act 52

大事な話があるって……言ってたのに……。
思う神楽のほんのすぐ横には、沖田が座っている。
二人してベットにもたれて、肩がくっついちゃって、ドキドキして、胸の音が病まない。

でも、沖田は前を向いたまま、テレビをみて、何も言うそぶりはない。

(一体何だったアルカ?)
さっきから、そればかり考えている神楽の耳には、テレビの音なんて、まったく入ってなく。
でも、なんか聞いちゃいけない気がする。
そう思った神楽は、沖田が切り出した話の続きを、聞きだそうとはしなかった。

(そういえば、こうして部屋で二人きりなんて、本当に久しぶりアル)
神楽と沖田の周りには、気がつけばいつだって、誰かがいる。
それだけ友人に恵まれているんだろうけど、だからこそ、こんな時は気持ちが落ち着かなくなっちゃって……。



「な、何か飲むアルか?」
言った自分が、ほんの十分前、同じ台詞をはき、飲み物を持ってきたのを思い出した。

(だって……なんだか落ち着かないアル)

いつだって、沖田は、自分よりも落ち着いていて、何事にも動じない。
ささいな事で、沖田のしぐさひとつ、ひとつに、よくも悪くもふりまわされるのは、自分……。

神楽の肩に、ふわりと沖田の腕が置かれた。

(わっ……ど、どうしたアル、こいつ)
普段は、なかなか見せない沖田からの甘やかせに、神楽の体は一気に緊張の色をみせた。
自分の小さな背中は、学生の時より成長したはずなのに、それにともなって、沖田はもっと成長を魅せた。
だから彼の腕に、神楽の体は、丁度いいぐらいに落ち着いた。

いつ、からだっただろう。
こんな風に、自然に甘やかせてくれる様になったのは。
喧嘩友達、……からはじまったような関係が、触れると壊れそうな危うさに触れ、甘くも交わったのは。

歳を、重ねるごとに、沖田にたいする気持ちは、あふれてくる。
色んな部分に触れ、それさえも愛おしく思えて。
甘い愛しさもあれば、泣けてくる切なさと言う感情があると知ったのは―――――。


(私には、こいつしか、いないアル)

何度喧嘩したか分からない。そのたび、息ができないほど苦しさを交えた切なさがあると、学んだ。
愛してくれるぶん、愛するという大切さがあると知った。
学校で、学べない事、それを、知らず知らずのうちに、彼は教えてくれた。




「どうしたんでィ?」

ふわりと沖田の声が神楽にかかった。
彼の右手は、そっと神楽の頬に触れる。
やっと、自分が泣いている事に気づいた。

ううん……違う……違う……。

悲しくて泣いてるんじゃない。
これは……これは……。



「神楽」


沖田の言葉は、やわらかく、神楽の耳に響いた。





「目、閉じてみろィ」


目……?
何でかは、分からないけれど、沖田の顔を見たら、閉じなきゃいけない。
そう思った。だから、ゆっくりと、瞼を閉じた。
そしたら、ポロって、涙が下にと落ちた。

一瞬、隣にいた沖田の気配が消えた。なんだか分からないまま、胸をドキドキさせて、じっと、言われた通り、素直に待った。
そしたら、いつもふれてくる、あたたかな沖田の手が、そっと神楽の手にふれた。

(なに……?)
思いながら、胸がドキドキと高鳴った。



(えっ……)
ほんの微かな冷たい感触と同時、左薬指に、沖田の掌が触れ、ピタリとそれが、おさまったのが分かった。
ゆっくり、ドキドキしながら目を開いてみると、左薬指に、小さな指輪があった。

「これ……は……」
なんだか分かる。だって……これは……。


「俺と、結婚してくれませんかィ」


嘘……っ。

こんなタイミングで……。
こんなサプライズって……ないアル……っ。



ふわりと、神楽の腕が、沖田の首に巻きついた。
ぎゅっと、ぎゅうっと、その体を抱きしめた。
「ずっと、ずっと、その言葉を待ってたアル」

「―――――待たせちまって、悪かった」
神楽は、ぶんぶんと、首を振った。

「いい、いいアルっ」
ずっと、待ってた言葉を聞けたから、そんなの全然いいアル――――っ。

いつか、いつか言ってくれるって信じながら、沖田からのその言葉をずっと待ってた。
やっと、聞けた……。

「イエスっ……イエスアル!……ふぅ〜〜っっ」

色々と、考えたシチュエーションがあったけれど、今、この神楽の顔をみたら、ぜんぶ、うまくいった気がした。

冷蔵庫でキンキンに冷やしてある、ノンアルコールのシャンパンも、神楽が大好きでたまらない、菓子店で予約したホールケーキも、別室に用意して置いた花束も……。
全部、神楽の目の前に用意する予定だったけれど、なによりも沖田の言葉が神楽には嬉しかったようだった。




「だいすきアル! だいだいだいすきアルっ!」

全身で、沖田への気持ちを出した後、また神楽は感動したと、その手を沖田に、しっかりと、絡み付けたのだった。




・・・・To Be Continued・・・・・



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