act 23

予定は、狂いっぱなしだった。
そもそも、神楽に見つかる予定じゃなかった。
なのに見つかった。
そもそも、長居する予定じゃなかった。
なのに、気が付けば、神楽の手料理を味わっていた。

マズイ思いに駆られながらも、沖田は、胸が高く早く動いているのを感じていた。
けれど、そんな思いに駆られる一方で、そんな自分を腹立たしく思う自分も居た。

まだ、何も解決していない……。



二人分の食器を洗い終わった神楽は、キュッと蛇口をしめた。

その神楽が、振り向いた時には、今度こそ、沖田は靴を履こうとしていた。
思わず口を開けた神楽だったが、もう止める手段がない。
開いた口をきゅっと噤み、そんな沖田を無言で見ていた。

「じゃ、帰りまさァ。俺が出てった後は、すぐに鍵を閉めろィ。分かったな」

沖田の言葉に、神楽は頷くしかなかった。
簡単にドアを開けられ、簡単にパタンと閉められてしまった。
扉一枚隔てた二人の間に、一気に焦燥感が襲った。

そして、やっと帰ると思いきや、沖田はすぐに神楽のドアが見える位置で、身を潜めた。

ちらりと時計を見てみれば、もうすでに、9時近い。
けれど、沖田は其処を動かなかったし、動くつもりも無かった。
神楽の家の明かりを、沖田はじっと見つめた。
古い建物ゆえ、中の物音が、簡単に外へと漏れている。
勢いよく、水の出る音が聞こえてきたので、どうやら風呂かと沖田は思った。


今の神楽が、一体どんな状態かが、沖田には分からない。
何を考え、何を思い、どの神楽かも分からない。
それでも沖田は、明日の朝まで、こうして神楽の家の前で、一睡もする事なく、見守るつもりで居た。

なぜなら、神楽をあんな目に合わしたアイツ等が、神楽の家を知らないとは限らないからだった。

もう、遅かった、何て、二度と思いたくない。
だからこそ、沖田は、ただただ、じっと、神楽の家を見つめていた。

刹那、神楽の家の中で、大きな音が、ドタバタと響いた。
反射的に沖田は、神経を鋭くさせた。
すると、先ほど鍵を閉めたのにも関わらず、内側から、ガチャガチャとあける音が聞こえた。
沖田は、暗闇の中に姿を現した。
それと、同時、勢いよく、神楽が飛び出した。

「チャイナっ!!」

気が付いた時には、叫んでいた。
息をヒュっと吸い込んだ神楽は、反射的に、その方へと振り返った。
神楽の表情は、暗くてよく見えない。
けれど、自分の方へと、駆けてくるのは分かった。
一応、身構えた沖田だったけれど、予想以上に、神楽は、勢いよく沖田へと抱きついてきた。
きゅっと力を加え、自分の背に回された小さな手。

言葉を失った沖田に、儚い神楽の声が、届いた。

「側に居てっ……。側に……居てヨ……。分からないけど、夜、眠るのがっ……目を閉じるのが…………怖くて、怖くて……たまらないアルっ。私、おかしいアルっ」

涙まじりの声。
思うより先に、神楽の華奢な体を、沖田は抱き締めていた。

「沖田……沖田ぁっ……」
「俺が……ついていてやるっ……。もうあんな目っ……」
言ったところで、きっと神楽には、なんの事だか分からない。
それでも、言わずにはいられなかった。
それ位、沖田の気持ちは、溢れていた……。

…… To Be Continued ……


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