act 3
翌朝、目が覚めると、それは、いつも通りの朝で。
日の光が、まぶしく、なんとなく、小鳥のさえずりが聞こえてきて、重い瞼を、ゆっくりとあけた。
そして、なんとなく、そこに、目をやると、ありえない事に気づいてしまった。
「これは、どう言うこってィ」
別にたいして何が変わっている訳でもない。
自身の体が漠然と成長しているわけでも、御伽噺の様に、子供に戻ったわけでも。
ただ、そのカレンダーだけは、違っていた。
思い出してみろ。確か昨日……。
昨夜は、神楽に会ったはず。彼女の自宅の万事屋に行って……。
一瞬、彼の脳裏に、神楽の泣き顔がフラッシュバックした。
あれが、あの神楽だろうか、そう思うほど、沖田の頭に、焼き付いている。
沖田は、もう一度、そのカレンダーにと視線をやった。
やはりおかしい。あるはずのない数字がそこには、記載されていた。
「総ちゃん」
左方から、呼びかけられた言葉に、視線をむけると、そこには、沖田の事を彼女だけがそうよぶ、姉のミツバがいた。
けれど、そこでもまた、沖田は違和感を感じた。
「姉さん、髪が、伸びやしたかィ」
沖田の言葉に、そこに居るミツバは、ふわりと笑みを見せた。
「総ちゃんが、伸ばして欲しいって言うから、伸ばしてるんじゃない」
一体、いつそんな事を?
姉のミツバが、嘘をついているようには、到底思えないが、まったくもって、彼女にそんな事を言った覚えもない。
大体にして、こんな短期間で、なぜ彼女の髪は、伸びているのだろうか?
そう、まるで、一年ほど……。
「姉さん、一体、今日は……」
なぜ、こんな質問を彼女にしているのか、一番聞きたいのは、沖田だった。
でも、聞かずにはいられなかった。
「何言ってるの、今日は……」
カンカンカンカンカンカン……っ。
甲高い、足音を鳴らしながら、駆け上がるは、万事屋の階段。そして、まもなく到達するは、そのガラガラとなる……。
沖田のひとさし指は、信じられないと思わず、その文字をなぞった。
「嘘だろィ」
呼吸は、激しく、動機がする。
汗は体からふきだして、まとわりつく。
ガラガラガラガラ……。
「沖田さん、おはようございます」
いつもと、なんら変わりがない。新八が玄関の戸を、開けた瞬間だった。
いや、違う。違っていた。
朝からのカレンダー。姉のミツバの言葉。この表玄関に、貼り付けている紙。そして、目の前の新八の姿。
「今、神楽ちゃんも、準備している所なんですよ」
その笑顔に、仕掛けられている罠があるとは、到底思えない。
今、目の前にたっている新八の笑顔は、まがいもないものだった。
「神楽ちゃんの、ウエディングドレス、見てみます? とっても綺麗ですよ」
とっても綺麗?
今しがた、新八から出た言葉が、一体、何の事だか沖田には分からない。
玄関口で立ち尽くしている沖田の視界に、ふわりと揺れる物が見えた。それはとても綺麗で美しく、軽やかで眩しい。
(チャイナ)
思わず、沖田の口からでそうになった神楽の名前。
純白のウエディングドレスを身にまとい、柔らかな桃色の髪を、ふわりふわりとなびかせて。
沖田の脳裏に、ミツバの言葉がフラッシュバックした。
「神楽ちゃん、結婚するのよ」
……To Be Continued…
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