番外編 1

「見つかりました?銀さん…」
新八が銀時の元へ行き、声をかけると銀時は驚いた様に振り向いた
「バカヤロウ!ビックリさせんじゃねェ!てかもっと小さい声で話しやがれ!バレたかと思ってビックリしちまったじゃねェか!」

晴天に恵まれた4月。
土方の家の門の所には、色とりどりの風船がふわふわとその姿を風に靡かせている
そこを抜けると、歩く道なりを小さな可愛らしい花で飾っている。
ミツバが気に入った大きな庭には、色とりどりの花や植物がセンスよく植えられており、より一層その雰囲気を醸し出して居た。
庭の中央には、大きなテーブル、そして椅子がいくつにも分けられて置かれており、その上には、ミツバが選んだ花が綺麗にその姿を美しく見せていた。
風が吹くと、土方の家の庭にある、桜の木から散り始めた桜の花びらがふわり、ふわりと舞った。
それはとても綺麗で、今日と言う日を、一緒に祝福してくれている様にも思えた。


そんな神聖な空間の中、明らかに似合わない会話が飛び交った


「銀さんこそ、静かにしてくださいよ!バレたらこんな日に僕ら火あぶりの刑になっちゃいますよ!」
「だから必死こいて探してんじゃねェか!」
「それにしても何処にいっちゃたんでしょうねェ。」
「ガキ二人も見れねェのかって思われちまわァ…あ〜だりィなぁ、何で俺がこんな事…」

「しょうがないですよ。皆準備でバタバタしてるだから」

銀時は、面倒くせぇとしゃがみ、頭を抱え込んだ。
その銀時の肩をポンと叩き、新八は『ホラ、探しますよ。』と話す。

その時、可愛らしい声が微かに聞こえた。
新八と銀時は二人、顔を見合わせその声のする方に、ダッシュした。
角を曲がりこむ頃になるとその声は大きくなる。二人顔をにた〜とさせ、ズサァァァと滑り込みで角を曲がりすぐに口を開いた。


「見つけたァァァ… … …って。」

「旦那ァ、見つけたってェのは一体ェどうゆう事ですかィ」
「オイ…。テメーらまさか、こんな小さい子供を見失っていたとか、ぬかすんじゃねェだろうなァ」

言葉を言い終えた頃には既に、裏口から外に出てきた、それぞれの親にその小さな子供は抱かかえられていた。
そして、今しがた銀時と新八に声をかけた人物……。

「い、いや、沖田さん、土方さん、僕ら見失ったわけではなくてですね、ちょっと探してただけで…」
「一緒じゃネェか!」

新八が話す言葉の途中で、銀時がスパンと突っ込みを入れた。
新八は目をくわっと開きながら、『だって銀さん!じゃどういえば言いんですか!』と噛み付く。
銀時と新八、それぞれを呆れる目で沖田と土方は見る。
そんな二人を気にする事無く、にこにこしながら美桜と怜郎は口を開いた。

「みおちゃん、楽しかったね」
「うん!れおくんありがとう!」

互いに抱かれている間で、全く悪びれもなく無邪気にはしゃぐ二人を見て、困った様に銀時は目を細めたが、すぐに自愛の目へと変化した。
鼻のてっぺんを書きながら、その手を伸ばした。

「ったく、勝手に居なくなんじゃねーつうの。銀さん慌てちまったよ」
二人の頭をわしゃわしゃとしながら銀時は言う。
すると、くりくりのお目めをぱちくりとさせながら、美桜と怜郎は口を開いた

「銀ちゃん慌てた?」
「銀ちゃん慌てたの?」

銀時はふっと柔らかく笑う
「あぁ。銀さんすっげー慌てた。」

「ふふ!すっげーの!」
「銀ちゃんすっげー!すっげーんだ!」
大きな声で騒ぐ美桜と怜郎にその場の空気が一気に和んだ
まだ慌てると言う言葉も意味も分っていないが、とにかく面白かった様で…足をばたばたとバタつかせ笑った。

沖田はそんな美桜を見て、優しく微笑む。土方は怜郎を見て、同じように微笑んだ
その光景は、日ごろ、鬼畜、外道、ドS。そして、隊員及び市民からも鬼の副長と呼ばれている人物とは、到底思えないほど穏やかだった。
勿論それは銀時と新八も同じであり、その小さな女の子と男の子を中心に、温かい風が舞った。

ふと、思い出した様に、銀時は改め沖田と土方を見た。
「何だよ何だよ!孫にも衣装ってか?意外と似合ってんじゃねぇか」

にやにやとしながら、銀時は沖田と土方の羽織袴を下から上からと見る。
一般的な黒の羽織袴だが、右手に持っている扇子が似合ってると言うか、不似合いと言うか…

「旦那ァ。アンタだって同じ格好してんじゃないですかィ」
そう言った沖田は、同じ様に銀時を見る。そして、更に色違いの羽織袴を着ている新八にも視線を移した所で、後方から声がかかった。

「あっ。居た居た。探してたんですよ。さぁみおちゃん、れおくん、お着替えしましょうね」
いつも着物姿である人物は、今日は肩を出し、ふんわりと胸元の開いた白のシフォンドレスを着て、肩の所には透けたストールが掛けており、更にその可愛らしさを引き立てていた。
其処にいた男は、いつもと違う雰囲気の女に、思わず口を唖然とさせた。
そして一番最初に口を開いた人物が、彼女の弟である新八だった。

「姉上、神楽ちゃんたちはどうですか?」
しゃがみこみ、沖田と土方からおろされた美桜と怜郎の手を繋ぎながら顔をあげ、微笑んだ
「凄く綺麗ですよ。二人とも…。本当にビックリしちゃいますから、楽しみにしててね」

そう言うと、お妙は、美桜と怜郎の小さな手をきゅっと柔らかく握り、三人でゆっくりと歩いていった

後に残された男は互いに視線を巡らせた。
先程の言葉にどう対応していいか分からず、三人同時に頭を掻いた

....

「神楽ちゃん、とっても綺麗だわ」
「何いってるアル、ミツバ姉こそ、ビックリする位綺麗アルヨ」
隣同士に置かれた大きな鏡の中の姿を互いに確認する

真っ白な花嫁衣裳代表の白無垢姿。
アノ日から、気が付けばもうすぐ2年…。

本当はすぐにでも結婚式を挙げたかったのだが、予想以上の育児の大変さを身をもって思い知らされた
寝不足の日が続き、夜鳴き、授乳、大変で大変で、隣のミツバと一緒にすこしずつ母親として頑張ってきた

怜郎の産まれた日の事、今でも目を瞑れば思いだす。
普通に産みたいと言うミツバと、体を気遣って絶対に帝王切開にしろと言う土方。最後までねばったが、先生も体の事を考え、帝王切開で産みましょうと決断した
神楽の出産を見たからこそ、自分の力でミツバは産みたかった。が、自分の体の弱さは知っている。
迷惑をかけちゃいけない…そうは思うが、ミツバは帝王切開の日、初めて悔しく涙を皆の前で流した

わが子を自分の力で産んでやることが出来ない不甲斐なさで、自分が情けなく…。

手術着を着る前の事だった。
部屋を出て行こうとする皆の瞳は大きく開く、ミツバは手術着をぎゅっと強く握り締めながらそれで顔を隠し、その中で辛く、悔しく、嗚咽を出した。
神楽は顔を歪めるが、ミツバの体の事を考えれば、やはり帝王切開の方がいいのは分かっており、その場から動けなかった。
それは総悟も同じであり、来ていたいつものメンバー全員が足が動かず、視線を伏せた
ミツバのイメージはいつも柔らかく笑っているイメージが強かったので、余計その心をぐちゃぐちゃに抉られるような悲痛さに襲われた。

自分の中で弾けた様に沸いてくるどうしようもない感情をどうすることも出来ず、ただただ泣き続けた。
突然、その自分の震える体を、優しく包む感触を感じる
何をしなくても、何も聞かなくても、その匂いで、その温度で、その感触で分る…。

「分ってくれ…俺ァお前に無茶をさせたくねェ。子供もお前も、ちゃんと無事で居てほしいんだ…頼む」
追加されるように溢れた涙を流しながら、手に持っていた服をぱさりと落とし、その力強く、自分に回されている腕をきゅっと掴み、ゆっくりコクンと頷いた。
土方はミツバの頭を優しくナデナデと撫ぜてやり落ち着かす。

気を利かすように、いつの間にか居なくなった何人もの姿。
土方はミツバのおでこにちゅっと温度を落とした。
目じりの涙を舌先で拭ってやり、頬を滑らし、口元に落とす。
「頑張れ…待っててやるから。」
そういいながらもう一度触れたその温度は心地よく、涙がピタリと止まり、入れ違いに温かいモノが体中に流れて、そして溢れた。

先生が出てきた瞬間、タバコを吸うことさえ忘れていた土方が慌てるように駆け寄る
面白いくらいに目を大きく開き、抱いてみますかと言われ出した手は、あの土方かと思う程震えていた。
そして、総悟が肘でコツンと当てると、ハッとしたように我に返り、照れくさそうに抱いた

その姿は、真っ黒な髪の毛に、一重瞼の瞳のとても可愛らしい男の子だった。
総悟の『土方さん泣きそうですぜ』との声に、目を真っ赤に充血させ『ば、バカヤロウ!!だ、誰が…』と最後語尾をめちゃくちゃに濁し、皆で笑った。

その後、ミツバは、神楽の様に歩く事は出来なかったため、後日、訪れた部屋の中で、名前は土方の名前の最後の一文字を取って怜郎となずけたのだと聞く。

二人で勉強をすこしずつしていき、ゆっくりと母親になっていった。
忙しく追われる日々の中忘れかけていた『結婚式』と言う大切な日を、総悟と土方はサプライズとして一週間前に神楽とミツバに話す。

場所は、庭の広い土方の家。メイクさんやら衣装やらを家に呼び、してもらい、料理もキチンと手配済みだった。
きっかけは近藤の『そろそろ結婚式をしてもいい頃合じゃないのか?』との一言。

びっくり、そして感動する二人の中で一週間と言うのはあっと言う間に過ぎていき、今日に至ったのだ。




神楽の頭には、綺麗に小さな花が添えられ、髪を結われ、最後に左側にと流されており、丁度首元らへんに大きな花が施されてあった。
真っ白な白無垢に流れる桃色の髪はとても美しく、其処に添えられた白い花がアクセントとなり、驚くほど綺麗だった。

どうしても髪を結いたいとの神楽の希望で白無垢にヘアアレンジをする事になったのだ。
たいするミツバは、二年の間に又伸びた髪を後ろで結われ、左側には、可愛らしいピンクのちゅ〜りっぷとバラが髪を華やかに飾った。

互いの透き通るその白い肌に、プロのメイクさんが、更に美しく色つけて行く。
自分だけれど自分じゃない…。ドキドキして心が跳ねた。

笑いを堪えるがどうしても緩む顔。その時コンコンとノックが聞こえた
チラリと視線だけドア元に寄せた。その途端、ミツバも神楽も柔らかく頬笑みが漏れた

「マミーきれい!マミーきれい!」
「母さまきれい!すげーきれい!」

ちこちこと小さな足取りでやってくる。
その姿は、特別に作られた小さな小さなピンクのウエディングドレスを着た美桜と、ちっちゃな黒のタキシードを着た怜郎だった。別室で可愛く着せられたらしく、美桜の髪には神楽と同じ花が付けられていた
愛くるしく、よたよたと歩くその姿に思わずお妙と神楽とミツバは顔を見合わせ笑った。
間も無く神楽とミツバのメイクも終わり、メイクさんが気を利かし外へと出て行く。

見計らった様に、話しに華を咲かせる

「神楽ちゃん、ミツバちゃん、とっても綺麗だわ…ため息でちゃう…」
そういうお妙に、神楽とミツバは少しはにかんだ様に笑った

「姉御こそ…もうそろそろゴリラに愛情をあげても損はしないと思うアルヨ」
「ふふ。まだ神楽ちゃんには言ってないのね?」
ミツバに言われるとお妙は顔を赤くした
「え?何がアルか?」
「愛情って言うか…」
「この間私、十四朗さんとね、怜郎連れて買い物に言ったら、二人で居るトコばっちしみちゃったの」

ミツバの言葉に、目を大きく開き神楽は声をあげた
「エーーー!!マジでか!ゴリにもついに、ついに春が来たアル…姉御おめでとうアル!」
興奮する神楽に、とりあえず顔を淡くお妙は染めた

「銀ちゃんだけかと思ってたら、姉御もだったアルカ…」
神楽の何気ない言葉にお妙は聞き返す
「何が?銀さんがどうかしたんですか?」
神楽は、考えながらおもむろに言葉を口にした
「何って…銀ちゃんのトコにずいぶん前からさっちゃんがよく出入りしてるアルヨ。初めは銀ちゃん死ぬほど嫌がってて、入ってくるなり足蹴にしてたネ。でも本当によく来てて、私も居ないし、ご飯とか時々作ってて、頑張ってお菓子とかも練習してね、さっちゃんすっごいアルヨ!銀ちゃんが糖尿病になるといけないからって、一生懸命お菓子の研究とかしてね、そんなに甘くないのに美味しいお菓子とかめっさ作ってくるネ。そしたら銀ちゃん、それ食べて、コレで甘いもんには困んねェよって笑ってたのに、いつの間にか…何か雰囲気が…あれ?的になってたアルヨ」

一息ついたところで、お妙は口を開いた

「ちょ、ちょっと神楽ちゃん…あの天パ、いや、銀さんに…。」
「凄いアル。私もビックリアルヨ、それでねそれでね、私鎌かけて聞いたアル」

お妙が食いつく
「何て?」

「うん、銀ちゃんとさっちゃんがくっ付くなんて、地球に隕石が落ちるくらいしんじられないアル」って。
「そしたら?」
「そうかァ?俺はお前と沖田君がくっ付くほうが隕石が落ちるって事より信じられなかったけどな」
「だって!。否定しなかったアルヨ!肯定したアル!てか、銀ちゃんが…銀ちゃんが、さっちゃんに取られちゃったアルぅぅ!!」

そこまで言った所で、思い出した様に、神楽の瞳は、うりゅ〜と潤んだ。
それをミツバが『泣かないの』とそっとティッシュで目じりの涙を拭った
女の話しは続くが、時間もそろそろと言われ、神楽とミツバは立ち上がる。

お妙は、足元で行儀よく?遊んでいた美桜と怜郎の手を引き、『じゃあ、外でね』と静かに出て行ったのだった。



……To Be Continued…

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