act 1

「沖田さん」

そう、何度呼ばれただろうか?
あの一日。

朝、早くもなく、沖田に待っていたのは、ありえない程のチョコレートの数。
思えばそれは、前日からだった気がする。
街を歩き始めると、背中に声をかけられ、立ち止まると、両手で、大切そうにかかえていたそれを沖田の胸へとつきつけた。

それが、世の中での、バレンタインデーだと、彼が気づいたのは、まもなくの事。

二月、十四日。それがバレンタインデーだと思ってはいたが、まさかその前日から、チョコレートが殺到するとは、思いもしなかった。当たり前だが、催促などするはずもなく、別に、欲しくもなく。
けれど、そんな沖田の意思とはうらはらに、巡察を終えた頃には、両手いっぱいの、屯所には、届けられたチョコレートの山が目に入った。

別に欲しくもないけれど、自分の姉であるミツバが、そういえば、一週間前ほどから、何度も買い物にいくそぶりを見せていた。思い出したくもないが、相手の名前は想像がつく。
けれど、そんな姉の表情が、何時にもまして、やわらかく、そして幸せそうだったのが印象的だった。

そんな幸せなものなのか、そんな風に思っていた彼に、思いもがけない人物から、バレンタインデー当日に、贈り物をもらったのだった。



「これは、お礼アル」

よもや、世も末か、彼は、本気でそんな事を思った。
それも、仕方のあるまい事。なんせ、相手は、あの万時屋の神楽ときたもんだ。
なにが、どうあって、そして巡りあって、彼女から、チョコレートを貰ったのか、彼は信じられずにいた。
よくよく、考えてみて、毒いりチョコレートだと、本気で思った。

だから、神楽から貰ったチョコレートの表向きの可愛らしいラッピングに、騙されるな、騙されるものかと、そのままにしておいた。
そして、まもなく、そんな彼女からのチョコレートの存在など忘れてしまって、早、一け月。

俗に言う、ホワイトバレンタインデーが、今日だと、沖田は気づいたのだった。





「さすがに、まずかったですかねィ」

彼は、今更になって、後悔の念に、押されていた。

なぜなら、彼は、知ってしまったから。
おそらく、そのチョコレートと一緒に同封された封筒があった事。そして、そこには、自分との、待ち合わせ場所と時間が書かれていたであっただろうと、言うこと。

その場所で、彼女は、その日、一日、待っていたであったということ。




きっかけは、あの人からの一言だった。




……To Be Continued…

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