act 51

久しぶりに来たこいつの部屋は、前と変わらず、大好きな匂いがした。
散らかってるかと思ってたのに、そんな事もなく、でも、散らかす間もないくらい、忙しかったのかと思ったら、なんだか言葉に出来ない気持ちが、胸の中をしめた。

キッチンだって、すっきりとかたづけられている。

洗濯物だって、たまってなんかない。
床だって、綺麗なままで、掃除機とかも、ちゃんとかけてるのかって思った。
(こいつって、何でもできるアル……)

いつも自分は何もできない。部屋だって、今日みたく沖田と二人、どこかに出かけようとするだけで、わらっちゃうくらい散らかっちゃって。勿論、沖田が来るって分かったら、一生懸命になって掃除をするんだけど。

「何か、飲みやすかィ?」
キッチンから、沖田の声が、神楽の背中にかかった。
「あ……うん。もらうアル」

何も言わなくても、お茶だって出してくれる。いつから、こんなに気が利くようになったのだろう。
高校に行っている時は、そんな常識知ってたっけ?
あぁ、でも、前から出来てた気がする。いつも、できてないのは、自分の方。
遊びにきてくれても、いつだって、今みたいに、先に動いてた気がする。

気がつかない間に、年だって重ねた。その分、沖田と、自分は時を歩んできたんだ。
なのに、自分だけが、前に進めてない気がする。

「神楽」
ふいに呼ばれた自分の名前に、神楽は振り返った。
そこに目をやると、大好きなミルクティと、手でつまめる様な、クッキーが、テーブルの上に置かれていた。

「また何か機嫌でも悪りィんですかねィ、俺の姫さんは」
「な、別に……」
こいつは、気持ちまでも透視してしまうアルカ。
神楽が驚いたのは、言うまでもない。
「じゃ、何でそんな顔してんでィ」
「べ、別に、そんな顔なんて、怒ってなんか、いないアル」
そう、怒ってなんかない。ただ、何だか、情けないだけ。目の前に居る男に、なんて不釣合いな女なんだろうって、おもっちゃうだけ。

「それ、お前の機嫌を治せると思って、だしたんですが、気に入らなかったか?」
沖田の人差し指の先にあるのは、二つの甘味。自分の為に、用意してくれてるって、そう言った。

気に入らないなんて……思うけれど、可愛らしい言葉は、神楽の口から出てきてくれなかった。
「も、勿論もらうアル」
あぁ、違うったら! こんな可愛くない子なんて、沖田に似合わない。
思わず唇を噛みしめる。

けれど、本当は、沖田にちゃんと伝わっている。
天邪鬼な神楽が、うまく気持ちを表せれない事も、ちゃんと、自分にしか見せない可愛らしい所が、沢山あることも。
だから、愛おしさは、とどまる事なく、溢れていくんだと言う事も。

「今日は、大事な話があるんでィ……」





・・・・To Be Continued・・・・・



← →



拍手♪








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -