これからも。




「はい、喜んで。こちらこそ、よろしくお願いします。」


校長は、顔をバッと上げて驚いた顔をしたけれど、
そのあと笑顔になった。


キャー!!やったぞー!!
みんなが歓声を上げる。
泣いている人もいる。



すると、突然牧師櫻野が出てきた。


「それでは、行平一己さん。あなたは、この女性川崎友梨を妻とし、どんな困難なことが起こっても、これを支え、助け、守り、また、敬い、一生愛し続け、この学園と同じくらいに大切に思うことを誓いますか?」


「はい、誓います。」


「それでは、川崎友梨さん。あなたは、この男性行平一己を夫とし、どんな困難なことが起こっても、これを支え、助け、時には癒しを与え、また、敬い、一生愛し続け、あなた自身は純アリスとして、これと共にこの学園を支えていくことを誓いますか?」


「はい、誓います。」


「それでは、誓いのキスを。」



校長がこっちに向き直る。


いつの間にか、つけられていたベールをはがし、
そっと私の頬を包んで、キスをした。


人前だったから、短いキスでも恥ずかしく、
顔が真っ赤になった。


「照れ屋だな、友梨は。」


「だって恥ずかしいもん。でも、それ以上に幸せ。」




これで、私は明日からも、いいや、一生
ここから出なくて済む。
校長と離れなくて済む。



みんな、ありがとう。こんな素晴らしい結婚式。
本当に本当に感謝しています。


その後は、披露宴で、
演奏したり、ダンスしたり、
先生達のメッセージを聞いたりと、幸せな時間を過ごした。



やっぱり私の居場所は、ここしかない。




やっぱり私はあなたじゃなきゃダメなんだ。
あなたが涙を拭ってくれるから泣き止む。
あなたが抱きしめてくれるから、幸せな気持ちになれるんだ。


あなたの温もりがなくちゃ、生きていけないんだ。




Fin

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