act 1

2DKのアパート。本日は晴天なり。窓一枚隔てた向こう側、何処からか聞こえる蝉の声、まるで視界が歪むような殺人的な暑さ、道行く人は額の汗を手持ちのハンカチ、またはワイシャツの袖で拭っている。しかし汗はとどまる事を知らない様に、拭った側から新しく額を濡らしていた。気やすめにもならない手の仰ぎで、その気持ちだけでもと繰り返す。
カーテンのこちら側、エアコンがきいている室内。また子の部屋。雑誌が足元に散らばっている。ベットには脱ぎっぱなしのパジャマ。テーブルの上には箱が散らばっていて、そのテーブルを囲う様に、また子、神楽、お妙、ミツバ。それぞれ座って息を呑む。
振動一つとしてない。四人の前にはそれぞれアイスミルク、オレンジジュース。そしてクッキー。そんな中、お妙が口を開く。

「いい?いよいよだけど、皆心の準備はいい?」
お妙がくるりと周りを見渡す、皆、コクンと頷く。じゃぁ、いっせーの!

『やったぁぁぁ!!妊娠したぁぁ!!』
テーブルの上に置かれた四本の妊娠検査薬。そのどれもに陽性のしるしがくっきりと出ていた。立ち上がり、喜びの声を重ねた。満面の笑み。待ちにまった瞬間だと喜びに喜びを重ねた。一度に四人もの妊娠。偶然であるわけがない。仕掛けたのだ。そう、きっかけはあの部屋…。あのテレビ…。そしてこのばかな二人…。

........


「近頃、総悟が全然構ってくれないアル。」
3本目のアイスを口に含めながら、大通りを歩く。撫子色の腰に靡く髪、小さなみつあみをクルクルと頭のてっぺん二つにとめ、そこから髪を流す。日に輝く金髪の髪を靡かせ、歩く。仕事の休み時間、中小企業の、同じ受付嬢をしている、また子とランチを食べ、更にデザートを食べたいとコンビニにアイスを買いに行った帰りの神楽とまた子の姿だった。
梅雨の湿気が体に纏わり付き、ベトベトとした肌触りが気持ち悪い。OL特有の制服を、ちょっと短めに直して、ダサくならない様にしてみたが、元々いるお姉さまの反感をかったらしかった。しかし、売られた喧嘩は買う性質の二人ゆえ、結果圧勝だった。お局が何だ。ハッ。っと鼻で笑った。雑用を言い渡されれば、巧みに男を利用して、こんなにできません。そう甘えた。しかしその行動はますます火に油を注いだらしかった。ヒステリックになった女子社員だった。極め付けには、同じ会社、社内恋愛をしている男がどちらかに惚れてしまうと言う災難にも襲われる。ピークになった女子社員は神楽とまた子に掴みかかった。待ってましたとばかりに神楽とまた子は顔を見合わせ笑ったのだった。最後の最後の台詞、顔に傷付けられたいアルカ?と言う台詞は決定的なモノへとなった。

ミニタイトで歩く姿を、男が振り返る。
「本当ッス。こんないい女をほっとくなんて、何処のばかッスよ。」
「いっそ浮気でもしてやったら、あの馬鹿男は目が覚めるアルカ?」
「紙一重っスね。下手したら捨てられそう…。」
マジでか…?思わず足を神楽は止めた。本当の所、浮気など、考えてもいない。ただ、どうしようもなく寂しいだけだった。高校を卒業後、自分達の彼氏である沖田と高杉は、人に使われたくねェ。腹が立つ。などと、社会に出る男としてありえない言葉をはいた。そして、土方を使って、ためしにネットマーケティングをしたらどうだろうかとの意見に、近藤も賛成し、小さいながらも事務所を借り、展開させた。沖田、高杉、近藤の3人で外回りをしながら、企業を回る。頭を下げることには変わりないが、人に使われるのではなく、直接自分達の利益に反映されると言う事でまだ耐える事が出来た。そしてそれを土方がネットに反映させる。巧みな言葉使い。さらに人員削減だと、広告には沖田、高杉を使った。これが当たった。しかし、忙しく、彼女をかまう暇が極端に減ってしまったのだった。

神楽とまた子、道端で捨てられた二匹の子猫を見つける。惹かれる様に側に行った。箱の中では儚い声でにゃぁと子猫がないた。神楽は抱きかかえ、よしよしと撫でてやった。かわいいっすね。また子が目を細めた。
「お前もさみしいアルカ?―――あたしも寂しいアル。」
そう言うと神楽は子猫をよしよしとした。パチンと携帯を開く、発信番号は会社、プっと言う音、体調が悪いのでスイマセンが早退をします。パチンと二人、携帯を閉じた。おいで、お前の家族になったげるネ。そう神楽とまた子は囁いた。





・・・・To Be Continued・・・・・

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