act 27


短絡的なあいつらの事だ……きっと向こうから来る。
実は沖田はそう思っていた。
人を上から見下すような卑劣な事をする輩は、きっと自分に仕返しをしに来るだろう。

それ相応の人数を連れてでも……。

おそらく高杉にも、土方、そして近藤にもその考えはあったに違いなかった。

「どうする? このまま学校へ向うか?」
駅を出てからすぐに土方がそう言ったが、神楽は体をきゅっと小さくさせた。
学校、下駄箱……。全てはそこから始まったのだ。
自分を弄ぶためだけに入れられたURLによって……。

無意識に神楽は首をふった。
もしかしたら、また何か入っているかもしれない。今度こそ、自分が逃げられないように。
だって方法はいくらでもあった。
頭がいい奴なら、自分を追い詰める方法なんてきっと知ってる。
全校生徒にぶちまけるも、一般市民に神楽の顔を晒すも、全ては彼らの手の中に運命はある。

けれど、ここにいる男が、自分を守ってくれるという確信を持っているのも本当だった。

「とりあえず……姐さんに連絡するか……」
沖田は言ったが、それも神楽は嫌がった。
友達だからこそ、知られたくない。そう思うのも、人ならば仕方ない事だった。

自分が無茶な事を言って、迷惑をかけているのは分かっている。
沖田をはじめ、皆があのサイトを見てしまったというのに、前よりもずっと大切にしてくれている。

ほんとに……自分が守ってきたものは何だったんだろう。
思っても仕方ない事だけれど、思わずにはいられない。
神楽の瞳に涙が潤んだ。
神楽の様子を見ている沖田は、神楽の浮かんだ涙にすぐに気付いた。

「お前はただ俺らに守られていればそれでいい。何も考えるな。何も怯えるな。必ず守ってやるから」
肩に置かれた沖田の手は、神楽には心強すぎた。
喉をならし、涙をのむ。そして神楽は静かに頷いた。

真剣さの合間から零れる沖田の笑みは、神楽の心を、ほんの少しずつだが癒していく。
僅かだが、神楽が笑った。

だが、次の瞬間、神楽の様子がおかしくなった。
俯くとすぐに自分の体をきゅっと抱きしめた。目は閉じられ、ぎゅっとつむるその瞼の向こう側では、必死に何かを堪えているようだった。

「まさか――っ!」
すぐに沖田は気付き、神楽に触れようとした。
「触らないで!!!」
大きい呼吸を繰り返しながら、神楽は後ずさりをした。
「わた……私に近づかないで……お願い……」

それは間違いなく、薬の影響だった。
「おい、そんなに媚薬の影響なんてないはずだろう?」
一般的な媚薬の効能なんて、たかが知れている。
焦りを含めつつも、土方が言った。

「わかりやせん。あいつらがどんなルートで、どんな薬をコイツに使ったのかがわからねぇからこそ恐いんでェ」

沖田が言ってるそばから、神楽の足はガクガクと震えだした。
もう自分でもどうしていいかわからなかった。下半身がむず痒い。刺激が欲しいと言っている。
神楽の頭の中には、今日まで与えられた快感が嫌でも浮かんだ。

(汚い……私は汚いアル……)
嫌だと思いながらも、刺激してほしくてたまらない自分の淫らな体が嫌でたまらない。
神楽は、泣きだしてしまった。

後ずさりをし、足を動かすたびに擦れる下半身は、それだけで神楽に快感を与える。



「沖田お願い……何処かに行って……お願い……私を見ないでヨ……」
神楽は大きくしゃくりあげた。
沖田の喉が大きくなった。

動揺しないはずがない。
いくら想定してたとは言え、正直そこまで深く考えてなかったのが本音だった。
かと言って、神楽をこのままにしておけるはずがない。
焦った沖田に、声がかった。

「沖田……行ってやれ」
隣から低く響いた声、思わず沖田は目を見開いた。
「あいつを今助けてやれるのは、お前しかいねぇだろう?」
真剣帯びた高杉の目は、その言葉が本気だと物語っていた。

思わず高杉のほうをみたのは沖田だけではない。土方と近藤も、その両目を見開いていた。
「い、いやしかしだな……」
近藤は困惑のあまり言葉が続かない。

高杉の言っている意味が、どういうことなのか勿論全員分かっている。
沖田は、神楽を見る。
神楽は、もう沖田たちの方は見たくないとばかりに俯いているが、その体も限界が近づいていた。
今にも膝をついてしまいそうな神楽を沖田が見ると、決心を固めたようだった。

沖田は一歩を踏み出した。
土方は声にならない驚きの表情をしている。
そして高杉達の前で、沖田は速度を速めた。

そして神楽の体に手を伸ばした。
刹那、神楽の体は大きく跳ねた。
そして顔をあげたすぐに沖田の姿を確認し、息を吸い込んだ。
「嫌っ!!!」
神楽は懇親の力で沖田を突き飛ばした。
けれどそれを沖田は片足で踏ん張り、神楽の肩を持った。
「俺が何とかしてやる」

そう言った沖田の台詞。神楽は両目を大きく開いた。
何の意味か、子供じゃないんだからちゃんと理解できる。だからこそありえない。
「嫌! 嫌アル! 絶対嫌アル!!!」
きっと自分の体は、認めたくない程狂いに狂っている。
そんな姿、沖田にはこれ以上見せたくなかった。

きっと、失望してしまう。
きっと、嫌われてしまう。

自分が動くたびに快感が押し寄せてくる。けれど拒絶しないわけにいかなかった。
「駄目だ。俺は誰にもお前を譲るつもりはねぇ」
真剣な面持ちで沖田はいうと、そのまま神楽の肩を強くもったまま、歩きはじめた。

逃げられない神楽。
泣きながら思い続けた。

ねぇ……こんな悪夢ってないアル―――――っ



_……To Be Continued…
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